秋晴れに恵まれた土曜の朝。グレイドパーク千駄ヶ谷には、東京レガシーハーフマラソン本番を2週間後に控えたランナーたちが続々と集まっていた。

今回のイベントは、ニューバランスとAlpen TOKYOが共同で開催する特別ランニングクリニック。対象シューズ購入者の中から抽選で選ばれた10名に向けて、レース本番まで全3回のセッションで徹底サポートを行うスペシャル企画だ。

第2回となるこの日は、「試走×講習」の実戦型プログラム。実際のコースを走りながら、戦略・フォーム・ペース配分といった“本番に効く知識”を体得していく。
■スペシャルゲスト・志村美希さんが登場

この日の特別ゲストは、日本体育大学出身で、陸上競技800mにおいてインターハイや全日本選手権など、数々の全国大会に出場・入賞経験を持つ実力派アスリート、志村美希さん。
現在はモデル、広告出演、企業セミナーなど多方面で活躍し、SNSを通じてランニングや陸上競技の魅力を発信するランニングインフルエンサーとしても注目を集めている。

「皆さん、ちゃんと走れていますか? 調子は大丈夫そうですか?」
志村さんの笑顔と、その軽やかな一言で張り詰めていた空気が一気にほどけ、会場には柔らかな雰囲気が広がった。
■コースを走って、学ぶ。“実戦的”とはこういうことだ

イベントのメインは、東京レガシーハーフマラソンの一部コースを実際に走る実践型の試走クリニック。
スタート直後の下り坂、市街地のフラットな直線区間、後半に控えるじわじわ脚にくる上り坂――参加者は、実際の路面を踏みながら、それぞれの攻略ポイントを体で覚えていく。
「下り坂は高揚感があって、ついペースが上がってしまう。でも、そこを抑えられるかどうかが、後半の粘りに直結します」
と、志村さんが語るのは“走りすぎない勇気”の重要性。

「特に印象深いのは三越前の大通り。広い道と華やかな街並みを走り抜ける瞬間は、まさに非日常。沿道の応援も力になり、自然と背中を押してもらえる感覚になります。まるで街全体がレースを歓迎してくれているような雰囲気が魅力です」
■見落とされがちな罠、“後半7km”の坂
参加者の関心が集まったのが、後半7km地点にある緩やかな上り坂。
志村さんは、ランナー目線のリアルな視点で注意を促す。
「見た目には大したことがない坂ですが、確実に脚に効いてきます。私も毎回このあたりでペースが落ちるんです。でも、“ここは上り坂だから当然”と意識しておくだけで、気持ちがぐっと楽になります」
こうした実地での気づきに加えて、参加者から特に関心が高かったのが「本番2週間前の過ごし方」。ここからは、志村さんとAlpen TOKYO ランニングアドバイザーの寺島俊之さんによるトークセッションで、よくある疑問に答えていった。
■教えて志村さん・寺島さん!レース2週間前の「過ごし方・食事・装備」…全部答えます!

志村さん:「3週間前~2週間前までは、つい焦って練習を積んでしまうんですが、1週間前からは思い切って“サボる”気持ちが大事なんです。疲労をためないことが一番です」
■ポイント練習は1回だけ!
志村さんが実践しているのは、「2000m→1000m→400m」という刺激練習。
・2000mと1000mはレースペース
・400mは全力で走り、身体に刺激を与える
この練習を1週間前に行うことで、回復モードに入り、本番のコンディションが整いやすくなるという。
■レース当日の食事はどうする?

志村さん:「私は前日の夜ごはんを2回に分けてしっかり食べます。朝は早くて食べづらいので、前夜にエネルギーをためておくのがコツです」
おすすめの食材は、プレーンな食パン、カステラ(脂質・繊維が少ない)、和菓子(あまり繊維が多くないもの)。
「普段はNGだけど、この日だけOK!」な食事もある。消化のいい糖質中心で、4時間前までに食事を済ませるのが理想。
■ウォーミングアップ、どこまでやる?
志村さん:「当日はバタバタしがちなので、私はその場でできるスクワットやもも上げを取り入れています。大きな筋肉を動かすだけで体はしっかり温まりますよ」
寺島さん:「タイム狙いでなければ、レース中に体を温めていくつもりでOKです。スタート直後はジョグで体のスイッチを入れるイメージで」
■シューズの選び方&使い方

寺島さん:「普段はノンカーボンで軽くて負担の少ないモデルで距離を稼ぐのが基本。カーボンはここぞという場面で使いましょう」
志村さん:「私もカーボンシューズは普段使いしません。反発が強すぎて脚が鍛えられないんです。本番直前の“刺激練習”のときだけ使っています」
■レースを楽しむコツは「前半の我慢」

志村さん:「スタート直後の下り坂で気持ちが高ぶって、つい飛ばしすぎちゃうんですよね。でも、前半で抑えれば、後半でしっかり粘れます!」
・スタート~7kmまでは「我慢ゾーン」。
・焦らず流れに乗る
・ランナーが密集する中で無理に抜かさない
・上り坂を迎える後半に体力を残す
■最後に:自分のリズムを信じて走ろう
今回のセッションでは、知識以上に「心構え」の大切さが語られていたのが印象的だった。
レース直前の不安を乗り越えるには、情報も大切だが、自分を信じる感覚もまた大切だ。
走る準備は、身体だけじゃない。本番までの2週間、焦らず、自分のリズムで過ごすことが、最高の一歩につながる。
■国立競技場を背に、記念撮影からスタート。千駄ヶ谷の街を走りながら本番をイメージ

トークセッションを終えた後、参加者たちは国立競技場をバックに記念撮影。秋の柔らかな日差しと爽やかな空気に包まれながら、ランナーたちの表情はどこか引き締まり、期待と緊張が入り混じる。
志村美希さん、Alpen TOKYOの寺島俊之さんと共に、千駄ヶ谷周辺を約8km試走する実践的なセッションが始まった。

スタート直後の緩やかな下り坂を流れるように走り出し、呼吸を整えながらペースを確認していく。普段とは違う場所、違う仲間と走ることで、自然と集中力も高まっていく。



「憧れの志村さんと一緒に走れて元気が出た!」
「ペース配分の感覚がつかめて、安心できました」
「国立競技場が目の前に見えるだけで、気持ちが高まりました!」
「FuelCell Rebel v5は、蹴り出すたびに自然と前に進む推進力が魅力。軽さと反発性のバランスが絶妙で、試走でも終始テンポ良く走れました!」
そんな感想が参加者から飛び交う中、参加者たちは本番がぐっと近づいた実感をそれぞれの身体で感じていたようだ。
■志村美希さんから、ラストメッセージ

私自身、初めて東京レガシーハーフマラソンに出た時も、仲間と試走して本番に臨みました。今日の皆さんの姿を見て、その時の気持ちがよみがえってきました。緊張するのは当然です。でも、今日お話したアドバイスの中からひとつでも当日に思い出してくれたら、それだけで十分です。
特に前半は“飛ばさずに抑えること”。それができれば、自分のベストを出せる大会になります。どうか当日は、思いきり楽しんでください!
■仲間と準備した時間が、あなたの背中を押してくれる
この日の試走は、単なる練習を超えた、「気持ちを整える」時間でもあった。
走りながら感じた空気、足の感覚、そして仲間との一体感。本番が迫る中、焦る気持ちを落ち着かせ、自分を信じるきっかけとなったに違いない。
いよいよ本番は目前。ここまでの積み重ねと今日の学びを力に変えて、それぞれの「最高の一歩」を、スタートラインから踏み出してほしい。
【写真】清水和良
【文章】池田鉄平
【取材協力】株式会社ニューバランスジャパン