藤浪晋太郎が帰ってきた。新天地・横浜で問われる“真価”

藤浪晋太郎が帰って来た。

 

NPBの復帰先が古巣・阪神ではなかったことに対する驚きはない。新庄剛志が日本球界に復帰したのは日本ハム。井川慶はオリックス。あれほどファンに愛され、後に監督としてチームをセ・リーグ制覇に導くことになる藤川球児でさえ、最初の復帰先は高知ファイティングドッグスだった。一度チームを離れた選手に、案外、タイガースという球団は素っ気ない。

 

当然、そのあたりの空気感のようなものは藤浪自身もよくわかっていたはずで、日本での復帰先が阪神になるとはそもそも考えていなかったのではないか。まして、良くも悪くも数球団を渡り歩く経験をアメリカでしたことで、所属先に対する思いのようなものは、以前よりドライにもなったはずだ。

 

実際、ベイスターズ入団が決まってからの彼の発言や行動は、助っ人として日本にやってきた外国人のようですらある。本音かどうかはともかく、球団への感謝、ホームタウンへの愛情を強めに押し出し、異物である自分が少しでも早く新たな環境に溶け込めるように全力を尽くす。

 

だが、いいチームに入ったことは間違いない。

 

万が一復帰先が巨人だったりしたら、いくら磐石の投手王国ということで左うちわの気分の阪神ファンといえども、さすがに黙っていなかったことだろう。

 

その点、多くの阪神ファン的に「思うところ」があまりないベイスターズへの移籍であれば、比較的すんなりと受け入れることもできる。阪神ファンにとっての理想を言えば、対戦の機会がほとんどないであろうパ・リーグでの復帰が一番だったのだろう。

 

 

 

ただ、藤浪にとっての新天地が「いいチーム」を超えて「最高の居場所」になるかどうかは、あくまでも、これからの彼次第である。

 

横浜と神戸、両方に住んだ経験のある人間としていわせてもらうと、いわゆる新参者、異物に対する許容度はずいぶんと違う印象がある。神戸の小学校に転校した初日、「よろしくお願いします」との挨拶に対して返ってきたのは、忘れもしない「横浜から来たんやろ、じゃんって言うてみいや、じゃんって」だった。一方、神戸から横浜に戻ったときの反応はといえば、「ふうん」という感じだった。どちらの方がありがたかったかは言うまでもない。

 

だが、強烈な洗礼を乗り越えると、どっぷりと深い付き合いが始まった神戸に比べると、横浜での暮らしは、どこまでいっても大事なところは見せないというか、今にして思えば都会的というか、よくも悪くもドライな印象がついて回った。

 

メディアやファンから一挙手一投足まで注目され、しかしアメリカで比較的自由な生活を体験した藤浪からすると、現時点での横浜はほぼほぼ理想に近い環境かもしれない。このまま、静かに現役を退いていくのであれば。

 

彼は、それで満足できる選手だろうか。

 

高校時代に日本の頂点に立ち、プロ入り後は3年連続で2ケタ勝利をあげた藤浪である。いまでは手の届かない存在になってしまった大谷翔平と、かつてはプロのスカウトの評価を二分していた男である。不完全燃焼の続いた阪神での4年目以降を、通算で7勝8敗に終わったメジャーでの挫折を、彼は果たして、甘んじて受け入れているのだろうか。

 

否、という前提に立つのであれば、カギを握るのは阪神戦だとわたしは思う。

 

この原稿を書いている9月下旬時点で、藤浪は先発として4試合に登板し、防御率3.05。対戦チームの中には藤浪に対して左バッターをズラリと揃えるという策をとるところも現れた。

 

以前、ヤクルトの真中元監督にうかがったことがあるのだが、当時のヤクルトの右バッターの中には、藤浪と対戦したことでフォームを崩し、深刻なスランプに陥ってしまった選手がいたという。ぶつけられてのケガは困るが、その後のスランプも困る。全員左。対戦相手の監督がとる手段としては、わからないでもない。

 

メディアの報道によると、藤浪自身はそうしたオーダーに対して「ご勝手に」と意に介さぬ様子だったという。「そんなところまで気をつかっていられるか」というのが本音ではないかと思う。

 

では、阪神は同じ手段を取れるだろうか。

 

藤浪と藤川監督はかつてのチームメイトである。プロ対プロでは当然であったとしても、投手としての藤浪の一部を強烈に否定したとも受け取れる采配を、藤川監督はとれるだろうか。というか、とるだろうか。

 

森下を、大山を、坂本を外すだろうか。

 

取ったら取ったで、大したものだとは思う。一方で、やはりとらないのでは、という気もする。そして、とらなかったとしたら、そこが藤浪にとっての正念場になる。

 

甲子園で、かつての仲間たちを相手に、快刀乱麻のピッチングができれば。わたしがベイスターズのファンだとしたら、熱狂する。

 

 

 

藤浪にとっては幸運なことに、今年、阪神は歴史的な強さを見せて優勝した。どこも、誰も、阪神を止められなかった。

 

藤浪晋太郎には、阪神を止める力がある。その日の調子次第では、阪神の右バッターのリズムやフォームを破壊する可能性も秘めている。大阪で育ち、阪神で成長した男が、阪神にとって最強の天敵として立ちはだかるとなれば、これはもう、極上のエンターテインメントといえまいか。

 

阪神の将来と同じぐらい、野球界の今後を考えている藤川監督が、こんな最高の設定をドブに捨てるとは思えない。

 

あとは、藤浪が“期待”に応えるかどうか。

 

史上最強の阪神キラー。

 

彼が、大谷とはまた違った形でプロ野球ファンの記憶に残るための、唯一にして最上の道ではないかとわたしは思う。

 

【文章】金子達仁
【写真】タケダユタカ

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