送りバントは有効性が低い? 戦略の効果と打ち方のコツ

日本のプロ野球や高校野球の試合では比較的よく見かける「送りバント(犠打)」。アウトを増やしてでもランナーを確実に進める戦術ですが、野球の攻撃は3アウトで打ち切られてしまいます。
実際のところ、送りバントはどれだけ有効なのでしょうか。
ここでは、野球の送りバントの概要や戦略上の有効性、実際に送りバントを決めるためのコツをご紹介します。

 

 

【目次】
■送りバントとは?
■送りバントの戦略的な価値はある?
・得点の期待値はどれくらい?
・送りバントが有効になり得る状況は?
■送りバントを決めるコツ
・バットの持ち方のコツ
・構え方のコツ
・当て方のコツ
■状況によっては送りバントは有効な場合も

 

 

■送りバントとは?

 

送りバントとは、バッター自身がアウトになる代わりに、すでに出塁しているランナーを進塁させる目的で行うプレーのことです。
バットをスイングするのではなく、寝かせた状態で構えたバットにボールを当てて転がします。

スイングに比べるとボールをバットに当てやすいうえにゴロを打ちやすく、比較的安全にランナーを進められるのがメリットです。
ただし、2ストライクからバントでファウルを打つとスリーバント失敗となり、三振扱いでバッターアウトとなります。
また、バントに関連する戦術は送りバント以外にもあるため、覚えておくと便利です。

 

【バスター】
バントの構えからヒッティングに切り替える打法です。内野手を前に引き付けることで、ヒットゾーンを広くしたり、ダブルプレー(併殺)のリスクを減らしたりする効果が期待できます。

 

【スクイズ】
3塁ランナーがいる状況で、ランナーをかえして1点を取るために行われるバントです。

 

【セーフティバント】
ランナーを進めるためではなく、バッターが出塁をもくろんで行うバントです。通常は、打つ構えを見せてからバントに移ります。

 

 

■送りバントの戦略的な価値はある?
送りバントは日本の野球では見かけることが多い一方で、北米のメジャーリーグ(MLB)ではほとんど見ない戦術です。
「送りバントは意味がない」「効率が悪い」などといわれることもありますが、実際のところ、戦略的な価値はどの程度あるのでしょうか。

 

・得点の期待値はどれくらい?
野球は、1チーム27個のアウトの中で自チームの得点を増やすことが求められるスポーツです。とはいえ、3アウトで攻守が入れ替わるため、27アウトをフル活用することはできません。
送りバントでランナーを得点圏に進めること以上に、「3アウトのうちの1アウト」を相手に献上するリスクは大きいといえるでしょう。

 

実際に、統計上はプロ・高校野球ともに、ノーアウト1塁から送りバントで1アウトランナー2塁の状況を作ると、得点の期待値が下がってしまうことがわかっています。
基本的には、バッティングが上手な選手に送りバントをさせるほど、データ上は得点効率が低下して損になります。

また、送りバントの成功率は7~8割程度と、普通にヒットを狙うよりは成功しやすいとはいえ、2~3割の確率で失敗する点にも注意が必要です。
「得点期待値を最大化する」という観点から見た場合、送りバントは非効率な戦略といえます。

 

・送りバントが有効になり得る状況は?
送りバントは、データ上では得点の可能性が下がる損なプレーですが、いくつか例外もあります。
例えば、打率が1割前後でヒットがほとんど期待できない選手がバッターというシチュエーションであれば、送りバントをした方が得点効率は上がります。
守備固めで途中出場した非力な選手や、バッティング練習をほとんど行っていない投手などがバッターボックスに立った場合は、送りバントを指示した方が良いかもしれません。

 

また、ノーアウト1塁から強攻策でヒッティングを仕掛けた結果、ダブルプレーを取られて2アウトランナーなしに変わってしまうリスクがある点も問題です。
2アウトランナーなしの状態では、得点期待値はほとんどありません。

ダブルプレーを絶対に避けたいシーンや、1点を確実に取りたいシーン、ヒットがほとんど期待できないシーンなどであれば、送りバントが有効になる可能性もあります。

 

 

■送りバントを決めるコツ

送りバントはバッター自身がアウトになるのと引き換えに、ランナーを安全に進めるプレーです。失敗すると、ランナーを進められずにアウトカウントだけ増えたり、ダブルプレーでチャンスがなくなったりするリスクがあります。
送りバントを確実に決めるために、コツを覚えておきましょう。

 

・バットの持ち方のコツ
送りバントは、一般的なスイングとはバットの持ち方が大きく異なります。右バッターの場合は、右手でバットの芯の近くを軽く握り、左手でグリップエンド側を握るのが基本です。
左バッターの場合は左右の手を逆にしてください。

 

バットを握る時に、左右の手が近すぎると力が入らず、ボールの勢いに負けてゴロを打ちにくくなるので注意が必要です。
また、ボールの勢いに負けないために、しっかりバットを支えることも心がけましょう。

 

・構え方のコツ
バントをする際の構え方は、足の位置からオープンスタンス・クローズドスタンス・スクエアスタンスの3種類に分けられます。

 

【オープンスタンス】
前足を横に広げ、体をピッチャーに対面させるスタンスです。ボールを見やすい一方で、抜けた球を避けにくい、アウトコースのボールに対応しにくいなどのデメリットがあります。

 

【クローズドスタンス】
前足はベースに寄せ、後ろ足はベースから離して構えるスタンスです。膝を使いやすく、さまざまなコースに対応しやすいというメリットがあります。

 

【スクエアスタンス】
通常のバッティングと似たような構え方です。バント後すぐ走り出しやすく、セーフティバントにも適しています。

いずれの構え方も、目とバットの距離を一定に保ち、ボールをしっかり見ることが重要です。重心を低くして膝を曲げた状態で構えて、視線をボールに合わせましょう。
最初はストライクゾーンの最も高い位置にバットを構えることもポイントです。バットよりも高い位置に来た投球は全てボール球になるので、ストライク・ボールを判断しやすくなります。

 

・当て方のコツ
バットをボールに当てに行くと、ボールが浮いてしまったり、思い通りの場所に転がすのが難しくなったりします。バントの際はバットに当ててボールを飛ばすのではなく、ボールを受け止めるイメージを持ちましょう。
バットを動かすのではなく、膝と腰を使ってバットの位置を調整するのがコツです。

 

通常のバッティングではバットの芯にボールを当てる必要がありますが、バントの際にバットの芯に当てると、ボールが強く転がってしまいます。
ボールの勢いを弱めたい時は、バットの芯からボール1個分ほど先に当てる意識を持つのがおすすめです。

 

 

■状況によっては送りバントは有効な場合も
データの観点からすると、送りバントは得点期待値を下げてしまう損なプレーです。ただし、バッターの打率が低く、ヒットが期待できないシチュエーションでは有効な戦術になり得ます。
ランナーを進めることでダブルプレーを防ぎやすくなるので、2アウトランナーなしという最悪の事態を避けたい場合も、有効な戦術といえるかもしれません。

とはいえ、いずれも送りバントを確実に決められたうえでの話になります。送りバントを決められるように、しっかりと練習しておきましょう。


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【文章】アルペングループマガジン編集部

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