日本サッカー界の“生きる伝説”が、プロ36年目のシーズンに挑む。J1リーグの横浜FCに在籍するカズこと三浦知良だ。
昨シーズンは13年ぶりにチームがJ1へ復帰し、カズ自身も07年以来となるJ1のピッチに立った。9月23日に行なわれた川崎フロンターレ戦に先発したのだ。
56分までのプレーで、カズは観衆を大いに沸かせた。
リーグ首位の相手に押し込まれる時間が長くなるなかで、最前線から守備でハードワークし、攻撃の局面ではボールを収めて起点となった。攻守の切り替えは素早く、現代サッカーで問われるプレーの強度も申し分がなかった。当時53歳にして、最新の戦術トレンドに対応できることを示したのだった。
昨年から世界は一変した。新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々は言い知れぬ恐怖を抱えるようになった。感染を拡大させないためにステイホームやテレワークが求められ、会社の同僚や友人との交わりが薄くなることも、不安を増大させた。
そうした不確実性の高い時代にあって、カズは社会を勇気づける存在となっている。自身の子どもと同世代の選手たちに混ざって、練習から自らを追い込んでいく。溢れんばかりの情熱をサッカーに注いでいくその姿は、諦めないことの価値、挑戦することの尊さを我々に教えてくれる。
カズ自身は葛藤を抱えるところがある。
彼の日常生活は、最大限のパフォーマンスを発揮することを大前提としている。プロフェッショナルならそれが当然だとしても、恐ろしいほどにストイックなのだ。さながら減量中のボクサーのようで、サッカーに支障を来しかねないあらゆる要素を排除する。そのうえで、練習、睡眠、食事、休息のすべてを、これ以上はできないというレベルまで探求していく。
一方で、50歳の身体と51歳の身体は、51歳の身体と52歳の身体は、微妙に異なるものだ。去年うまくいった練習が、睡眠が、食事が、休息が、そのまま今年も最適解になるとは限らないのである。
カズは現役最年長選手だ。彼の年齢にふさわしい調整方法のモデルは、どこにも見当たらない。身体の声に耳を澄ましながら、自分で判断していくしかないのだ。10代や20代の選手はもちろん一般的にベテランと呼ばれる選手にも分からない、カズだけが抱える葛藤にして苦悩と言っていい。
今シーズンの開幕にあたっては、例年と変わらない目標を口にした。
「目標はいつも、1試合でも多く先発で試合に出たいということですね。FWですからゴールに絡む仕事をたくさんして、チームが勝利できるようにすることです」
昨シーズンは川崎フロンターレ戦を含めて、リーグ戦4試合に出場した。自身の持つJ1での最年長出場記録を、53歳9ケ月23日にアップデートした。今シーズンは最年長出場記録のさらなる更新に加えて、J1での最年長得点記録の達成が望まれる。
J1で最後にゴールを奪ったのは、07年9月1日までさかのぼる。J2を含めても、17年3月12日が最後となっている。ジーコが持つ41歳3ケ月12日のJ1最年長得点を塗り替えてほしい、との期待は高まるばかりだ。
カズ自身に力みはない。「応えられるように準備をしたい」と、落ち着いた口調で答える。
これまで在籍してきたクラブで、日本代表で、彼は「ここぞ」という場面でゴールネットを揺らしてきた。ファン・サポーターの思いはエネルギーであり、期待が大きくなるほどに力を発揮するのが、カズという選手である。
シュートを打ってほしい。得点を決めてほしい。全盛時に見せていた“またぎフェイント“でスタンドを沸かせてほしい──ファン・サポーターのこうした声は、その耳にも届いているに違いない。
しかし、ピッチに立ったカズは、その時々で最善の選択をする。個人的な野心が先行することはない。あくまでもチームの勝利を最優先にプレーしている。
エゴイズムを見事なまでに封印するのは、サッカーをリスペクトしているからだ。この場面でどういうプレーをすれば、自分たちのチームにプラスになるのか。ゲームが白熱して観衆の気持ちを躍らせることができるのか──そういったことを、彼は経験として理解している。ゲームが求めるプレーを選択することは、愛するサッカーへの敬意を表すことに他ならないのである。
今シーズンの横浜FCは、FWに経験豊富な選手を揃えた。
J1通算100得点を記録している渡邉千真、横浜F・マリノスや鹿島アントラーズでプレーしてきた伊藤翔、さらにはベガルタ仙台からジャーメイン良が移籍してきた。また、新外国籍選手として、J2のジェフユナイテッド千葉に2シーズン在籍した元ブラジル代表クレーベも加わっている。
ポジション争いは激しい。経験と実績では群を抜くカズも、ピッチで何ができるのかを示していかなければならない。
それもまた、カズにとっては嬉しいのだ。
力を持った選手たちとスタメンを巡って争っていくことは、自らのレベルアップにつながる。「サッカーがうまくなりたい」という真っすぐな思いを1本のパスに、シュートに、ランニングに込めて、日々のトレーニングに励んでいくのだ。
2月26日には54歳の誕生日を迎えた。その国のトップリーグでプレーする選手としては、間違いなく世界最年長である。彼の一挙手一投足には、世界中から視線が注がれている。
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