将来性豊かなストライカーである。
鈴木章斗(すずき あきと)はガンバ大阪ジュニアユースから大阪府の阪南大学高校へ進学し、1年時にU-16世代で競う『関西U-16~Groeien~2019』で大会MVPに輝いた。3年時にはプリンスリーグ関西で永長鷹虎(現在はJ3デゲバジャーロ宮崎に所属)と得点王を分け合った。さらに冬の高校選手権では、7ゴールを記録して単独で得点王となった。
卒業後の22年にJ1リーグの湘南ベルマーレに加入し、プロ1年目から公式戦7試合1ゴールの記録を残した。2年目はJ1リーグ戦、ルヴァンカップ、天皇杯で37試合に出場し、合計10ゴールをマークした。天皇杯での5ゴールは、真家英嵩(柏レイソル)と並んで大会最多である。
そして迎えたプロ3年目の今シーズンは、2・3月のJ1月間ヤングプレーヤー賞に選ばれた。4月に負傷して一時戦列を離れたものの、ここまでリーグ戦20試合に出場して3ゴールを決めている。取材当日の7月30日に21歳の誕生日を迎えた若きストライカーに、自身の現在地や今後の目標を聞いた。
──鈴木選手のこれまでの歩みを辿ってみると、ジュニアユースから高校への進学が最初のターニングポイントでしょうか。
「小学生でサッカーを始めて、その時からプロサッカー選手になりたいと思っていました。なので、ガンバのジュニアユースからユースへ上がれなかったのは悔しかったですし、『ユースでもできるのにな』という気持ちもありました。ただ、ものすごく大きな挫折ではなかったんです。阪南大高校からJリーガーになった選手もいましたので、自分もしっかりやろうと思っていました」
──高校へ進学してみると?
「振り返れば中学生年代から、うまくいかないことがあると周りのせいにしてしまうところがありました。高校でもそういう姿勢があって、サッカー部の監督に強く言われて。『それじゃあダメだ』と気づかされました。それからは、うまくいかないことがあっても自分に矢印を向けるようになりました。それでもまだ精神的に甘いところがあって、3年になってすぐくらいだったかな……プロになるのはもう諦めようかな、と思ったことがありました」
──それはなぜ?
「自分の態度が良くなくて、スタメンから外されたんです。スタメンで出ていないとJリーグのチームの目にも留まらないだろうから、それならもうそんなに頑張らなくていいかな、と。そこで、チームメイトが『一緒に頑張ろう』とか『ちゃんとやろう』と言ってくれて。周りの人たちに支えられて、いまの自分があります」
──高校2年時にサイドハーフからFWへコンバートされたのも、サッカー選手としての転機では。
「そうですね。それまでは左サイドハーフをやっていて、同じポジションに1学年上のキャプテンがいたんです。スタートからなかなか出られないなかで、監督から『FWをやってみろ』と言われまして。ボールを失わないのは特徴で、ドリブルが好きで、身長がぐっと伸びたのもあって、FWとして自分なりに手ごたえを感じていきました」
──ベルマーレ入団にあたっては、「1年目から試合に絡みたい」と語りました。公式戦の出場試合数は「10」を数えましたが、J1リーグでは2試合出場に止まりました。
「高校3年時の練習参加では、『できる部分はあるな』という感触だったのですが、いざ入ってみると苦しかったですね。コロナの影響でスタメンで使ってもらうこともあったのですが、そのたびに自分の不甲斐なさというか、『何でこんなにできないんだろう』と痛感させられました。で、主力の選手が戻ってきたら、試合には出られなくて」
アグレッシブなプレーがチームに躍動感を生み出す
──苦しむ自分の支えとなったものは?
「高校でも同じことがあったんです。高校1年でいきなり2年生や3年生に混ざると、身体のサイズとか強さで負けてしまうじゃないですか。そこで挫けるんじゃなくて、ホントに練習で頑張るしかない、やり続けるしかない、って思ったんです。プロ1年目も同じでした。公式戦に絡めないなら、練習で、練習試合でチャレンジする。 1年目の終わりくらいには『自分でもできそうだ』と思えるようになって、2年目を迎えるにあたっては『あと何をすれば、自分は出られるのか』と考えるようになりました」
──自分のプレーをより客観的に分析して、足りないものを具体的に考えられるようになったのですね。
「監督、コーチをはじめとしたスタッフの方々からは『若いんだから、失うものはないぐらいの気持ちでやろう』と言われて、自分のなかできっかけとなったのがルヴァンカップの浦和レッズ戦でした」
──3月8日に行なわれたルヴァンカップ第1節ですね。それ以前に行なわれたリーグ戦3試合はメンバー外だったので、鈴木選手にとってはシーズン初出場でした。
「出場のチャンスがあるとしたらカップ戦からだと思っていたので、浦和戦にかけていました。それまでも気持ちをこめてプレーしていましたが、その試合はホントに強い気持ちで臨んで。走ること、戦うことだけを考えて、ガムシャラにやりました。そうしたら、そこからリーグ戦でベンチ入りさせてもらって、リーグ戦初得点を決めて、スタメンで使ってもらえるようにもなりました」
──浦和戦は間違いなく、ターニングポイントとなった1試合ですね。
「中学生でも高校生でも、そういうことってあると思うんです。僕がベルマーレに入団できたのも、ある試合がきっかけでした。一学年上でベルマーレへの入団が決まっていた(平岡)大陽くんのいる履正社高校と、選手権の大阪府予選準決勝で対戦したんです。その試合がきっかけで、僕もベルマーレのスカウトの方に観てもらえるようになりました。Jリーガーを目ざしている中学生や高校生のみなさんには、1試合で自分のサッカー人生が変わることがある、ということは知っておいてほしいですね」
──プロ3年目の今シーズンは、どのような気持ちで迎えましたか?
「1年目はマチくん(町野修斗)が得点源で、2年目はマチくんが夏にドイツのクラブへ移籍して、大橋(祐紀)くんが2ケタ得点しました。その大橋くんがサンフレッチェ広島へ移籍した3年目は、自分がやらないといけないという気持ちを強く持ってシーズンに入りました。ふたりに全然追いつけていないことを自覚しつつ、自分にできることをやっていこう、と」
2節の京都サンガF.C.戦でシーズン初ゴールをマーク
──2節の京都サンガF.C.戦と4節の浦和戦の2ゴールで、2・3月のJ1月間ヤングプレーヤー章を受賞しました。ところが、4月に左膝を負傷してリーグ戦を3試合欠場します。
「ケガから復帰した後も、あまりいいプレーができていなかったです。それまでできていたことができない、戦う気持ちを見せているのに伝わらない。それがなぜなのか、はっきりとは分からないのですが」
──7月10日の天皇杯3回戦、対東京ヴェルディ戦で公式戦では約4ケ月ぶりに得点しました。チームを1対0の勝利へ導いたあのゴールは、浮上のきっかけになっていますか?
「シーズンの前半戦は、攻撃に意識が集中していたイメージがありました。ボールを引き出すことへの自信があるので、そういうプレーをしっかりやろう、ゴールに関わろう、と。そこに対する自信は変わらずにあるのですが、(先発を争う)ルキアンとか(福田)翔生くんは守備でもすごく貢献している。自分もこれをやらないと出られないと強く思っていて、いまは守備がメインというぐらいの意識でやっています」
──鈴木選手はパリ五輪世代でもあります。
「自分のなかではベルマーレで結果を残すことが五輪につながる、という意識でした。もちろん五輪に出場したい気持ちはありましたけど、1試合ずつ大事にしていくことしか考えていなかったので、変わらずにその姿勢でやっていくだけですね」
──チームメイトだった町野選手は今シーズンからドイツ・ブンデスリーガの1部でプレーすることになり、大橋選手は広島からイングランド2部のクラブへの移籍が決まりました。
「ああいうプレーができれば行けるんだ、という基準みたいなものをふたりに見せてもらいました。それができれば自分もいけると思えるのでしょうが、ふたりのレベルに達するにはまだまだ時間がかかりますね。将来的には自分もヨーロッパへ行きたいですし、その時には挑戦というよりも戦力として行きたい。それは、目標とする日本代表入りにもつながると思っています」
──そのためにもベルマーレで結果残す、と。
「このクラブで優勝したいですね。(24節を終えて)16位ですけれど、もっと上に行ける力があると思っています。ホントにいいメンバーが揃っているので、このチームでもっともっと上に行きたいんです」
J1リーグは8月7日から再開される。ここまで6勝7分11敗のベルマーレは、勝点25の16位だ。13位の柏レイソルとは勝点4差で、14位の川崎フロンターレと15位のアルビレックス新潟とは勝点3差と、順位を上げていける可能性がある。その一方で、J2降格圏の18位のジュビロ磐田と勝点1差、19位のサガン鳥栖とは勝点2差だ。
今シーズンのベルマーレではブラジル人FWルキアンが11ゴールをあげており、福田翔生が6ゴールで続く。彼らふたりに加えて鈴木章斗がゴール数を伸ばしていくことで、チームは混戦から抜け出すことができるはずだ。
背番号29を背負う21歳が、チーム浮沈のカギを握っている。
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