近年は、日本人選手の活躍も多くなってきた北米のメジャーリーグ(MLB)。試合中継を見ていると、バックネットにタイマーが設置されていることがわかるはずです。
バックネットにあるタイマーは「ピッチクロック」と呼ばれるものですが、具体的に何を目的に設置されているのでしょうか。
ここでは、野球のピッチクロックの目的やルール、日本の野球界での取り組みなどをご紹介します。
【目次】
■ピッチクロックとは
■ピッチクロックのルール
・ピッチャー(守備)側のルール
・バッター(攻撃)側のルール
■日本での試合時間短縮の取り組みは?
・プロ野球(NPB)での取り組み
・高校・大学・社会人野球での取り組み
■試合時間短縮は世界共通の課題
■ピッチクロックとは

ピッチクロックは、北米のプロ野球「メジャーリーグ」で2023年から導入されているルールのひとつです。具体的には、投球間の時間を制限するルールになります。
野球は、2チームが9回ずつ攻撃・守備を行うスポーツです。3アウトになるまで攻撃が終わらないため、1回にかかる時間は表裏の攻撃の長さによって大きく左右されます。
さらに、サイン交換や牽制球などで1球ごとに間が開くことから、他の人気スポーツに比べて試合時間が長くなる点も問題です。
実際に、2022年までのメジャーリーグの平均試合時間は、9回で終わった試合だけでも3時間を超えていました。
一方で、バスケットボール(NBA)の試合時間は12分×4クォーターで48分、アメリカンフットボール(NFL)の試合時間は15分×4クォーターで60分ほどしかありません。
ハーフタイムやプレーが止まるタイミングがあるので、実際にはもう少し時間がかかるとはいえ、プレー時間そのものは野球に比べると短くなります。
長時間の試合に観客が飽きたり、ファンが減ったりするのを防ぐために、試合時間の短縮を目的として導入されたのがピッチクロックです。
ピッチクロックが導入された2023年のメジャーリーグの平均試合時間は、2時間40分台まで短縮されています。
■ピッチクロックのルール
ピッチクロックでは、守備側と攻撃側にルールを設けることで、試合時間の短縮を目指しています。主なルールを覚えておくと、試合観戦の際に役立つはずです。
ピッチクロックのルールのポイントを、攻守に分けてご紹介します。
・ピッチャー(守備)側のルール
ピッチャーは、ボールを受け取ってから制限時間内に投球動作を始めなければいけません。投球間の制限時間は、ランナーの有無によって変わります。
ランナーがいない場合:15秒
ランナーがいる場合:18秒(2023年は20秒)
制限時間を超えた場合は1ボールが宣告されます。短時間でサイン交換を行う必要があることから、メジャーリーグでは投手と捕手間のサイン交換を円滑にするための機器(ピッチコム)を使用するのが一般的です。
また、牽制球を投げたり、プレートを外して間を取ったりする行為も、1打者につき2回までに限られます。2回目までは、そのようなプレーを行うことでピッチクロックをリセット可能です。
ただし、牽制球やプレートを外す行為が3回目を超えると、ランナーなしなら1ボール、ランナーがいる場合は1ボールとランナーに進塁権が与えられます。
キャッチャーも、制限時間が残り9秒になる前にキャッチャースボックスに入っていないと、ピッチクロックが適用されるため、バッテリーは素早く次の投球に備える必要があります。
・バッター(攻撃)側のルール
ピッチクロックは、ピッチャーだけでなくバッターにも適用されるルールです。バッターは、残り8秒になるまでに打席での準備を済ませなければいけません。
打撃体勢に移れていないと判断されると、無条件に1ストライクとなります。1打席につき、1回しかタイムを取ることができない点にも注意が必要です。
また、打者が交代する際も、初球までの間が30秒に制限されているため、迅速な交代が求められます。
■日本での試合時間短縮の取り組みは?

2025年時点で、日本のプロ野球(NPB)はピッチクロックを導入していません。とはいえ、試合時間短縮に向けた取り組みは行われています。
日本の野球界では、どのような取り組みが行われているのでしょうか。
・プロ野球(NPB)での取り組み
日本のプロ野球の平均試合時間は3時間ほどですが、近年は試合時間短縮に向けて取り組みが進められています。
例えば、攻守の交代は2分15秒以内、イニング間の投手交代は3分15秒以内にプレーを再開することがルールとして定められています。制限時間を超えることがないように、投球練習中だとしても、規定の時間が経過した時点で球審から試合進行の指示が出されます。
投球間隔については、野球規則では「ランナーがいない時はボールを受け取ってから12秒以内に投球動作に入ること」と定めていますが、NPBは「ボールを受け取ってから15秒以内に投球動作に移ること(15秒ルール)」を励行しています。
とはいえ、15秒ルールはメジャーリーグのピッチクロックのように厳密に運用されているとは言い難く、適用されるケースはまれです。
また、バッターが打席に向かう際に流す曲(登場曲)は、可能であれば10秒以内に収めることなども推奨されています。
・高校・大学・社会人野球での取り組み
高校野球は、プロ野球に比べると試合のテンポが速いです。タイムを取る回数が制限されている、ランナーが負傷した際は別の選手を臨時代走とすることが認められているなど、プロ野球に比べると試合の中断が起こりにくいため、スムーズに進行する傾向にあります。
選手が素早く移動する傾向もあるため、試合時間は2時間~2時間30分ほどと短めです。
社会人野球や一部の大学野球リーグ、独立リーグ(NPBに所属しないプロ野球リーグ)では、ピッチクロックの導入が進められています。
メジャーリーグと同様に、社会人野球や大学野球、独立リーグといったシーンでも、今後は試合時間が短縮されるかもしれません。
テンポの速い試合になることが、新規ファンの獲得につながる可能性も考えられます。
■試合時間短縮は世界共通の課題
野球は、時間に制限が設けられていないことから、他のスポーツに比べると試合時間が長くなりやすいスポーツです。日本のプロ野球では、試合時間が6時間を超えたこともあります。
近年は、世界的に試合時間の短縮に向けた取り組みが進められており、ピッチクロックもその施策のひとつです。
メジャーリーグだけでなく多くの国やリーグが導入を進めており、WBCのような国際大会でもピッチクロックが採用されています。国内のリーグ戦と国際大会でルールが異なると、対応に苦慮する選手が多く出てくる可能性もあるはずです。
今後、日本のプロ野球界でもピッチクロックが導入されるかどうかに、注目してみてはいかがでしょうか。
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【文章】アルペングループマガジン編集部