野球の試合中に、キャッチャーが立ち上がってバットの当たらない位置にボールを要求するシーンがあります。バッターとの勝負を避けて出塁させる「敬遠」と呼ばれる戦略です。
さらに、2018年からは「申告敬遠」というルールが導入されています。
あえてバッターを出塁させる敬遠は、どのようなシーンで使われるプレーなのでしょうか。
ここでは、野球における敬遠の概要や、導入以降さまざまなシーンで使われる申告敬遠のメリット・デメリットをご紹介します。
【目次】
■敬遠とは
■敬遠のメリット
・大きなピンチを防げる
・ダブルプレーを狙える
■申告敬遠と敬遠の違いは?
■申告敬遠のメリット・デメリット
・メリット
・デメリット
■敬遠を読み解いてチームの作戦理解につなげよう
■敬遠とは

野球における敬遠(故意四球)とは、ピッチャーとキャッチャーがあえて相手バッターとの勝負を避け、意図的にフォアボール(四球)を出すプレーです。
基本的に監督がベンチから指示を出しますが、キャッチャーがピッチャーに対して指示を出すこともあります。
野球のルールを定めた野球規則は、敬遠(故意四球)を「投手が4球目のボールを意図的に立ち上がっているキャッチャーに対して投げた場合に記録される」としています。
つまり、3ボールの状況から「ストライクを投げようとしたものの、コントロールが乱れてボールになった」といったケースは、記録上はただのフォアボールです。
明らかなボール球を4球連続で投じて、はたから見ている分には「勝負を避けた」と思える場合も、キャッチャーが座ったままであればフォアボールとなります。
反対に、途中までは勝負をしていたものの、カウントが悪くなってからキャッチャーが立ち上がり、フォアボールを出した場合は故意四球です。
また、敬遠の投球をバッターは打っても問題ありません。実際に、敬遠球を打ってヒットを記録した例は、日本のプロ野球や北米のメジャーリーグでもいくつか見られます。
■敬遠のメリット
敬遠を行うと、バッテリーは必ずバッターを1塁に歩かせることになります。ランナーが増えるため、守備側にとっては大きなデメリットのある戦略のように感じられますが、なぜ敬遠が行われるのでしょうか。
敬遠を行うメリットとしては、主に次の2点が考えられます。
・大きなピンチを防げる
敬遠は、バッターを必ず出塁させる代わりに、ヒットやホームランを防ぐための戦術です。前述したように、敬遠を狙った投球を打ち返した例はいくつかあるとはいえ、基本的にはヒットやホームランを打たれることはほとんどありません。
相手が強打者であれば、無理に勝負をした結果ヒットを打たれて失点してしまう恐れがあります。3ボールになってしまった場合は、ストライクゾーンに甘い球を投げてしまい、長打になる恐れも捨てきれません。
ランナーを出すリスクを背負うことにはなりますが、ホームランを打たれて失点する可能性を少しでも減らせる点は、敬遠を行う大きなメリットです。
・ダブルプレーを狙える
あえて敬遠を行うことで、ダブルプレーを狙える可能性がある点も見逃せません。
例えば、ノーアウト・ランナー2塁の状況を考えてみましょう。バッターが打ち損じて内野ゴロになったとしても、通常はバッターしかアウトにはできません。
無理に2塁ランナーのアウトを狙った結果1アウトも取れなかったり、ランナーが3塁に進んだりすることもあるでしょう。
一方で、ランナー2塁の状況であえて敬遠してバッターを歩かせれば、ベースを埋めてランナー1・2塁のシチュエーションを作ることが可能です。
長打を打たれた際に大量失点するリスクは増えるものの、相手に内野ゴロを打たせることさえできれば、ダブルプレーを取りやすくなります。
■申告敬遠と敬遠の違いは?

日本のプロ野球では2018年から、高校野球では2020年から申告敬遠のルールが導入されています。通常の敬遠は4球ボールを投げることになりますが、申告敬遠の場合はピッチャーが投球する必要はありません。
監督が審判に敬遠するという意思を伝えるだけで、ボールを投げることなくバッターを1塁に進ませることが可能です。
敬遠・申告敬遠ともに回数制限はなく、カウントの途中から申告を行うことができるので「バッター有利なカウントになったから申告敬遠する」といった使い方もできます。
また、通常の敬遠はボールインプレー(試合が続いた状態)ですが、申告敬遠はボールデッド(試合が中断した状態)という点も覚えておきましょう。
通常の敬遠では投球時に盗塁を仕掛けることができますが、申告敬遠では試合が中断した状態になるため、盗塁などのプレーは記録されません。
■申告敬遠のメリット・デメリット
申告敬遠の導入によって、野球の試合はどのように変わったのでしょうか。
申告敬遠の導入によるメリット・デメリットとしては、次のような点が考えられます。
・メリット
前述のとおり、申告敬遠は通常の敬遠とは異なり、ピッチャーがボールを投げる必要はありません。監督が申告するだけで故意四球扱いとなるので、4球分の試合時間の短縮につながります。
無駄な投球が減るので、ピッチャーの負担を減らすことも可能です。
投球を行う必要がないため、ワイルドピッチ(暴投)やパスボール(捕逸)といったエラーも防ぐことができます。
まれなケースではありますが、敬遠球を無理やり打ってくるプレーを防げる点も、申告敬遠を行うメリットといえるでしょう。
また、敬遠が行われるのは、主に強打者との対戦時です。好勝負やホームランなどを期待していた観客からのブーイングを受けずに済む点も、場合によってはメリットになります。
・デメリット
通常の敬遠はキャッチャーが立つことで成立するため、観客側にも何が起こっているのか視覚的にわかりやすいという特徴がありました。
一方で、申告敬遠は監督が審判に伝えるだけなので、一見すると何が起こったのかわかりにくいかもしれません。
「敬遠を狙ってヒットを打つ」「敬遠球を暴投して失点してしまった」など、ドラマチックなプレーが起こらない点も、デメリットといえるでしょう。
また、申告敬遠のルール導入後、年間の故意四球の数は増加しました。勝負の場面が減ってしまう点も、観客側からするとデメリットのひとつです。
■敬遠を読み解いてチームの作戦理解につなげよう
野球における敬遠は、バッターを意図的に歩かせる戦略です。あえてバッターを歩かせることで、強打者との勝負を避けたり、塁を埋めてダブルプレーを狙ったりする意図があります。
上手に活用すれば、チームの戦術をより広げることが可能です。
また、投球を省略してバッターを歩かせることができる申告敬遠の登場により、試合のスピード感が増したり、敬遠を使った作戦が変化したりといった効果も見られます。
野球観戦の際は、敬遠を行う意図やチームの作戦なども考えてみると、よりさまざまな楽しみ方ができるはずです。
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【文章】アルペングループマガジン編集部