ボルシア、といえばメンヘングラッドバッハだった時代に、わたしはサッカーと出会った。
80年代には競争力を失い、90年代から21世紀にかけては「壊滅的」といいたくなるほど無残な時代を過ごしたが、それでも、わたしにとってのグラッドバッハは特別なチームであり続けてきた。
いまでも、夏の間の部屋着はグラッドバッハの歴代ユニフォームと決めているし、スニーカーはプーマしか履かないのも、ネッツァーやハインケスやフォクツやボンホフやシモンセンやクレフやシュティーリケやヴィンマーや……とどのつまり、かつてのグラッドバッハの英雄たちがコンプリートでプーマを履いていたことが理由の33パーセントほどを占めている(残りの67パーセントはヨハン・クライフとマリオ・ケンペスによって二分されている)。
当然、かつて“ナショナル・ダービー”と呼ばれていたバイエルンとの一戦は燃える。子供が生まれてからというもの、ヨーロッパのサッカーをライブで観戦する機会が激減してしまったわたしだが、この試合だけは眠い目をこすって生で観る。あと、ケルンとの“ライン・ダービー”も都合がつけば観る。
だが、そんな人間は世界的に見て、圧倒的な少数派だろう。
いまやボルシアと言えばドルトムントであり、世界最高の収入と名声を手にするのはイングランドでプレーする選手たちである。グラッドバッハ対バイエルンと、ドルトムント対バイエルン──どちらがより多くのファンを惹きつけるかぐらいは、わたしにだってわかる。
だから、困る。
ヨーロッパのジャイアント・チームが手を組み、新たなリーグを立ち上げようという構想が突如スポットライトを浴び、しかし、あっさりと撤回された。世論の反発が予想をはるかに上回る激烈さだったのが原因だろう。
一連の顛末を伝える報道のほとんどは、スーパーリーグを立ち上げようとした側のエゴを批判する形になっている。確かに、スーパーリーグから取り残された側のクラブやファンの立場に立てば、今回の騒動、ビッグクラブのエゴでしかない。
ただ、あえてビッグクラブ側の立場に立って考えてみると、カネを稼ぐのも、稼ぐためにリスクを背負って投資をするのも自分たちなのに、なぜ何のリスクも負わないUEFAが儲けの大半を持っていくのか、ということにもなる。
まずJリーグという組織が発足し、それに従う形でプロ・リーグが誕生した日本と違い、ヨーロッパではまずクラブが誕生し、結果的にリーグを統括する組織が誕生したという経緯がある。つまり、ヨーロッパのサッカーにおいては、そもそもエゴありきというか、各クラブが自分たちで自分たちの道を切り開いてきたからこその現在がある。
いまは我が世の春を謳歌するプレミア・リーグも、そもそもはビッグ5と呼ばれる人気クラブが「我々はもっと多くの金額を手にできるはずだ」と目論んだところから生まれている。結果的に5チームではリーグとして成り立たないという結論にたどりついた彼らは、他のチームを引き込むことによって新リーグの発足にこぎつけた。今回のスーパーリーグ構想にプレミアから6つものチームが参加意志を表明したのも、かつての成功体験が無関係だったとは思えない。
では、なぜスーパーリーグはプレミアのようになれなかったのか。
向いている方向が違ったからだとわたしは思う。
プレミア・リーグ発足当時、イングランドのサッカーを楽しんでいるのは、基本的にイングランドの人々だった。当然、クラブ側がマーケットとして認識していたのは、イングランドに住むイングランドの人たち、イングランドの企業だった。
だが、今回のスーパーリーグは違った。彼らが見ていたのは、自国のファンではなく、アジアのファン、アジアのお金だった。
かつて、スペインのクラシコは21時台のキックオフが常識だったが、いつの間にか、真っ昼間に試合が行なわれるようになった。アジア、特に中国のゴールデンタイムに合わせるためだと言われている。今回のスーパーリーグ構想の音頭を取ったのがレアル・マドリーのペレス会長だというのは、さもありなん、というしかない。
わたしは昔ながらのグラッドバッハ・ファンだが、最近になってヨーロッパのサッカーを観るようになった人たちからすると、グラッドバッハ対バイエルンより、ドルトムント対バイエルンの方がはるかに魅力的だというのはよくわかる。
ビッグネーム同士の対決により惹きつけられる若いファンの気持ちもわかる。
スーパーリーグに加わろうとしたクラブは、昔ながらのファンに愛されるこじんまりとしたカードより、新たなファンにもわかりやすいビッグマッチでいま以上の資金を獲得しようとした。そして、切り捨てられようとした自国のファンから凄まじい反発を喰らい、ひとまずは主張を引っ込めた──今回の騒動をそんなふうにわたしは見ている。
そして、この騒動は、まだ終わりではない。
現代のヨーロッパ・サッカーは、ヨーロッパ以外からの資金がなければ成り立たないレベルにまで、選手たちのギャラを高騰させてしまった。地場で稼ぐお金では、メッシやクリ・ロナ、プレミアのスターたちを到底養えない時代になってしまった。
だとすれば、彼らはいつか、気前よくお金を出してくれる地域が求める方向に舵を切ろうとする。
今回の失敗を糧に、今回ほどの反発が起こらない方策を、きっと、彼らは考えてくる。地元を切り捨てるのではない、という見せ方をしてくる。プレミアのときがそうだったように、反対するクラブへの切り崩し工作も行なわれるだろう。
わたしは、必要以上に自国以外に目を向け、GDPからすると不釣り合いなほど巨大化したヨーロッパ・サッカーの現状は、はや危険なレベルにまでなってしまったと認識している。危機を回避するには、サラリーキャップなり移籍の新たなルールを作るなりして、年俸の高騰にブレーキをかけるしかない。
それができなければ──スーパーリーグと国内リーグの関係は、1部リーグと2部リーグの関係というより、メジャーリーグと独立リーグのような関係になってしまうのではないか、との危惧がある。
資金力に乏しく、アジアのファンも少ないグラッドバッハのファンとしては、実に困るのだ。
お気に入り一覧
RUNNING
2026.10.16
NEW BALANCE ELLIPSE(ニューバランス エリプス)北海道マラソン2026出走レポート
FOOTBALL
2026.10.15
サッカーのシャドーとは? 役割や必要な能力をわかりやすく解説
OTHER
「すぐに動けそう」なフィット感。渡邉伶音と片峯聡太監督が体感したJordan「TATUM 5」
OUTDOOR
2026.10.14
デュオキャンプで2人だけの時間を過ごそう! 成功の秘訣はギア選び
GOLF
2026.10.13
「もうひと蹴り」で心地よく走る「新世代走り系」 グッと深掘りゴルフギアVol.216 グラファイトデザイン「ツアーAD EK」シャフト編
【バレーボール】オーバーネットとは? よく見る反則の基礎知識
2026.10.10
黒田朝日、新谷仁美が全力応援!日本新記録も誕生!限界に挑む「ADIZERO 5K TOKYO CHALLENGE」
アディダス×アルペンがランナーの挑戦を後押し。「ADIZERO 5K TOKYO CHALLENGE」直前スペシャルクリニック
BASEBALL
2026.10.08
野球のOPSとは? 野球をさらに楽しめるセイバーメトリクスの指標の見方
背番号物語(第8回)~Jリーグの歴史を彩った「9番」を振り返る
2023.09.28
【野球】ボークとは? ルールを知って反則を防ごう
2024.09.13
バレー初心者が知っておきたいプレーのコツとは? コツを掴んで楽しみながらプレーしよう
2019.06.10
ランニングでマメができたらどうする? 原因や対処法・予防法について解説
2025.07.05
ゼロトルクパター6メーカー12モデルを徹底分析!それぞれゴルフ5でチェックしよう
2025.11.21
<Road To HAKONEから見るシューズ事情>駅伝シーズン開幕!出雲駅伝でのシューズ事情をアイビーリーグ選抜と比較してみる
2026.01.09
シューズから見た2026年箱根駅伝(総評版)
2021.07.19
ランニング中はスマホをどう持ち運ぶ? おすすめの方法やアイテムをご紹介
2021.06.08
キャンプ場でおいしいご飯を食べたい! 必要なアイテムや炊き方のコツ
2023.01.26
メスティンでおいしくご飯を炊く方法とは? 炊き方の手順やポイントをご紹介
2024.02.20
ガレ場・ザレ場とは? 山道の安全な歩き方を身につけよう
2020.07.08
トレッキングとは? 登山との違いや事前に準備したいもの、注意点など詳しく解説
2024.05.16
【女性向け】山登りはおしゃれな服装で楽しもう! 服選びの基本と季節ごとのコーデ例
2019.09.18
【野球】バッティングフォームの基本チェックポイントと練習方法とは?
2022.02.21
【野球】チェンジアップとはどんな変化球? 特徴や握り方などを解説
2019.11.12
カットボールとはどのような変化球? 特徴や投げ方、練習時のポイントを解説
2026.05.13
野球の「振り逃げ」はどんなルール? 奥が深いルールの詳細を知ろう
2024.11.11
【サッカー】ドリブル練習はコツを意識すると効率的! 上達に必要な5つのコツ
2019.10.11
サッカースパイクの選び方の基本(スパイクの構造とトレンド)
2019.07.17
【サッカー】リフティングが上手になるコツと練習方法とは?
2019.03.26
【サッカー】ケガの防止にもつながる! スタッドの種類を解説
2023.06.21
都会の中心で輝くAlpen TOKYOのサッカー売場。その規模と品揃えを紹介!
2026.08.07
大阪・梅田に「AlpenOSAKA」がオープン! 「ゴルフ5フラッグシップストア大阪梅田」は2フロアで展開
2026.10.07
「スピーダーNX」の新作は“すっぽ抜けない”つかまり系先中調子 グッと深掘りゴルフギアVol.215 フジクラ「スピーダーNXホワイト」シャフト編
2025.08.21
圧倒的な飛び性能。飛距離に全振りした公認球「トブンダ ワンライン」、全12色で新登場
2026.10.06
「試合より緊張します(笑)」加藤麗奈が初イベントで明かした優勝セッティング Alpen NAGOYAで初トークショー
2020.05.18
腹筋強化にはクランチがおすすめ? 正しいやり方や種類を解説
2026.08.25
【卓球】促進ルールとは? 試合を円滑に進めるための規則を知ろう
2024.02.14
バスケの試合時間は何分? プレーにも役立つルールを覚えよう
2021.07.26
バレーボールのサーブのコツは? 基本のフローターサーブを例に解説
PRODUCTS
2025.05.23
効果バツグン!雨も泥もヘッチャラ!シューズケアの革命『IMBOX』、スポーツデポ・アルペン、ゴルフ5に登場!!
2022.06.01
IGNIOからNewエッセンシャルシリーズが登場! 今年の夏は、街歩きの一軍シューズに!
2024.04.26
Alpen NAGOYAのチェックポイントはここだ!ゴールデンウィークは、Alpen NAGOYAへ遊びに行こう!
2024.11.15
度会隆輝選手、アディダススポーツウェア『standard.1』で魅せる洗練されたスタイルとプロのこだわり
2023.02.17
プロの視点で徹底考察!ニューバランス「THE CITY」を人気スタイリストはどう見るか?