「一番よかったスパイク」は三者三様。4大ブランドを履き比べて見えた、サッカースパイク選びの奥深さ

サッカースパイクは、実際にピッチで履いてみなければわからないことがある。

 

足を入れた瞬間のフィット感はもちろん、走り出したときの反発力、ボールを蹴ったときの感触、切り返しのしやすさ。店頭で試着しただけでは気づけない違いも少なくない。

 

 


10月22日、大阪府の服部緑地で、アルペングループ主催のサッカースパイク試し履き会が開催された。

 

昨年の九州開催に続く今回は、関西エリアを中心に(アルペングループの)各店舗の販売スタッフが参加。ミズノ、アシックス、アディダス、ナイキの4ブランドを横断し、実際のプレーを通してそれぞれの特徴を確かめた。

 

 

 

興味深かったのは、参加者が最も気に入ったスパイクが、それぞれ異なっていたことだ。何を重視するかによって、選ぶ一足はどう変わるのか。3人の販売スタッフに話を聞いた。

 

 

■走って、蹴って、切り返す。実際のプレーで確かめるスパイクの違い

 

 

会場ではウォーミングアップからスタートし、対面パス、三角形でのパス回し、ポストプレーからのシュート練習を実施。最後は8対8のゲーム形式で締めくくった。

 

 

 

参加者はスパイクを履き替えながら、さまざまな動きを繰り返す。直線的なスプリントだけでなく、ボールを受けてからの方向転換や、シュートに移る際の踏み込みなど、実戦に近い動きの中で履き心地を確認できるのが、このイベントの魅力だ。

 

 

 

今回のラインアップについて、運営に携わった向井風太さん(本社 販売企画グループ サッカーチーフアドバイザー)はこう説明する。

 

「現在、販売の中心となっているミズノ、アシックス、アディダス、ナイキの4ブランドは、しっかり揃えたいと考えていました。各メーカーの皆さんにもご協力いただき、今回の試し履き会を実現できました」

 

 

 

参加者はサッカー経験者だけではない。プレー経験の異なるスタッフが同じグラウンドに立ち、それぞれの感覚で製品を評価した。

 

 

 

藤川祐樹さん(スポーツデポ なんばパークス店 サッカーシニアアドバイザー)は、その点に大きな意味を感じたという。

 

「サッカー経験者だけでなく、未経験者も含め、男女問わず一緒にプレーできたことがよかったです。いろいろなスタッフに話を聞くと、スパイクの好みや感じ方が本当に違うんですよ。さまざまな意見を聞けたことが、貴重な経験になりました」

 

実際に履いてみると、どんな違いが見えてくるのだろうか。

 

 

■ナイキの反発力に驚き、それでも選んだのは「コパ アイコン 2 ELITE HG/AG JAPAN」

 

 

向井さんが今回、特に楽しみにしていたのは、ナイキの「マーキュリアル スーパーフライ 11 エリート AG-PRO」だった。

 

以前の試し履き会でも体験していたが、当時は比較的狭いフットサルコート。今回は広いピッチで、その性能を改めて確かめたかったという。

 

 

 

「実際に履いてみると、エア ズームの反発感をしっかり感じられました。やっぱりすごいスパイクだなと思いましたね」

 

ところが、すべての試し履きを終えて、向井さんが最も高く評価したのは別のモデルだった。

 

アディダスの「コパ アイコン 2 ELITE HG/AG JAPAN」だ。

 

 

 

「今回履いたコパ アイコン 2 ELITE HG/AG JAPANは、試し履き用のサンプルがすでに少し使い込まれていて、くたっと柔らかくなっていたんです。その分、足なじみがよく、履き心地も非常によかったですね。今回、自分の中ではコパ アイコン 2 ELITE HG/AG JAPANが一番でした」

 

 

 

反発感が印象的だったマーキュリアル スーパーフライ 11 エリート AG-PROに対し、コパ アイコン 2 ELITE HG/AG JAPANでは足になじむ感覚を評価した向井さん。

 

機能面で魅力を感じるモデルと、自分が最も心地よくプレーできるモデルは、必ずしも一致しない。その違いを確認できたことも、今回の収穫だった。

 

 

■疲れた足に感じた優しさ。藤川さんが選んだ「DS LIGHT PRO」

 

 

藤川さんが試したかったのは、アシックスの「JETRAY ELITE」と「JETRAY PRO」。

 

店舗ではPROを取り扱っているものの、上位モデルのELITEと履き比べる機会はなかったという。

 

「店頭では試し履きができても、どうしてもスペースが限られます。人工芝が敷いてあっても、実際のグラウンドとは違いますからね。スプリントしたときの感触や、カットインしたときの足の曲がり方まで確かめられたのは、すごくよかったです」

 

 

 

両モデルを実際のプレーで試せたことに手応えを感じながらも、藤川さんが最も気に入ったのは「DS LIGHT PRO」だった。

 

その理由には、現在の自身のプレー環境が関係していた。

 

「今は現役でプレーしているわけではないので、久しぶりにスパイクを履いて動くと、やっぱり疲労感がはっきり出るんです」

 

今回の試し履きでは、コパ アイコンやモレリアにも足に優しい感覚があったという。その中で、DS LIGHT PROはクッション性とソールの柔らかさが特に印象に残った。

 

 

 

「リカバリーというほどではありませんが、足への負担を軽減してくれるような感覚がありました。今回の自分には、DS LIGHT PROが一番合っていると思いましたね」

 

スパイク選びでは、軽さや反発力に目が向きがちだ。しかし、プレーする人の年齢や運動頻度、足の状態によっては、クッション性や柔らかさが大切な判断材料になる。

 

藤川さんの感想は、そうした選び方の一例を示している。

 

 

■「履いていないくらい自然」。目黒さんが語るモレリアネオ5 JAPANの魅力

 


目黒心さん(Alpen OSAKA:スポーツデポ フラッグシップストア 大阪梅田店)が楽しみにしていたのは、発売されたばかりのアシックス「JETRAY PRO」と、ナイキの「マーキュリアル ヴェイパー 17 エリート AG-PRO」「マーキュリアル スーパーフライ 11 エリート AG-PRO」だった。

 

JETRAY PROは、事前のイメージを上回る好感触だったという。

 

 


「想像していた以上にフィット感がよく、ボールタッチの感覚もよかったです。履く前のイメージより、ずっと好印象でした」

 

一方、ナイキの2モデルでは、自身の足幅との相性を確かめることができた。

 

「僕は足幅が広いので、実際にプレーしたらどうなのか気になっていたんです。足を曲げたときに若干の圧迫感はありましたが、それ以上に軽さや縦への推進力、切り返しのスムーズさを感じました」

 

店頭で履くだけではわからなかった長所と、気になる部分。その両方を確認できたことは、今後の接客にも生かせるという。

 

そんな目黒さんが、最終的に一番よかったと感じたのは、ミズノの「モレリアネオ5 JAPAN」だった。

 

 

 

「実は、現役時代に履かなかったことを一番後悔しているスパイクなんです。今回もいろいろなモデルを試した後、最後にモレリアネオ5 JAPANを履いたんですが、やっぱり自分には一番合っていると感じました」

 

では、何がそこまで気に入っているのだろうか。

 

「極端に言えば、履いていないくらいに感じることですね」

 

目黒さんは、その理由をこう続ける。

 

 

 

「プレー中に靴を意識するということは、それだけ足元に意識が向いているということ。痛みや圧迫感があれば、どこかでプレーの判断にも影響すると思うんです。でも、モレリアネオ5 JAPANにはそれが本当にない。サッカーをすることに集中できるスパイクなんですよね」

 

発売されたばかりのモデルを試す楽しさがある一方、長年支持されてきた定番モデルのよさも再確認できる。

 

ブランドを横断して履き比べるからこそ、そんな発見も生まれる。

 

 

■試し履きの経験を、次の接客へ。来年は関東開催にも意欲

 

 

今回、3人が最も気に入ったモデルは、アディダスのコパ アイコン 2 ELITE HG/AG JAPAN、アシックスのDS LIGHT PRO、ミズノのモレリアネオ5 JAPANと、見事に分かれた。

 

反発力に驚く人もいれば、足への優しさを重視する人もいる。何より自然にプレーできる感覚を求める人もいる。

 

同じグラウンドで履き比べても、評価は一つに定まらない。その事実こそ、スパイク選びの奥深さを物語っている。

 

今回の試し履き会で得た経験を、各店舗の接客へどうつなげていくのか。

 

 

 

向井さんは、販売スタッフ同士で感想を共有することの重要性を挙げる。

 

「実際に履いたスタッフの評価や感想を共有して、それぞれのスパイクの特徴や、気になった部分を接客に落とし込んでいきたいですね」

 

さらに、参加者のレビューを動画などで残し、ほかの店舗でも活用するアイデアも語った。

 

「実際にスパイクを履いたスタッフのレビューを動画にして、ほかの店舗のスタッフにも見てもらう。僕自身もYouTubeなどのレビュー動画を参考にすることがあるので、そういう形で共有できれば、接客の勉強にもなるんじゃないかと思います」

 

昨年の九州、今年の関西と開催地域を広げてきた試し履き会。向井さんは、次の開催地として関東を挙げる。

 

 

 

「関東は(アルペングループの)店舗数も多いエリアなので、ぜひ次回は関東で開催したいですね。商品部のバイヤーの皆さんとも協力しながら、まだ開催できていない地域にも広げていければと思います」

 

スパイクは、履く人によって評価が変わる。だからこそ、販売スタッフ自身が走り、蹴り、足で感じた経験には価値がある。
 

 


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【写真】斎藤友也
【取材・文章】池田鉄平

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