「世代交代」と「世代間の融合」を大きなテーマに掲げる森保ジャパン。その中で、東京五輪世代の筆頭である堂安律(フローニンゲン)や冨安健洋(シント・トロイデン)、レアル・マドリードへの移籍が決まった久保建英など、数多くの若手が招集されている。 昨年10月に行われた「キリンチャレンジカップ2018」で日本代表デビューを果たした、清水エスパルス(※)の23歳FW北川航也もそのひとり。彼は昨季、J1でキャリアハイとなる13得点を挙げ、現在、急成長を遂げているストライカーだ。 しかし、代表戦では出場8試合で無得点に終わり、苦汁をなめる経験となってしまった。今回は、そんな日本代表での活躍に闘志を燃やす北川に、自身の経歴を振り返りながら、スパイクへのこだわり、そして日の丸への想いを直撃(取材日:2019年5月28日)。 そこには、ジュニアユースから共に成長してきたからこそ抱く、エスパルスに対する“チーム愛”があった。 ■プロでは“考える力”がないと生き残れない。北川航也がエスパルスで学んだ、成功者の条件 ――サッカーを始めるきっかけを教えてください。 北川:僕が幼稚園の頃、2つ上の兄がサッカーをしていたことがきっかけで始めました。 小さい頃は兄のすることなら何でも真似をしていたので、それが野球なら野球、テニスだったらテニスをやっていたでしょうね(笑)。 それから静岡のクラブチームに入って本格的にサッカーをするようになり、中学校に進学してからは清水エスパルスのジュニアユースでプレーしていました。 ――プロのサッカー選手になろうと思ったのはいつ頃でしょう? 北川:ちょうど中学1年生の時ですね。ジュニアユースのチームに入るということは、最終的にはトップチームに昇格してJリーガーになる、という覚悟を決めることが大前提ですから。 まぁ小学生の頃から漠然と「プロになりたい」とは思っていたのですが、それがジュニアユースに所属するタイミングで確信に変わったと。そういう感じです。 ――それからユース、そしてトップチームへと階段を上っていくと思いますが、やはりその頃は相当、練習に時間を割いていたのではないですか? 北川:いえ、逆にその頃はあまりトレーニングができていなかったんです。 というのも、ジュニアユースやユースだと、練習するにも時間が限られてしまって。だからプロに入ってからの方が練習時間は多くなっていると思います。 なんなら小学生の時の方がたくさんボールを触っていたかもしれません。 ――勉強する時間も作らないといけませんしね。学生時代にプレーを参考にしていた選手はいましたか? 北川:僕は昔からFWだったので、エスパルスの所属で、かつ同じポジションである岡崎慎司選手のプレーは常に目で追っていました。 ポジション柄、岡崎選手を含めFWの選手の動きや得点シーンなんかはよく見ていたと思いますよ。 ――では、実際にプロのチームに入った時の印象をお聞かせください。 北川:予想していた以上に厳しい世界だなと感じました。 プロになる前までは、Jリーガーは花がある職業だなと、そういうイメージを持っていたんですね。 しかし、いざ自分がトップチームに昇格してみると、嬉しさや喜びよりも、苦しいことや悲しいことの方が多かった。 もちろん楽な世界ではないとは思っていましたが、やはり最初はうまくいかないことばかりで。挫折を味わうこともありましたね。 ――そうでしたか…。ただ、そういった苦しい時期を過ごした中で、昨季はキャリアハイの13得点をマークされました。ご自身にとってのターニングポイントは何だったのでしょう? 北川:2016シーズンにJ2で戦った“経験”です。 クラブ史上初のJ2降格が決まって、翌年は「絶対にJ1に昇格しなければいけない」と思いながら過ごしたシーズンでした。 そういったプレッシャーの中ではありましたが、僕自身、初めて年間通して試合に出続けることができたんです。 さらに得点数においても、前年は1点しか取れなかったのですが、一気に9得点まで成績を伸ばすことができました。 結果的に1年でJ1に戻れたので、2015シーズンはチームにとっても、僕個人にとってもいい経験ができた1年だと思いますね。 加えて、その頃からサッカーをやる上での考え方も変わってきました。 ジュニアユースやユースの時代は、プレーでうまくいかないことがあれば、何かとそれを周りのせいにしている自分がいて。何でダメだったのか、ということを自分であまり考えていませんでした。 でもプロになってからは、いろんな先輩から話を聞いたり、考え方を学ぶ機会が多くなって。 「あ、プロの選手は一つひとつのプレーに対して、これだけ考えながら取り組んでいるんだ」ということに気付いた時に、「自分も考えながらプレーしないと、この世界で生き残るのは難しいな」と。そう思ってからは、サッカーに対する“考える力”も養うようになりましたね。 ■「スパイクは軽さが全て」。ストライカーとしてゴールを量産するための、“ギア”に対するこだわり ――選手として成長するために、自分自身で問題点を見つけて改善するための思考力は必要ですよね。それを踏まえて、北川選手は現在、練習の中でどんなことを意識されているのですか? 北川:つねに意識していることは“サッカーを楽しむ”、ということです。 これはどんなことに対しても言えることですけど、やはり自分が「楽しい」と思わないと体は動かないですし、あまりいい結果は生まれません。 そうなると結果的に“伸びない選手”になってしまうなと、僕は感じているんです。 なので純粋にサッカーを楽しむこと、大きな声を出すことはつねに心がけています。 あとは“ボールを失わない”、ということも意識していますね。 ボールをしっかりとキープすることができれば、たとえ周りと連携が取れなかったり、ボール保持者へのサポートが遅れたとしても、狂ったリズムやフォーメーションを立て直す時間が作れますから。 そこは試合だけじゃなく、練習からこだわりを持って取り組んでいます。 ――攻撃において前線の起点になるために、体を張ってボールをキープすることはFWにとって求められる部分ですよね。では、FWの一番の仕事は“ゴール”だと思いますが、北川選手が理想とする得点の形をお聞かせください。 北川:理想はやはり“1タッチゴール”ですね。 ペナルティエリア内で、4〜5枚並ぶ相手DFのプレスをかいくぐりながら得点するには、ゴールの決まるポイントで手数をかけない1タッチゴールしかありません。 その一瞬の駆け引きの中で相手の裏をとることができれば、得点の可能性は一気に高まります。 なので、その一瞬できるスペースに入っていく迫力とスピード、動き出しのタイミングというのは意識しながらプレーしていますね。 ――続いて、そういったプレーを支えている“ギア”についてお話を伺いたいのですが、北川選手がスパイクに求めるのは、どんな要素ですか? 北川:特に重要視しているのは“軽さ”ですね。というか、それが全てだと思います(笑)。 やはりサッカーは足を使うスポーツですし、FWとしてはスピードを活かしたプレーが必要になってきます。 だとすれば、速さを生み出すための“グラム単位の軽量化”はスパイクに求めますし、僕にとって「軽いスパイクを履いている」こと自体がモチベーションになるので。 ――ちなみに、スパイクはいつも何足ぐらい用意しているのですか? 北川:試合に臨むにあたっては、必ず4足は持っていくようにしています。 僕としては、履き慣らしたスパイクを使うよりも、つねに新しい状態のものでプレーしたい。このこだわりはずっと持っていますから。 なので、試合開始前のウォーミングアップを終えたら別のスパイクにして、前半終了後にも新品に履き替えるようにしているんです。 試合で1度使用したスパイクは、次の試合には使いませんね。 ――すごいこだわりですね。メーカーはプーマを使用しているとお聞きしていますが、いつ頃から履かれているのでしょう? 北川:本格的に使うようになったのはユースの頃からです。そのあたりからチームがプーマのスパイクを提供してくれていたので、もう8年ぐらいの付き合いになりますかね。 ――その8年の期間で、プーマスパイクの変化はどのように感じておられますか? 北川:どんどん機能は進化していますし、デザイン性もよくなったので、今はすごくかっこいい印象があります。 そういう意味では、新作を着用することによって、つねに新鮮な気持ちで試合に臨めているので、より良いスパイクを生み出し続けてくれるプーマ関係者の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。 ■日本を代表する選手に成長し、“強いエスパルス”へ導く。支えてくれたチームとサポーターのために ――北川選手は昨年10月の「キリンチャレンジカップ2018」で日本代表デビューを飾り、今年1月には「AFCアジアカップ2019」のメンバーにも選出されました。これまで代表で計8試合に出場されましたが、その中で得たものはたくさんあったんじゃないかと思います。実際に日の丸を背負って戦ってみて、どのようなことを感じましたか? 北川:初めてA代表に選出していただけましたが、やはりそう甘い世界ではなかったです。 正直、昨年J1で13得点を決めて、調子がいい中での招集だったので、「日本代表でもやれる」という自信はありました。 しかし、それぐらい勢いがある中でも結果を残すことはできなかった…。 「これが国内でやっている選手と、海外クラブで“世界のサッカー”を経験してきた選手の違いなのか」と、周りと比較して感じましたね。 ――初めてのA代表選出というの中で、不慣れな部分もあったと思うのですが。 北川:そうですね。 代表のような即席チームで自分のプレーをするには、まず他の選手と信頼関係を築かなければパスを出してもらえないと思いますし、逆に自分からボールを要求することも必要です。 今思えば、そういった“積極性”も含めてまだまだ足りないところはたくさんあったな、と。 でもそれを感じることができたので、次回に必ずつながると思います。 ――代表に戻るために、まずはエスパルスでさらなる結果を残していくことが重要ですね。 北川:その通りです。やはり代表に選ばれるには、今いるチームの中でステップを踏んで成長していく他ありません。 ただ、その中でJリーグでの順位をもっと引き上げていかないと注目度が低くなってしまいます。 なので、チームの勝利を第一に考えながら、1試合1試合しっかりと貢献できるようにしていきたいと思っています。 その先に、日本代表という大きな舞台での活躍が見えてくる。 代表で味わった悔しさは代表でしか晴らせませんから、エスパルスの中で一回りも二回りも成長して、あのピッチに帰ってきたいですね。 ――期待しております!エスパルスのサポーターの方々も、きっと北川選手が日本代表で活躍する日を夢見ているはずですから。 北川:ありがとうございます。 僕自身、選手としてここまでこれたのはこのチームのおかげだと思っているので、代表での活躍はもちろんですが、サポーターの方々のために“強いエスパルス”を見せてあげられるよう全力で頑張りたいと思っています。 エスパルスはつねに選手として成長させてくれた場所ですし、何より自分の夢を作ってくれた存在です。 だからこそ、チーム関係者やずっと応援してくれているサポーターの方々には、プレーを通じて少しずつでも恩返ししていきたいんです。 ――素晴らしい“エスパルス愛”ですね。 北川:ずっと身近な存在でしたからね。小さい頃からテレビで見ていたり、スタジアムに足を運んだりしていたので。 今思えば、清水にこのチームがあって、選手としてエスパルスに入団できて本当によかったです。 ――最後に、プロサッカー選手を目指す人に向けてメッセージをお願いします。 北川:はい。僕が伝えたいことは、限られた時間の中での練習をしっかり集中して取り組んでほしい、ということ。 今は「量より質」を重要視する時代。1時間なら1時間、2時間なら2時間という限られた練習時間で、本番を見据えたリアリティのあるトレーニングを高い集中力を持って行うことができれば、必ず結果は出てきます。 要するに、練習を何となくやるのではなく、少ない時間でも頭を使いながら意識を高く持って取り組めるかどうかが、サッカー選手に必要となる考える力や技術を高めるための“カギ”となるのです。 加えて、練習以外の時間を“何に使うか”も重要になってきます。 人によっては、練習だけでは解決できないさまざまな課題に直面することもあるでしょう。 だったら、インターネット内で見つけた「課題に対する解決策」を実行してみたり、いろんな人に話を聞きに行ったり。プライベートの時間を利用して、何かしらのアクションを起こすことが大切になってきます。 そういった小さな努力をコツコツ積み重ねることが、後々、サッカー選手としても人としても、周りに大きな差をつけることになるはずですから。 ※所属チームは取材時の在籍チーム。
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