■On Cloudboom Strikeが2代目にアップデート
On(オン)が誇るスーパーシューズがアップデート。Cloudboom Strike 2(クラウドブーム ストライク 2)、LightSpray Cloudboom Strike 2(ライトスプレー クラウドブーム ストライク 2)が7月30日にいよいよリリースされます。今回も、これぞ “スイスエンジニアリング” と、その風格にもすでに機能性の進化を感じます。
特殊なフィラメントをスプレイしてアッパーを生成するという新しい概念『LightSpray™(ライトスプレー)』アッパーバージョンが追加されたことも進化の象徴ですが、今回Cloudboom Strike 2は、単に軽くなった、反発が高まったという話ではなくて、Onの代名詞ともいえるCloudTec®(クラウドテック)そのものが、新しい形へ進化したのです。
今回、前足部にある独特な形状のCloudTec Sphere™(クラウドテック スフィア)に進化、マラソンの最後まで脚を残す、というテーマのもと、推進力という機能性とは本来相反する機能性、安定感を両立したような新しい感覚の接地感になっています。
では、進化したCloudboom Strike 2はどこが変わって、ランナーにどんなメリットがあるのか、そしてLightSpray™が社会に与えるインパクトをご紹介したいと思います。
■ CloudTec®は、CloudTec Sphere™に進化

CloudTec®とは、あの“穴“のことだけを指していたのは過去の話、もはや、このコンセプトは進化して、独特の穴形状も包括して構造全体を指す概念になっています。
穴自体の形状や配置される場所でもその機能性が変わることには変わりがなく、様々な試行錯誤の結果、CloudTec Sphere™では、溝状のも含めて、ミッドソールが構造としては独立したポッド構造をしていて、前足部にその構造は集中しています。
クッショニングチャネル、側面に溝状のスペースがあることで、それらは足が接地するタイミングで拡張、収縮して、実際に履いたファーストインプレションでも感じた推進性と安定性が同居する不思議な感覚を作り出しているわけです。
レースシーンで最後まで脚を残し、勝負を決めるパフォーマンスを発揮できるよう設計された、それがCloudTec Sphere™なわけです。
■ミッドソールフォームはHelion™ HF

お馴染みHelion™ HFは、PEBA製のクッショニングフォームで、素材の発泡やコンパウンド(何をどのぐらい使うか)などにより15%の軽量化に成功して、その反発弾性は6%向上、カーボンプレートであるカーボン製Speedboard®(スピードボード)とCloudTec Sphere™という新設計の構造のそれぞれが共鳴して推進力を発揮します。
ちなみに、一般的にスーパーシューズでは、ミッドソール上層と下層の間にカーボンプレートが挟まる構造ですが、Cloudboom Strikeシリーズの場合、その上層を、なんとインソールが代用するという独創的なデザインになっています。
インソールをミッドソールの上層にするというアイディア自体、斬新ですが、結局、フォームの感触をランナーの足に直に伝えるにはこの方法がいちばんというわけです。
そのバウンスボードを抜くとカーボン製のSpeedboard®が底面に見え、つまり、インソール状のバウンスボードを抜くことは、言わばミッドソール上層が外れることと、同意です。もし、このバウンスボードを安易に市販インソールと交換しているランナーがいたら、それはミッドソール上層を外していることになるので注意。
つまり、Cloudboom Strikeシリーズでは、インソールも含めてミッドソールシステム、CloudTec®なのである、と言えます。
■検証でもランニングエコノミーがアップ

さて、Onはこのモデルの開発にあたり、ケープタウン大学にて機能性の検証実験を行っています。
LightSpray Cloudboom Strikeにて男子14名、女子12名の合計26名のランナーが、それぞれ16km/h(1K 3分45秒)、14km/h(1K 4分17秒)のペースで、6×5mins(3mins レスト) で業界トップクラスのベンチマークシューズと履き分けて、シューズを履く順番による疲労の影響が偏らないようにして、テスト順を入れ替えて比較、そのランニングエコノミーを確かめました。
その結果、ランニングエコノミーがなんと1.6%向上、これはサブ3ランナーなら単純換算すると約2分20秒に相当することになります。
商品ローンチイベントでスイスから来日したプロダクトストラテジー担当のKellner氏の説明では、素材のソフトネスと身体の剛性のバランスとして最も効果的な硬度に設計したとのこと。素材が柔らかくなれば、身体が自らの剛性を高める要素を加味、そこにCloudTec Sphere™構造全体がリンクして推進力を高めているわけです。まさにランナーの力を引き出す形状、構造と言えるでしょう。
■LightSpray™アッパーは業界をリードする未来の技術

今回、同時にリリースされるLightSpray™バージョンは、実は韓国で32台稼動するロボットアームが生産したもの。シューズ内のタグに “Made in Korea” とあるはずです。
これは、ロボットアームが特殊なフィラメントをシューズのラストに吹き付けて、片足約3分でアッパー生成する技術。まさに完全自動化された技術ゆえ、安価な労働力を活用したランニングシューズの生産に関する常識を壊すものです。今後はアメリカやヨーロッパなどで現地生産、現地消費という、ローカルフォーローカルを実現するものになっていきそうです。
また、この技術は、サステナブルな観点でも優秀、廃棄物の最小化、アッパーを生成する過程で発生するCO2排出量削減も達成できるものなのです。
製造スペースも省スペースでOK、可能性だけでいうと、近い将来日本のOn直営店で、オーダーするとロボットアームが目の前で、自分用に3分でアッパーを生成してくれる、なんてこともあり得ます。
LightSpray™は、単純に新しいアッパーというだけではなく、新しいシューズ製造の方法であると言えますね。
■Cloudboom Strike 2とデイリートレーナーはセットで考えたい
最後に付け加えておきたいのは、このようなスーパーシューズはデイリートレーナーとセットで考えることが大切だということです。
市民ランナーであっても、大会を目標にトレーニングを積むランナーには、「コンディショニングフェーズ」と「パフォーマンスフェーズ」があります。
Cloudboom Strike 2は、速く走るための機能性を追求したモデルです。レース本番はもちろん、インターバル走やテンポ走など、パフォーマンスを発揮したいワークアウトで真価を発揮します。
一方で、ランニングの大半を占めるのはジョグです。ジョグには有酸素能力を高めたり維持したりする役割だけでなく、次のトレーニングへ向けて身体を回復させる「コンディショニング」という重要な役割があります。
そんな日には、Cloudmonster(クラウドモンスター)シリーズやCloudsurfer(クラウドサーファー)シリーズのようなデイリートレーナーがおすすめです。

※写真はCloudsurfer 2(クラウドサーファー 2)
安定性やクッション性、ガイド性を備えたこれらのシューズは、ビギナーであれば長く快適に走ることやケガの予防につながります。一方、Cloudboom Strike 2を履きこなすランナーにとっては、ワークアウトやレースで酷使した筋肉への負担を和らげ、次の高強度トレーニングにつなげる役割を果たしてくれます。
だからこそ、Cloudboom Strike 2の性能を最大限に引き出すには、デイリートレーナーとの履き分けが重要なのです。
■Cloudboom Strike 2は、スピードを出してこそ、です

さて、Cloudboom Strike 2の話に戻すと、スピードを出してこそ、進化が発揮できる作り。ソフトネスと身体の剛性の関係にスピード要素も加えて成立するシューズと言えます。
そして、Cloudboom Strikeも古くなったわけではなくて、こちらもハイスペックだと思います。初代は接地感を意識したモデルだとすれば、2代目は、ストライドが自然に広がるモデルという感覚。個人的にはCloudboom Strike 2が好みです。
まあ、ランナーとしてはエリートランナーから市民ランナーまで、楽しめるシューズですが、個人的には、フルマラソンならサブ3前後のスピード域で、CloudTec Sphere™とランナー自身の脚の剛性がより噛み合ってくる印象があります。一方、より幅広いランナーでも、ハーフや10km、5kmと距離を短くすることで、このシューズならではのスピード感を楽しめるでしょう。
CloudTec Sphere™という構造、インソールまで含めた独創的なミッドソール設計、そしてLightSpray™という製造技術。Cloudboom Strike 2は、速さだけではなく、Onらしい"機能をデザインする"という思想が最も色濃く表れた一足と言えるでしょう。
ということで新しくなったCloudboom Strike 2、履いてみたいというランナーは是非履いてみてください。
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<著者プロフィール>
シューズアドバイザー 藤原岳久
FS☆RUNNING LAB / FS☆RUNNING Co.(合同会社FS RUNNING)
日本フットウエア技術協会理事
JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師
足と靴の健康協議会シューフィッター保持
・ハーフ1時間9分52秒(1993)
・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
・富士登山競走5合目の部 準優勝(2005)
【文章・写真】藤原岳久