ご存知の通り、バルセロナの至宝と呼ばれてきたアルゼンチン代表のメッシ選手が退団・隣国フランスの パリ・サンジェルマン(以下、PSG)への移籍。突如駆け巡ったその報道は思わずフェイクニュースかと思うほどのインパクトがあったかと思います。
今回原因となったと言われているのが、欧州リーグで唯一リーガのみが採用している「サラリーキャップ制度」と言われている。これは現会長テバス氏が2013年にリーガ会長就任後に最初のタスクとして与えられたクラブの債務削減を目的とした大改革を遂げるための一つの施策だった。まさかこの様な形でリーガの抱えるスーパースターを失うきっかけにもなりえるとは思ってもいなかったことでしょう。
同時にスペイン代表のキャプテンを務めたセルヒオ・ラモスをもリーガから失う事態も起きており、リーガの衰退が囁かれつつある中、新たなスーパースターの出現を待ち望む、その様な状況であると思います。
スペインリーグが取り入れたサラリーキャップ制度は各チームが保有する選手個々の契約額、および全選手の契約年俸の総額を毎年一定の上限を設けて規定する制度である。これを設定することで法外的な金額での選手の契約を避ける意図があります。つまり、出費を抑えるルールを定めることで慢性的な赤字体質を改善しようという狙いがある、そのような解釈になると思います。スペイン政府スポーツ上級委員会(CSD)とスペインプロリーグ機構(LFP)が、各クラブが選手に支払う給与合計が総収入の70%以下でなければならないと取り決めをして導入されました。
その他にも退団に至った要因と言われることはありました。人件費の計上の問題です。スペインではカンテラ育ちの選手は人件費計上がなされなく資産として計上してよいというルールがあります。つまり、カンテラ上がりの選手をトップ契約し、契約を継続することでその選手の給与は人件費とは別のところでカウントされることになります。これは上記にて述べた70%以内に抑えるという対象とは外れてくるところであり、特にバルセロナはカンテラ上がりの選手が多かったことから、上手くサラリーキャップのルールを回避していたことになります。
レアル・マドリードの大学院の授業で一番驚いたのがこのルールを知ったときでした。チーム運営の会計の部分で一番肝になる題材として取り上げられたのです。見方を変えるとカンテラから選手を上げることで、更にその選手達がトップチームで活動し続ける限り、その給与はサラリーキャップの対象からは外れ、その余剰でより大きな投資をすることができるわけです。
更に契約更新のタイミングは、意図的に仕組まれたかのようなタイミングで奇しくも1年遅れで行われたコパ・アメリカの真っ只中。当然選手は代表チームで活動中にあり、そこにコロナウイルスが重なり、スタッフの動きが制限されてしまうという不運もありました。
一方で、よくよく情報をたどってみるとバルセロナの公式HP上では今年の6月上旬の段階でこのサラリーキャップ制度にひっかかっていることに触れており、新獲得選手の登録が簡単ではない可能性があるとしていることからすると、早期段階でこの問題に気がついていたのは確かであったと思われます。昨年の夏の時点でも、メンフィス・デパイは移籍に個人合意はしておりましたがサラリーキャップの問題があり契約に至らなかったということがありました。
ふり返ってみると早期からこの問題に気がついておきながら最終的に対応しきれず退団という形になったわけですが、タイミング良く選手を獲得したのが隣国の雄、PSGでした。スポンサーはカタールの国そのものとも言える状況のPSGではありますが、コロナ禍において今まで敷かれていた厳しいルールが一時的に緩和された一瞬だったようです。
フランスリーグのクラブに敷かれているファイナンス面のルールはフランス財務監査機関である経営監視委員会(DNCG)が厳しく取り締まっており、現地の報道によれば、「DNCGが関心を持っているのは、クラブが破産しないことだけであり、この1、2シーズンの出来事はPSGのクラブそのものにとっては全く問題にはならないのではないか」とありました。よくよく考えてみると、この夏に無理して選手を獲得してもシーズン途中の冬の移籍市場で手を打つことができれば、何ら問題にはならないということも言えます。
この夏に獲得したセルヒオ・ラモスを筆頭にアクラフ・ハキミ、ジャンルイジ・ドンナルンマと大ベテラン選手だけでなく若きスター候補選手をも多額の金額で獲得したのですが、この冬の移籍マーケットで既存の選手含めて「調整」することで最終的に財政面を調整することができます。更にコロナ禍ということで、多方面において多めに見られることは十分に考えられるわけで、こういった背景からもPSGの手のひらの上で転がされている感は否めません。むしろ一番うまく対応したクラブと言っても過言ではないのかもしれません。
リーグによって厳格に管理されている経済的な側面を理由にメッシを手放さざるを得なかったバルセロナとは対照的に、PSGはスーパーリーグ構想を当初より否定するなど、ファイナンシャル・ルールの見直しを検討しているUEFA側に対して常に寄り添う姿勢を見せてきました。
会長のUEFA評議委員という立場を利用し、これとない良いタイミングでクラブに有利に働くように画策したとも報道されており、まさに世渡り上手という対応で敵を作らず味方を増やした政治巧者とも言える動きをすることでこのコロナ禍を乗り切ろうとしているように見えるわけですが、果たして悲願とも言えるチャンピオンズリーグを手に収めることはできるのでしょうか。「フットボールはお金で買うことはできない」という言葉ありますが、この言葉通りになってしまうのか、このPSGの動向こそが今シーズンのヨーロッパフットボール界の目玉になることは間違いありません。
お気に入り一覧
OTHER
2025.12.09
【バスケ】シリンダーとは? ファウルを防ぐ重要な概念を知っておこう
BASEBALL
2025.12.08
【野球】セーフティバントを決めるコツ。バントとの違いは?
RUNNING
2025.12.05
金沢マラソン出走レポート
2025.12.04
【バスケ】ファイブアウトのメリット・デメリット。向いているチームの特徴は?
FOOTBALL
2025.12.03
【サッカー】ダイアゴナルランとは? わかりにくい用語の基礎知識
GOLF
2025.12.02
カスタムシャフトならヘッドの飛距離性能を最大限に引き出せる! グッと深掘りゴルフギアVol.173 ダンロップ「ゼクシオ14」フェアウェイウッド編
アルバルク東京 ザック・バランスキーが語る、迷彩もピンクも自分らしく~バッシュとファッション/フランチャイズプレイヤーが語るB.LEAGUEの10年 vol.03
2025.12.01
インターフェアとは? 野球における妨害行為の詳細とペナルティー
2025.11.28
クラブセッティングに悩む女性ゴルファー必見! 「ゼクシオ14レディス」セッティング実例紹介。全20本の豊富な番手を得意・好みに合わせて自由自在に組み合わせられる!
「ただ走るのが気持ちいい。」太田蒼生が語る、ADIZERO EVO SL WOVENの“本当の良さ”
<Road To HAKONEから見るシューズ事情>より速く、レーシングシューズの進化論:ミッドソール素材の歴史
2025.11.21
雨でも心は晴れた。応援とエイドに背中を押された、金沢マラソンの42.195km
<Road To HAKONEから見るシューズ事情>駅伝シーズン開幕!出雲駅伝でのシューズ事情をアイビーリーグ選抜と比較してみる
OUTDOOR
2025.11.20
累計販売数16,000足!大人気スノーボードブーツ「キスマーク ジャフィ」がおすすめな理由とは?
2025.10.30
縦走とは? 憧れの山遊びを安全に楽しむコツ
2025.10.28
キャンプやBBQのデザートに! 焚き火を使った焼きマシュマロの作り方
2025.10.23
紅葉狩りとは? 「狩り」という漢字を使うのはなぜ? 秋のレジャーの基礎知識
2025.10.21
秋冬のキャンプは焚き火で焼き芋作りにチャレンジ! 甘さが引き立つ作り方
2025.10.10
藤浪晋太郎が帰ってきた。新天地・横浜で問われる“真価”
2025.10.08
試運転の剛腕、全開の打棒――大谷翔平の“未完成な頂点”
2025.10.06
新庄剛志はなぜファイターズを“変えることができた”のか―監督の仕事は“演じる”ことだ
2025.10.22
背番号物語(第3回)~Jリーグの歴史を彩った「7」番を振り返る
2025.10.17
ベルギーとの激闘から7年。ロシアW杯メンバーの「いま」
2025.10.15
背番号物語(第2回)~Jリーグの歴史を彩った「1番」を振り返る
2025.10.09
44年ぶりベスト4戦士の「いま」。歴戦の勇士たちは円熟の存在感を放つ
2025.11.25
フェアウェイウッドが苦手な人に使ってほしいシャフト グッと深掘りゴルフギアVol.172 三菱ケミカル「ゴルフ5ヴァンキッシュ」シャフト編
2025.11.22
国内随一の技術力を誇るミズノのアイアン工場に潜入取材! これが「ミズノプロ」の製造現場だ!
番手・スペックバリエーションが増えて、よりやさしく飛ばせる信頼のブランド「ゼクシオ14レディス」が12月6日発売
富山グラウジーズ 水戸健史が語る、バッシュ選びと私服スタイルのこだわり/フランチャイズプレイヤーが語るB.LEAGUEの10年 vol.02
2025.11.18
宇都宮ブレックス 遠藤祐亮が語る、「このシューズを履きたいから練習したい」~というモチベーションでバスケットボールを楽しむ/フランチャイズプレイヤーが語るB.LEAGUEの10年 vol.01
PRODUCTS
2025.07.24
JO1と一緒に、この夏を思いっきり楽しもう。―MIDSUMMER COLLECTION【後編】
JO1と一緒に、この夏を思いっきり楽しもう。―MIDSUMMER COLLECTION【前編】
2025.07.17
2025年のおすすめ猛暑対策グッズはこれだ!暑い夏も、クールで快適に!
2025.05.23
効果バツグン!雨も泥もヘッチャラ!シューズケアの革命『IMBOX』、スポーツデポ・アルペン、ゴルフ5に登場!!
2025.04.24
「INIがまとう、夏をはじめる一枚」――SUMMER COLLECTIONで楽しむ春夏ファッションの魅力【後編】