37歳の誕生日を迎えた5月11日に、ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタが記者意見に臨んだ。楽天グループと楽天ヴィッセル神戸を統べる三木谷浩史会長が同席し、新たに2年間の契約延長に合意したことが発表されたのだった。
18年5月末に東京で開かれた入団会見と同じく、イニエスタは白いTシャツに黒いジャケットで登壇した。「コンニチハ、ミナサン」と日本語で切り出し、そこから先はスペイン語で思いを明かしていく。
「3年前にここ東京で、エキサイティングなプロジェクトを発表しました。この新たな挑戦は私と私の家族にとって、本当に大きな一歩でした。この3年間、苦しく大変な時期もありましたが、ともに乗り越えてきました。同時に、クラブ史上初のタイトルとしての天皇杯獲得だったり、初のACL(アジアチャンピオンズリーグ)出場だったりと、ともに歴史も築くことができたと思います」
3年間の歩みを振り返ると、次は契約延長を決めた理由だ。心の奥深くの部分を、イニエスタは言葉にしていく。
「自分にとって周りから信頼を感じられる、大切にしてもらえていると感じられることが、何よりも大事なことです。3年前にここに来たときに感じた熱い思い、その同じ思いでこの挑戦に挑み続けたいと思います。これから2年間、このプロジェクトに関わり続けられることにワクワクしています」
イニエスタが語る「プロジェクト」とは、「チームをさらなる高みへ連れていく」ことだ。20年元旦の天皇杯で優勝を飾り、クラブ史上初の3大タイトルを獲得したが、リーグ戦では18年が10位、19年が8位、20年は14位に終わっている。「自分は小さいモチベーションを感じないというか、大きな目標を勝ち取りたい性格なので、このチームをさらなる高みへ連れていくための貢献をしたい」との意欲を燃やしている。
バルセロナでクラブ世界一に、スペイン代表で世界王者となり、あまたのタイトルを獲得してきた男である。リーグ戦で優勝争いに絡めていない現状に、満足できるはずはない。
勝利への強い執着心は衰え知らずだ。
20年12月に開催されたACLが、記憶に新しい。
イニエスタは決勝トーナメント1回戦で負傷しながら、3日後の準々決勝に途中出場した。1対1のまま突入したPK戦では、重圧のかかるひとり目に登場してキックを成功させている。
この時負ったケガによって、チームのキャプテンは長期離脱を強いられることとなる。ACLもベスト4で敗退してしまったから、大きな代償を払うこととなった。それでも、この歴戦の勇士が見せた勝利への飽くなき執念は、チームのメンタリティの幹として継承されていくはずだ。
イニエスタと同じ1984年生まれの選手では、ブラジル人DFのチアゴ・シウバ(チェルシー)、イタリア人DFジョルジョ・キエッリーニ(ユベントス)、オランダ人FWのアリエン・ロッベン(フローニンゲン)らが現役を続けている。ユベントスで全盛時と変わらない得点能力を発揮しているクリスティアーノ・ロナウドも、日本の学校制度ならイニエスタと同学年の36歳だ。セリエAでは39歳のズラタン・イブラヒモビッチが、ACミランとの契約を22年6月まで更新している。
イニエスタにも選択肢があったに違いない。新たな冒険へ進むこともできたはずだが、ヴィッセルとの契約延長を望んだ。
記者会見では、ふたつの思いを明かした。
ひとつ目はファン・サポーターへの思いだ。Jリーグのスタジアムで自らの注がれる歓声を、イニエスタはしっかりと受け止めている。
「ヴィッセル神戸のファンと日本のサッカーの皆さんにも、感謝を申し上げたいと思います。愛情とリスペクトを持って皆さんがおもてなしをしてくださったことで、私と私の家族にとって神戸と日本が第二の故郷になりました。自分を歓迎してくれて本当に感謝していますし、皆さんが示してくれた応援や気持ちに応えていかなければいけないと、ひしひしと感じています。そのためにも、今後も努力を続けています」
ふたつ目はクラブへの思いだ。今回の2年契約は、ヴィッセルでキャリアを終える意思表示とも読み取れる。同時に、イニエスタは引退後もヴィッセルとの関係を継続したいとの意思を示した。
「いつまでも選手としてピッチでプレーを続けることはできません。いつか終わりは来るものです、ただ、自分はこのプロジェクトを始めるときに、大きなモチベーションを感じてこれまでやってきましたし、これからもやっていきたいと感じています。そのなかでもちろん、選手としてのキャリアをここで最後まで続けていきたいと思っていますし、サッカー選手としてだけではなく、このクラブと今後も色々な形で常に関わり続けたいと思っています。それが私の希望です」
もちろん、契約を延長したばかりのいまは、ピッチ上でのパフォーマンスに意識を向ける。
昨年末のACLで負った負傷が癒え、5月1日のサンフレッチェ広島戦で今シーズン初めて15分間プレーした。9日の横浜F・マリノス戦では31分までプレータイムを伸ばしている。三浦淳寛監督のもとで上位につけるチームに、さらなる勢いをもたらすことを誓う。
「3年前に大きなモチベーションと意欲を感じてこのプロジェクトに関わりました。それはいまも感じています。ただ、そのモチベーションが薄れてきたと感じたら、自分が最初にそれを言うと思います。それまではピッチでこのクラブに関わっていきたいですし、その意欲を持って今後も続けていきたいと思います」
“黄金の国”を舞台としたイニエスタの冒険は、第2章に突入していく。
お気に入り一覧
GOLF
2025.11.11
「プラス」はゼクシオ初体験層がカスタムシャフトで使うのにピッタリ! グッと深掘りゴルフギアVol.170 ダンロップ「ゼクシオ14 プラス」ドライバー編
OTHER
2025.11.10
バスケがうまくなりたい人必見! 練習時に意識したい上達のコツ
2025.11.07
より飛んでやさしく! 正統進化を遂げた「ゼクシオ14」のアイアン、フェアウェイウッド、ハイブリッド
14代目のゼクシオは新素材の採用で「飛距離特化」に進化 グッと深掘りゴルフギアVol.169 ダンロップ「ゼクシオ14」ドライバー編
RUNNING
「走る」を超える体験を、チームで。 New Balance × Alpen TOKYO-東京レガシーハーフマラソン2025 レポート
バスケのフロントチェンジをマスターしよう! カットされないやり方のコツ
2025.11.06
新素材「VR-チタン」のヘッドで過去最高の「一撃」を! 「ゼクシオ14」が登場
スポーツデポ・アルペンが全国のミニバスケットボールプレーヤーを応援!シューズもウェアも充実の売場をスペシャリストがご紹介!Vol.2
2025.11.05
今回の「中古探検隊」は名器の「初代モデル」を多数発掘! 伊藤元気プロが最後に選んだのは?
【バスケ】ルーズボールの重要性。ボールを押さえて攻撃回数を増やそう
2025.11.04
「ランニングのことならお任せください!」スポーツデポ・アルペンが誇る《ランニングスペシャリスト》をご紹介!Vol.3
2025.10.24
TIGORA FT5/36(エフティーゴサンロク)がアップデートして登場
【走る人を選ばない】まかランさんとみゃこさんがTIGORA「FT5/36」を着用し、札幌マラソンに参加!
40年以上愛されるナイキの定番、初心者から選手まで魅了するペガサス
OUTDOOR
2025.10.30
縦走とは? 憧れの山遊びを安全に楽しむコツ
2025.10.28
キャンプやBBQのデザートに! 焚き火を使った焼きマシュマロの作り方
2025.10.23
紅葉狩りとは? 「狩り」という漢字を使うのはなぜ? 秋のレジャーの基礎知識
2025.10.21
秋冬のキャンプは焚き火で焼き芋作りにチャレンジ! 甘さが引き立つ作り方
2025.10.16
【初心者向け】バードウォッチングの始め方。必要な道具や服装は?
BASEBALL
2025.10.10
藤浪晋太郎が帰ってきた。新天地・横浜で問われる“真価”
2025.10.08
試運転の剛腕、全開の打棒――大谷翔平の“未完成な頂点”
2025.10.06
新庄剛志はなぜファイターズを“変えることができた”のか―監督の仕事は“演じる”ことだ
2025.10.03
阪神タイガース優勝。前任を否定せず受け継ぐ、藤川球児監督の強さ
2025.09.11
インフィールドフライとは? 今更聞けない野球の基礎知識
FOOTBALL
2025.10.22
背番号物語(第3回)~Jリーグの歴史を彩った「7」番を振り返る
2025.10.17
ベルギーとの激闘から7年。ロシアW杯メンバーの「いま」
2025.10.15
背番号物語(第2回)~Jリーグの歴史を彩った「1番」を振り返る
2025.10.09
44年ぶりベスト4戦士の「いま」。歴戦の勇士たちは円熟の存在感を放つ
勝負を決めるのはこの一足!部活生必見、最新スパイク3選を徹底レビュー"
2025.11.03
【バスケ】バイオレーションの種類。基本ルールを知ればもっと試合を楽しめる!
PRODUCTS
2025.07.24
JO1と一緒に、この夏を思いっきり楽しもう。―MIDSUMMER COLLECTION【後編】
JO1と一緒に、この夏を思いっきり楽しもう。―MIDSUMMER COLLECTION【前編】
2025.07.17
2025年のおすすめ猛暑対策グッズはこれだ!暑い夏も、クールで快適に!
2025.05.23
効果バツグン!雨も泥もヘッチャラ!シューズケアの革命『IMBOX』、スポーツデポ・アルペン、ゴルフ5に登場!!
2025.04.24
「INIがまとう、夏をはじめる一枚」――SUMMER COLLECTIONで楽しむ春夏ファッションの魅力【後編】