前編ではAlpen TOKYOでのスペシャルトークショーの模様をお送りしたが、後編ではスペシャルトークショー後に行われた単独インタビューの模様をお送りします。
■ISSIN選手インタビュー「五輪に届かなった日。ここからが本当のスタート」

――今日のイベント、幅広い年齢層のお客さんが来ていましたが、参加してみてどう感じましたか?
こういうトークイベントは初めてだったので、めちゃくちゃ不安でした。最初だけは、盛り上がりに欠けた感じもありましたけど(笑)。でも、途中からみんなの表情が変わっていくのがわかったんです。「ちゃんと受け入れてもらえている」って。その瞬間、すごく安心しました。
いろんな世代の人が来てくれて、質問もたくさんしてくれたし、最後の写真撮影では笑顔が見られて嬉しかったです。
――子どものころ、こうしたイベントに参加していたんですか?

地元岡山に『FOUND NATION』が来たときがあって、噂で「来るらしい」と聞いた瞬間、迷わず行きました。イベントが終わったあと、憧れのダンサーを前にして「いつかバトルで倒します。」って言った記憶があります。
――本日のイベントでは、子供たちに向けてどんなメッセージを伝えたかったですか?

一番伝えたかったのは、“メンタリティ”の部分です。最近は、バトルに出る子たちが結果を気にしすぎていると感じます。
「勝たないといけない」「クラッシュが怖い」
そう思うあまりに、“自分のダンス”を見失っている子が多い。でも、本当は「楽しむこと」が一番大切だと思っています。楽しく踊っているほうが、自分らしさが出やすいし、見ている人も楽しくなりますからね。みんなが、もっとバトルを楽しんでくれるといいです。
――ISSIN選手は、最初から“楽しむ”というメンタルで踊っていたんですか?

本当に最初は、ただ「楽しい」が一番でした。気づいたら、いつの間にか仕事になっていた感じです。でも、やっぱり「楽しめていない」時もあります。そういう時は、自分のパフォーマンスも良くありません。だから、「どうしてブレイクダンスを始めたんだ?」って自分に問いを投げかけると、行きつく答えは、いつも“楽しいから”。僕にとってのダンスの軸は、結局そこなんです。
――これまでで一番の挫折は、いつでしたか?

間違いなく、去年の五輪に出られなかった時です。あれは、自分の中で人生をかけたバトルでしたから。
ブレイクダンスを始めてから、運よく右肩上がりの状態で結果も出て、名前も知ってもらえるようになっていました。「このまま突っ走るぜ」って思ったタイミングで、一番目標にしていた五輪に行けなくなってしまった。代表落選の現実を突きつけられた後は、正直、「ブレイクダンスが楽しくない」っていうメンタルになってしまっていた。

でも、その悔しさの中で気づけたんです。
“負けた自分”がBBOYをどうやって見せていくかが重要なんじゃないかって。これからが勝負だと。
「ここからがスタートだ」って、自分に言い聞かせました。周りから「ISSIN、あの負けから落ちたよね」なんて絶対に言われたくなかった。だから、気持ちを切り替えて、いつか必ずバトルでリベンジしてやろうって決めました。
――ダンスをする上で、アディダスのウェアやシューズにどんなこだわりがありますか。

HIPHOPシーンにおいて、アディダスは“根強い存在”という印象をずっと持っています。そんな歴史あるブランドにサポートしてもらいながら、自分のパフォーマンスを届けられていることに、まず心から感謝しています。
僕自身、バトルごとにウェアやシューズを変えるのが好きで、「今回はどんなスタイルでいこうか?」と考える時間も楽しみのひとつです。技だけじゃなく、見た目でも常に新しさを表現していく。それもまた、自分らしいブレイキンの一部だと思っています。

鏡に映る自分の姿がカッコよかったり、技を決めた瞬間に見えるアイテムのシルエットが「今日、イケてるな」と思えたら、それだけで自然とテンションが上がります。
気分が上がると、集中力もグッと高まるし、新しいアイデアや動きもどんどん湧いてくる。そんな感覚が、自分のダンスにとって大きな原動力になっています。

BBOYにとって、1つひとつの“形”は本当に重要です。だからこそ、サポートしていただいているアディダスのアイテムを、どうすればよりカッコよく見せられるか――それを常に意識しています。
動きの中で魅せるシルエットや存在感を、自分なりの表現で発信していくこと。それもまた、“ISSINスタイル”の一部だと思っています。
――ISSIN選手が目指している“理想のダンサー像”とは?

小さい頃からずっと言い続けているのが、「誰にも真似できないダンサーになりたい」というテーマです。正直、「この人みたいになりたい」と思ったことはあまりありません。それよりも、自分だけのスタイルを極めたい。今はプレーヤーとして、“誰にもできない技”を生み出し、「これぞISSINスタイル」と言われるような存在になることを目指しています。
そしていつか、未来のB-boyやB-girlたちが「ISSINのダンスって、やっぱりカッコいいよな」と語り継いでくれるような――“記憶に残るダンサー”になれたら、本当に嬉しいですね。
――ISSIN選手にとってダンスとは

ありきたりな言い方かもしれませんが、ブレイクダンスがなければ、“ISSIN”という存在は生まれていません。
ブレイクダンスがあったからこそ、今の自分がいる。性格も、生き方も、考え方も――すべてがダンスを通して形づくられてきました。
僕にとってダンスは、“呼吸”のようなもの。これがなくなってしまったら、それはもう“ISSIN”じゃないと思います。
――今後の目標や意気込みを聞かせてください。

今年11月に開催される世界大会は、まだ手にしたことのないタイトル。だからこそ、まずはしっかりと獲りにいきたい。そしてその先には、「誰も成し遂げていないこと」に挑戦していくつもりです。
技、表現力、そしてメンタル――すべてを磨き上げて、自分のステージをさらに進化させたい。そして、誰も見たことのない“新しいブレイキンISSIN”を届けたいと思っています。
まだ誰も達成したことのない偉業を成し遂げること。自分だけのオリジナル技を生み出すこと。そうして、いつか“伝説”と呼ばれる存在になれるよう、全力で突き進んでいきます。
これからも、変わらぬ応援をよろしくお願いします。
【写真】長田慶(1枚目の写真のみアディダスジャパン株式会社提供)
【文章】眞木優
【取材協力】アディダスジャパン株式会社