おこがましいにもほどがある!……とお叱りを受けるのを承知の上で書く。
今年のドジャース、ちょっと阪神に似ているかもしれない。
いや、わかってはいるんですよ。違うに決まっている。というか、たぶん、まるで違う。ただ、そこを踏まえた上で、どうしても思ってしまうわけです。
あれだけ圧倒的な戦力を揃えていながら、これ?
8月21日現在、ドジャースは地区2位のパドレスに9ゲーム差をつけている。凄い。ダントツ。阪神なんぞより、はるかに圧倒的である。地区優勝へかなり有利な位置にいて、監督や選手、ファンの意識は早くもポストシーズンに向けられているのかもしれない。
とはいえ、それはあくまで地区の中での話だ。
ナショナル・リーグ全体を見れば、80勝でトップに立っているのはブルワーズ。ドジャースは78勝で、その背中を追っている。
では、そのブルワーズもドジャースに匹敵するスター軍団なのか。世界中から大物を集め、資金力で圧倒しているのか。
もちろん、そんなことはない。
投入している資金も、並んでいる名前の豪華さも、ドジャースとは大きな差がある。それでも、ここまで積み重ねた白星ではブルワーズが上回っている。
阪神だって、必ずしも他球団を圧倒するほどの金満球団ではない。にもかかわらずセ・リーグの首位を走っているのだから、その意味ではドジャースよりずっと効率よく勝っている、と言えなくもない。
それでもなお、「もっとやれるだろ」という感覚が消えない。そのあたりが、妙に今年の阪神と重なって見えるのである。
なんだかんだ言いながら、わたしはセ・リーグなら阪神、パ・リーグならソフトバンクが最後はペナントを制すると思っている。ならばドジャースにも素直に太鼓判を押したいところなのだが、ポストシーズンとなると少し気になる。
チーム構成に、わずかなアンバランスさを感じるからである。
先発陣だけを見れば、文句のつけようがない。
山本がいて、スネルがいる。さらに2年連続サイ・ヤング賞のスクーバルまで獲得した。グラスノーも復帰が近づき、大谷も投手としての復帰を目指している。スクーバル加入によって、もともと厚かった先発陣はさらに豪華になった。
ただ、そんな先発陣にも、ここにきてひとつ気になる材料が出てきた。佐々木朗希である。8月26日のブレーブス戦で、右手中指にマメができたため4回途中で降板。試合後、負傷者リスト(IL)入りとなった。ポストシーズンを見据える時期だけに、もちろん痛い。それでもなお、先発陣の厚みが大きく揺らぐわけではない。これだけの離脱があっても豪華さを保てること自体、ドジャースの戦力の凄まじさを物語っている。
正直、反則にもほどがあるというか、大昔、ヤンキースが強すぎたゆえに「ダム・ヤンキース(くたばれヤンキース)」という言葉が生まれたが、そろそろドジャースを罵るフレーズが生まれてもおかしくないほどの強欲……もとい、補強ぶりである。
ところが、そこまで先発陣を充実させながら、ブルペンにはまだ不安が残っている。
また阪神を持ち出して恐縮だが、序盤戦の阪神も似たような状況だった。
石井がいない。及川、桐敷の状態が上がらない。岩崎、ドリスにも陰りが見える。昨年までなら「終盤までリードしていれば何とかなる」と感じられたところに、今年はそう言い切れない時期があった。
だが、阪神の場合は木下、工藤といった若手が出てきたことで、夏場に入って状況がかなり改善されつつある。
ドジャースはどうか。
メッツからFAとなり、3年6900万ドルの大型契約で獲得したエドウィン・ディアスは、少なくともここまでは期待通りとは言いにくい。
8月21日現在で2勝2敗7セーブ。さらに目につくのが、防御率11.85という数字である。現在は首の炎症によって負傷者リスト入りしている。
とはいえ、これまでの実績を考えれば、このまま終わる投手だとは思えない。
問題は、クローザーが安定しないことで、ブルペン全体の役割まで揺れやすくなることだ。
相手チームからすれば、「終盤まで接戦に持ち込めればまだ何かある」と思える。実際、8月には試合終盤で流れを失うケースもあり、今季ワーストの7連敗も経験した。
つまり、3連覇へ向かううえでの宿題を残したまま、シーズン終盤へ入ろうとしている。
思い返せば、ワールドシリーズを制した昨年も、ドジャースのブルペンは決して盤石ではなかった。
それでも最後は世界一になった。
もちろん、そこには山本をはじめとする投手陣の驚異的な活躍があったし、結果を出した以上、それも立派なチーム力である。
ただ、一度うまくいった勝ち方を、翌年もそのまま再現できると考えるのは危険だ。
さて、二匹目のドジョウは今年もいるのだろうか。
たとえディアスが復調しても、一度失った信頼を取り戻すまでには、多少時間が必要になるだろう。
本来ならそこまで危機的ではない場面でも、野手やファンの中に「またかよ」「大丈夫か」という空気が広がってしまうことはある。
どれほど経験豊富な選手であっても、そうした雰囲気の中で毎回ベストを出すのは簡単ではない。

そうなればロバーツ監督は、昨年と同じように、本来ならブルペン待機を想定していない投手にまで準備させる場面が出てくるかもしれない。
采配の根底に、彼は“計算”ではなく“願望”を置くことになる。
そこが、いまのドジャースを見ていて最も引っかかるところである。
野村克也さんが好んで引用した「勝ちに不思議の勝ちあり」という言葉がある。
野球という競技は、弱点を抱えていても、その日の流れや一つのプレー、誰かの爆発的な活躍によって一気に頂点まで駆け上がることがある。
ましてやドジャースである。
長いシーズンを戦うだけなら、戦力は王者の名にふさわしい。
ただし、短期決戦は別物だ。
計算できる先発投手は、必ずしも何人も必要ではない。特に5試合制のディビジョン・シリーズなら、信頼できる先発が3人いれば十分に戦える。
対戦相手にしてみれば、ロースコアのまま終盤へ持ち込み、ドジャースのブルペンを引きずり出せばいい。
そこまでたどり着けば、勝つチャンスは出てくる。
一方で言えば、ドジャースが終盤まで含めて「計算できるチーム」になった瞬間、見え方は一変する。
山本、スネル、スクーバルらを擁する先発陣。そして強力な打線。そこに安心して任せられるブルペンまで加われば、短期決戦でこれほど嫌な相手はいない。
現時点では、わたしはまだドジャースの3連覇に太鼓判を押すところまではいかない。
ただし、何を整えればいいのかは明確である。
ブルペンという“最後のピース”が埋まれば、ドジャースは名実ともに3連覇の最有力候補になる。
10月までに、その答えを見つけられるか。
今年のドジャースを見るうえで、わたしが最も注目しているのはそこなのである。
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【文章】金子達仁
【写真】田中雄二