背番号物語(第8回)~Jリーグの歴史を彩った「9番」を振り返る

(上写真:横浜F・マリノスの谷村海那は、9月に日本代表に初めて招集された)


背番号には、物語がある。歴史がある。記憶がある。Jリーグを彩ってきた名手を、現在活躍中の選手を、背番号とともに振り返っていく。


今回は「9」を取り上げる。

 

「9」はストライカーの番号だ。Jリーグは1993年の開幕から96年まで、スタメンの選手が1番から11番までを着ける変動背番号制だったが、初代得点王のラモン・ディアス(横浜マリノス、チーム名は当時)、日本人初の得点王となった福田正博(浦和レッズ)は、ピッチに立つ際は「9」を背負った。黎明期のJリーグにおいて、この数字からプレースタイルを連想させる選手だった。

 

Jリーグのシーズン最多得点記録(36点)を持ち、2度の得点王に輝いた中山雅史も、ジュビロ磐田で長く背番号9を背負った。彼もまた、この番号を象徴する選手のひとりだ。

 

1993年のJリーグ開幕を知る“オリジナル10”の清水エスパルスは、背番号9の系譜が実に多彩だ。元日本代表FWの長谷川健太、北嶋秀朗、永井雄一郎、元スウェーデン代表フレデリック・ユングベリ、北朝鮮代表としてW杯に出場した鄭大世、22年にJ1得点王になったブラジル人チアゴ・サンタナらが背負ってきた。ストライカーとしての血が濃い点取り屋がいて、チャンスメイクに長けたアタッカーがいた。現在は韓国代表歴のあるオ・セフンが着け、得点源の重責を担っている。

 

同じく“オリジナル10”のガンバ大阪の背番号9には、外国人助っ人の名前がズラリと並ぶ。古くはカメルーン代表の“浪速の黒豹”エムボマのアイコンであり、その後はJ1得点王に輝いたアラウージョとマグノ・アウベス、多彩な攻撃センスを示したルーカス、在籍した3シーズンすべてで2ケタ得点をあげたレアンドロらが、関西の雄の「9」の歴史を彩った。

 

J1リーグ最多優勝にして現王者の鹿島アントラーズでは、鈴木隆行、平瀬智行、田代有三、大迫勇也(現在はヴィッセル神戸)、鈴木優磨らが歴史をつないできた。ブラジル人のアレックス・ミネイロ、エヴェラウドも、リーグ戦2ケタ得点を記録した。いずれも本格派のストライカーである。

 

現在はレオ・セアラが着けている。21年シーズンから横浜F・マリノス、セレッソ大阪とチームを変えながら、25年まで5年連続で2ケタ得点を記録している。鹿島アントラーズ移籍1年目の25年は、21ゴールで自身初の得点王に輝いた。ワンチャンスで確実にゴールを奪う決定力は、強者揃いの歴代外国人でもトップクラスと言っていい。

 

鹿島に次いで5度のJ1制覇を達成している横浜F・マリノスでは、谷村海那がストライカーの象徴たる番号を背負う。かつてラモン・ディアスや城彰二、久保竜彦らが着けた「9」を、25シーズン年途中から継承している。

 

谷村はJ2のいわきFCでプロキャリアをスタートさせ、24年に18ゴールをあげて得点能力を開花させた。翌25年7月、F・マリノスに引き抜かれて6ゴールを記録し、今年前半のJ1百年構想リーグでは10得点をあげた。8月開幕の26/27シーズンでも、8節終了時点で6ゴールをマークしている。最前線で起点となりながらシュートチャンスを逃さない28歳は、9月に日本代表に初招集された。今最も旬なストライカーと言える。

 

 

レアンドロ・ダミアンは川崎フロンターレの黄金期を支えたストライカー


鹿島アントラーズ、横浜F・マリノスに次ぐ4度のJ1優勝を数える川崎フロンターレでは、我那覇和樹、鄭大世、矢島卓郎、森本貴幸らが9番の歴史を紡いでいった。外国人選手では、19年から23年まで在籍したレアンドロ・ダミアンが特筆すべき成績を残した。

 

加入2年目の20年は得点ランキング5位タイの13ゴール、21年は23ゴールで得点王となり(前田大然と同時)、チームのJ1リーグ連覇に貢献した。このブラジル人はしなやかな身のこなしが特徴で、難しいパスをいとも簡単にゴールしてみせた。チームの一員として守備に精力的な姿勢も、高く評価されていた。

 

J1リーグ優勝3度のサンフレッチェ広島では、李忠成と石原直樹がインパクトを残した。李は10年に11ゴール、11年に15ゴールをあげ、日本代表に初選出された。石原は李が海外移籍した12年に9番を引き継ぎ、主力選手のひとりとしてJ1制覇に貢献した。翌13年には自身初の2ケタ得点(10点)をマークし、チームのリーグ連覇を後押ししている。

 

その後は、16年に「9」を着けたナイジェリア人FWピーター・ウタカが、同シーズンにJ1得点王となった。また、19年から24年まで6シーズン在籍したブラジル人ストライカーのドウグラス・ヴィエイラは、J1で133試合に出場して34ゴールを記録した。

 

柏レイソルの細谷真大は、近年のJリーグを代表する背番号9と言っていいだろう。アカデミー育ちの25歳は、北嶋秀朗、故・工藤壮人さん、クリスティアーノらが着けたエースナンバーの継承者にふさわしい。24年のパリ五輪で攻撃の柱としてプレーし、22年から日本代表に招集されてきた彼は、日本人離れしたフィジカルの強さと、ゴール前での勝負強さを併せ持つ。

 

細谷と同じ01年生まれの櫻川ソロモンも、セレッソ大阪で「9」を着ける。西澤明訓、杉本健勇(現在はJ2・RB大宮アルディージャ)、レオ・セアラ(現在は鹿島アントラーズ)ら、歴代の9番に連なる大型ストライカーである。当時J2のジェフユナイテッド千葉で20年にプロキャリアをスタートさせ、ファジアーノ岡山、横浜FCを経て26年にセレッソの一員となった。

 

190センチ、94キロの恵まれた体躯を生かし、最前線で起点になりながら好機を逃さない。セレッソ移籍後はゴール前での冷静さを身に着けており、自身初のリーグ戦2ケタ得点も視野に入る。その先には、クラブレベルでのさらなるステップアップや代表入りも見えてくる。

 

京都サンガF.C.のラファエル・エリアスは、24年にシーズン途中加入で11ゴールを叩き出し、チームのJ1残留の原動力となった。翌25年は得点ランク2位タイの18得点をマークし、チームを過去最高の3位へ押し上げた。ヘディングでも、左右両足でも、得点を決めることができるマルチな点取り屋だ。

 

今シーズンはキャプテンを任され、これまで以上にモチベーションが高い。プレーだけでなく精神的にもチームを支える存在だ。

 

 

小川航基は24年以来の国内復帰。FC町田ゼルビアの9番を背負っている


26年の北中米W杯に出場した小川航基は、8月にオランダ1部のNECナイメヘンを離れ、FC町田ゼルビアの一員となった。オランダを含めてヨーロッパでキャリアを継続することも可能だったが、横浜FCに在籍していた23年6月以来の国内復帰を選択した。

 

新天地では加入2戦目で2ゴールを叩き出すなど、すぐにフィットした。186センチの長身を生かしたヘディングシュートはもちろん、左右両足から放つ一撃も冷静で精度が高い。町田で勝利につながるゴールを決め、9月・10月は招集外だった日本代表復帰を目ざす。

 

FC東京のマルセロ・ヒアンは、馬力のあるドリブルで局面を打開できるストライカーだ。22年の来日当初プレーが粗削りだったが、24年に当時J1のサガン鳥栖で14ゴールをマークし、自身を膨らませていった。FC東京には25年に移籍し、チームトップの8ゴールを記録した。26年2月開幕の百年構想リーグから9番を着け、チームの得点源となっている。単独で突破できる力を持つが、日本で経験を重ねることでチームメイトを使い、自らも効果的に使われるようになってきた。来日5年目だがまだ24歳であり、Jリーグで長くキャリアを構築する可能性を秘めている。

 

26/27シーズンは、J2のクラブにも触れるべき「9番」がいる。RB大宮アルディージャのカルリーニョス・ジュニオだ。20年から24年まで清水エスパルスで、25年はジェフユナイテッド千葉でプレーし、合計6シーズンで3度のリーグ戦2ケタ得点を記録している。難しいパスでもしっかりとコントロールし、コースを狙い定めてシュートを打つことができる。

 

また、174センチのサイズだがヘディングの技術が高く、どちらのサイドからのクロスも確実に競り勝ってみせる。RB大宮アルディージャでは4-3-3のCFを定位置とし、リーグ屈指の攻撃力を誇るチームを牽引している。彼が持ち前の決定力を発揮することで、チームはJ1昇格へ近づいていくだろう。
 

 

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【文章】戸塚啓
【写真】佐野美樹

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