■S4三代目は、YOGIRI SPEEDに
初代モデルから、フルマラソンでSUB4達成を目指すランナーに向けて展開されてきた「S4」シリーズ。Speed/Stability/Safety/Sub4の4つの「S」をコンセプトに掲げ、2代目の前作では『S4+ YOGIRI(エスフォープラス ヨギリ)』へと進化しました。そして3代目となる今作は、「S4」の名を冠した『YOGIRI SPEED(ヨギリスピード)』として9月にデビューしました。
ただし、今作の商品説明にも、「SUB4達成をめざすランナー向け」という文言が残されており、10月からハーフマラソンやフルマラソンのレースシーズンが本格化するタイミングでこのシューズが気になっているランナーの方も多いはずです。
ということで、今回はアシックスが誇る「SONICBLAST 2(ソニックブラスト 2)」、そして、王道のカーボンプレートテンポアップトレーナー「MAGIC SPEED 5(マジックスピード 5)」。この2モデルも比較しながら、YOGIRIが『YOGIRI SPEED』になった理由を解説しましょう。
■ミッドソール――実はMAGIC SPEED 5と同じ構成

今回『YOGIRI SPEED』は上層部にFF LEAP(エフエフリープ)、下層部にFF BLAST PLUS(エフエフブラストプラス)になっていて、この構造、実はMAGIC SPEED 5と同じ構成です。
FF LEAPは、アシックスが誇るMETASPEED TOKYOシリーズに搭載されている軽く、反発性に優れたミッドソール素材です。同じ名称の素材ですが、搭載量やソール構成、ミッドソール差材の構成は異なるため、感触は当然異なりますが、高性能素材が、この2モデルに搭載されていることは事実です。
一方SONICBLAST 2は、上層部にFF TURBO SQUARED(エフエフターボスクエアド)、下層部にFF BLAST MAX(エフエフブラストマックス)を採用しています。反発弾性が高い上層ソール、デイリートレーナーモデルで使用される安定感を重視した素材を下層にして、両要素のバランス型の配置デュアルレイヤミッドソールの構造になっていることが、この3モデルとも共通点です。
このような共通点を持つ3モデルですが、スタックハイトでそのキャラクターの違いが現れます。世界陸連のロードレース規定では、ソール厚の上限は40mmですが、SONICBLAST 2は46mm、MAGIC SPEED 5は37.5mmと対照的。『YOGIRI SPEED』は、39.5mmのオーソドックスなリーガル(公認)スタックハイトとなっています。
■プレート――ここでもキャラクターが分かれる

搭載プレートのキャラクターも差別化されています。
MAGIC SPEED 5は、典型的な厚底レーシングであった4代目から大きく路線を変更し、再設計されたカーボンプレートは、ミッドソールがFF LEAP搭載とはいえ、40mmを下回るスタックハイトもあって、接地感覚が印象的な、適度な反発とその操作性を強く感じるモデル、「薄底スタイル」になっています。
反対にSONICBLAST 2は、46mmの超厚底スタックハイト。そこには硬質PEBA製の二股形状のフォークハーフプレートASTROPLATE(アストロプレート)が搭載され、前足部のトランポリン構造を連動して推進力を生み出す厚底レーシング。バウンス系BLASTシリーズでは唯一のプレート搭載シューズと、そのキャラクターもはっきりしています。
さて、『YOGIRI SPEED』。これはフルレングスカーボンですが、踵側を二股に分けたセパレート形状になっています。カーボン特有のある種の硬さを軽減させ、踵接地などを想定したスイートスポットを限定しない自由度がある設計になっていると言えます。
SONICBLAST 2=素材と共鳴して弾ませるPEBAプレート
MAGIC SPEED 5=適度な反発と接地感を引き出すカーボン
YOGIRI SPEED=カーボンプレートは扱いやすさも残す
この3モデルには、それぞれ異なる特徴があり、使うシーン、使う距離、目標とするフルマラソンのタイムレンジが分かれそうです。スペックだけで言えば、『YOGIRI SPEED』は、3モデルの中で最もオーソドックスな厚底レーシングシューズという雰囲気が漂います。
■重量約227gには理由がある

重量はMAGIC SPEED 5が約196gなのに対して『YOGIRI SPEED』は約227gと約31g違います。
MAGIC SPEED 5は37.5/30.5mm、7mmドロップ。対する『YOGIRI SPEED』は後足部39.5mm、前足部34.5mmの5mmドロップと前足部にも厚みを感じるような設計ですが、そればかりか、この寸法は、実はMETASPEEDTOKYOシリーズと同じです。
ですから、私は、単なる「SUB4用S4の後継」というよりも、“METASPEEDの思想を一般ランナー側に下ろしたモデル”という一面を強く感じるんです。
とはいえ、中足部から踵の接地面を拡大し、内側にラバーを追加して安定要素を高めた作りになっています。METASPEED TOKYO シリーズを思わせるSPEEDスペックで、MAGIC SPEED 5よりオーソドックスな厚底レーシングというモデルが『YOGIRI SPEED』と言っていいでしょう。
フルマラソン後半まで支える安定感とクッション性のバランス感が重量には含まれている、それが”約227g“という重量が意味することなのです。
■S4からYOGIRI SPEEDへ、なぜ“SPEED”になったのか?

ということで、この3モデルには三者三様のポジションがありますね。
SONICBLAST 2は、超厚底のバウンスを活かす構造のシューズ。
YOGIRI SPEEDは、高反発シューズの感覚をもっと扱いやすい機能で体験。
MAGIC SPEED 5は、地面を感じながら自分の脚でスピードを作る。
同じ「SPEED」でも、アシックスはランナーの走り方とトレーニング目的によって3つに分かれていると言っていいでしょう。
私の個人的な意見として、SUB4を目指す選択肢はNOVABLASTシリーズのようなモデルにも十分あります。もしかするとそれで十分です。だからこそ『YOGIRI SPEED』を、SUB4だけに限定して考えるのはもったいないですね。
SUB4からSUB3.5ぐらいをSONICBLAST 2、SUB3.5からそれ以上を目指すランナーは『YOGIRI SPEED』。MAGIC SPEED 5はそのスイートスポットの広さから両者の守備範囲をカバーするモデル。いずれも、ランナーの好みや走法などに応じた選択肢というイメージです。
やはり履いた感覚も、スペックも『YOGIRI SPEED』はSUB4の枠にはおさまらない、扱いやすいスペックで、トップレーシングモデル「METASPEED TOKYO シリーズ」の世界を体験できるセミスーパーシューズ。業界を俯瞰してみるとそのポジションがピッタリです。
だから私は、S4という目標タイムを示す名前から、より広いスピードレンジを表す『SPEED』へ変わったのではないかと感じています。
METASPEED TOKYOシリーズでもなかったし、MAGIC SPEED 5でもなかった、そういうランナーはYOGIRI SPEEDを試してほしい。すぐにモデル名にSPEEDがついた意味を感じるはずです。是非シーズン前に一度は足を通してみてください。
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<著者プロフィール>
シューズアドバイザー 藤原岳久
FS☆RUNNING LAB / FS☆RUNNING Co.(合同会社FS RUNNING)
日本フットウェア技術協会理事
JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師
足と靴の健康協議会シューフィッター保持
・ハーフ1時間9分52秒(1993)
・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
・富士登山競走5合目の部 準優勝(2005)
【文章・写真】藤原岳久