高校時代から「平成の怪物」として名を馳せ、日本にとどまらずメジャーリーグでも大活躍し、球史に名を刻んだ元プロ野球選手の松坂大輔さん。
現役引退後の現在は、その情熱をゴルフへと注いでいる。
9月20日(日)に「ゴルフ5フラッグシップストア トレッサ横浜店」で開催されたトークショーでは、野球で培った身体能力や感覚が、いかにゴルフという競技に昇華されているかが語られた。
トークショーはこちらから

『元プロ野球選手松坂大輔さんがトレッサ横浜のイベントに登場した』
ゴルフを始めたのはプロ1年目のオフシーズン。
当時は球団関係のコンペへの参加が義務付けられており、練習もなしにいきなりコースに出るという、ハードなデビューだった。
そんな初ラウンドのスコアは148(空振りノーカウント)。
しかし、最後に打ったドライバーの会心の一打が忘れられず、そこからゴルフの魅力に取りつかれたと話した。
「初めてのラウンド中は、『もう二度とやるか』と思っていました(笑)。なんで(野球とは違って)止まっているボールなのにこんなに当たらないんだろう…というのが、ゴルフに対しての最初の印象でした。ただ、そのときから飛距離は出ていました。最後のホールでドライバーが真芯を捉えて、真っ直ぐ飛んでほぼワンオンみたいなショットが打てて、それが忘れられなかったです。それがなかったら、ゴルフをここまでやっていなかったかもしれません(笑)」(松坂さん)
そんな初ラウンドを終え、同じ1年目のオフシーズンのうちにスコア88を記録したという。
その理由について、野球で培ってきた感覚がゴルフに活きていたと分析する。
「下手だったときから、アプローチとパターはそこそこできていました。小さいときから野球の練習でティーバッティングをよくやっていて、そのときに下からボールを投げていたので、その感覚がショートゲームに活きていたんだと思います。あとはピッチャーなので、手先の感覚が人よりあったのかもしれません」(松坂さん)
そして引退後の現在は、年間100ラウンド近く回ることもあるという。今年は初の60台(68)をマークするなど、積極的に競技ゴルフに取り組んでいる。

『ゴルフではほろ苦いデビューだったが、その年に80台を記録し、今年はなんとベストを”68“に更新する怪物”ぶり』
話題は、“ゴルフ”と“野球”の技術的な共通点や体の使い方など、野球からゴルフに活かされたことをより深掘りした内容に。
まず、松坂さんが飛ばせる理由は、野球で培ってきた「体重移動」にあると分析する。
「僕たちは野球のなかで、基本的に『体重移動』を使って速い球を投げたり、バッティングでボールを飛ばしたりしていたので、体を大きく使う“クセ”があると思います。そのおかげでゴルフの飛距離が出ていると思っています。テイクバックで右に乗った重心を、インパクトまでにアドレス時の重心位置まで戻すことが重要だと思います。これは野球のバッティングでも同じで、バッターはインパクトの瞬間に構えているときの位置に重心が戻ってくる感覚です。ただ、僕はピッチャーだったので、よくないクセがあります。前の足(右投げなら左足)に重心を乗せてボールを投げるので、ゴルフでは左に重心が乗って突っ込んだような形になってしまうことです。そうならないように気を付けていますけど、なるべく体を大きく使って体重移動を使うようにしていますね」(松坂さん)

『司会のゴルフ5契約伊藤元気プロとゴルフと野球に通ずる感覚や技術について談義する松坂さん』
さらに、ボールを操るピッチャーとしての経験がもっとも活きているというのが、インパクト直前のヘッド操作だ。野球でボールを投げる際の「スナップ」の感覚をゴルフに転用しているという。
「ドライバーでも最後に球を捕まえる感覚は、野球でボールを投げるときに最後にスナップを効かせる感覚に近いです。フェースローテーションなどは難しくてよくわからないので、そういったイメージを持ってショットしています」(松坂さん)

『野球でボールをリリースする際に“スナップを効かせる”感覚は、ゴルフではインパクトの際に“球を捕まえる”感覚やスイングのなかで“ヘッドを走らせる”感覚に近いと話す』
アルペングループマガジン取材班は、イベント終了後に“ゴルフと野球”の体の使い方について独自に詳しく話を聞いた。
「現役時代、ピッチングのセットポジションでは、脱力していかにリラックスできるかを意識していました。それはゴルフで言うと“アドレス”だと思います。僕はアドレスのときはリラックスして脱力するように心がけていますね」(松坂さん)
ずっと力んでいると体には徐々に疲労が蓄積していくため、インパクト(ピッチングで言うとリリース)のタイミングで100の力を発揮できなくなるという。
そのため、セットポジションやアドレスの段階ではリラックスして、インパクトまでの準備をしているということだ。
続けて、松坂さんから面白い話を聞くことができた。
「関係あるかはわからないのですが、(ゴルフのショットで)左に曲げるのは得意です」(松坂さん)
松坂さんと言えばストレートで打者を圧倒するイメージが強いが、そのストレートを活かす変化球も、どれを取っても一級品。
なかでも得意としていたのが「スライダー」だ。

『松坂さんの得意球種「スライダー」の握り』
「基本的には真っ直ぐ飛ばしたいと思っていますけど、少し曲げなきゃいけないなと思ったときに、右より左に曲げるほうが得意で、イメージも出しやすいんです。パッティングでもフックラインのほうがイメージしやすいですね」(松坂さん)
野球で培った技術や感覚を、ゴルフにも存分に活かしてプレーしている印象だった。
今後も、野球のみならず、ゴルフ界でもその存在感を発揮し、大いに盛り上げてくれることだろう。
「平成の怪物」のゴルファーとしての挑戦から、これからも目が離せない。

◆松坂大輔プロフィール
高校時代に甲子園で春夏連覇を達成し、剛速球と切れ味鋭い変化球を武器に「平成の怪物」と呼ばれる。
1998年にドラフト1位で西武ライオンズに入団し、多くのタイトルを獲得。
その後はメジャーリーグでのワールドシリーズ制覇、日本代表のエースとしてWBCでの優勝とMVP獲得など、数々の金字塔を打ち立て、2021年に惜しまれつつ現役を引退した。
現在は野球解説者やスポーツコメンテーターとして活躍しながら、大好きなゴルフでもトーナメントに出場するなど、精力的に活動している。
【文章・写真】アルペングループマガジン編集部