テストマッチではない。フレンドリーマッチでもない。 紛れもない真剣勝負である。 2019年8月7日、『JリーグYBCルヴァンカップ / CONMEBOLスダメリカーナ 王者決定戦 2019 KANAGAWA』が、Shonan BMWスタジアム平塚で行なわれる。2018 JリーグYBCルヴァンカップを制した湘南ベルマーレが、CONMEBOL(コンメボル/南米サッカー連盟)スダメリカーナ2018で優勝したアトレチコ・パラナエンセ(ブラジル)を迎え撃つ。 湘南ベルマーレの曺貴裁監督と杉岡大揮選手は、7月24日に試合の行われるスタジアムで記者会見に臨んだ。 曺監督は会見場を見渡し、引き締まった表情でマイクを口元に引き寄せた。 「(J1リーグなどのホームゲームで)このスタジアムのこの場所で試合後の記者会見をしていますが、普段の試合の2倍、3倍のエルルギーで注目さえているのだと思いつつ、Jリーグとは意味合いの違う、日本を代表して戦う試合なのだと改めて感じました。(ルヴァンカップは)昨年チャンピオンになって自信を深めた大会で、その結果として改めて公式戦に臨むことができることを光栄に思っています」 対戦相手のアトレチコ・パラナエンセは、ブラジル屈指の歴史を持つ古豪だ。ブラジル代表MFのフェルナンジーニョ(マンチェスター・シティ)がキャリアをスタートさせ、JリーグのFC東京やガンバ大阪で活躍したルーカスがクラブの歴史に名前を記す。ヨーロッパのEL(ヨーロッパリーグ)に相当するコパスダメリカーナは、クラブ初の国際タイトルだった。 曺監督が続ける。 「勝負にこだわり全身全霊を尽くすのが、南米のチームの特徴だと思っています。百聞は一見に如かずではないですが、頭で考えるのと実体験はまったく違う。我々のチームは経験の少ない若い選手が多いですが、自分たちのスタイルを存分に出して戦いたい」 Jリーグがお互いを知る者同士の戦いだとすれば、今回のアトレチコ・パラナエンセ戦は未知なる敵との一発勝負だ。相手の特徴を速やかにつかみ、自分たちの特徴を発揮できるのかが問われる。 50歳の指揮官は「対応力」という言葉を使った。 「相手のスカウティングがどこまでできるか分かりませんが、本来は自分たちがどう戦うのかが大事で、情報に頼ることなく相手にまさったほうが力になります。そういう意味では、自分たちの力がどれぐらいあるのかを試せる。たとえば、相手に1点取られたあとに、ポジティブな流れを作っていけるか。チームとしても一人ひとりの選手レベルでも、対応力が問われるでしょう」 杉岡選手は日本代表の一員として、6月のコパ・アメリカ(南米選手権)に出場した。チリ、ウルグアイ、エクアドルとのグループリーグ3試合すべてに先発し、フル出場を果たした。 「コパ・アメリカでは南米の選手たちの激しさやテクニカルなプレーに触れることができました。守備の間合いの部分で、距離を空けるとやられてしまう。逆に近くで対応すれば、ある程度は戦えると感じました。コパ・アメリカから戻ったJリーグでも、そこは感じています。今回また南米のチームと対戦する機会を得られて、自分が一回り大きく成長できるチャンスだと思っています」 湘南ベルマーレには独自のスタイルがある。キックオフから試合終了まで足を止めずに、全員が攻撃にも守備にも関わる。サッカーの原理原則を徹底的に突き詰めたサッカーは、“ノンストップフットボール”とも“湘南スタイル”とも呼ばれる。 ハードワークを追求する湘南のサッカーは、日本人らしさを生かしたものでもある。サッカー王国ブラジルのクラブに、“湘南スタイル”がどこまで通用するのかは興味深い。 杉岡選手もうなずく。 「僕たちにははっきりとしたスタイルがあります。日本を代表して戦うので、そのスタイルを存分に出していきたい。湘南ベルマーレとしてタイトル獲得に臨むことが楽しみですし、僕だけでなくチーム全員がこのタイトルを獲りたい、という気持ちを強く持っています」 タイトル獲得に意欲を示すのは、アドレチコ・パラナエンセも同じだ。今大会は2008年に始まり、今回が12回目の開催となるが、過去の対戦成績ではJリーグ勢が6勝5敗でリードしている。ブラジルのクラブに限っても、1勝2敗で負け越しているのだ。 「今大会で新たなカップを手にして、クラブのトロフィールームに加えたいと思っています。湘南ベルマーレはとても強く、ブラジルとは異なるサッカー文化のチームと戦うことになりますが、我々はそういった真剣勝負を勝ち切りながら成長してきました。いま一度、チームの歴史に我々の名前を刻みたいと願っています」 こう語るのはチアゴ・ヌネス監督だ。ボランチのウェリントンも必勝を誓って来日する。 「この大会はチームにとっても各選手にとっても、非常に重要な試合です。南米のチームはコパスダメリカーナで優勝することでしか、この大会に出場することができません。だからこそ、我々アトレチコはこのタイトルを獲得するために最後まで戦います」 記者会見でヌネス監督のコメントが読み上げられると、曺監督の視線が鋭さを増した。頭のなかで「闘争心」の3文字が、大きくなっていくようだった。 「南米のクラブチームと、同点ならPK戦までやって勝負を決める試合は、一生に一度あるかないか。ホントにいい準備をして臨みたいし、この真剣勝負をたくさんの方に楽しんでほしい」 両チームのプライドとサッカー哲学は、キックオフ直後から激しくぶつかり合うだろう。互いに守備を固めるような試合ではなく、リスクをおかした攻め合いが見られそうだ。 激戦必至の一戦が、真夏の夜を彩る。
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