暴論を承知で言い切ってしまえば、サッカーにおけるディフェンダーは、脇役である。
そうではない、という方もいるだろうが、サッカーを見る人の多くは、ゴールを期待している。ゴールを奪う人=主役とすれば、当然、防ぐ人は敵役、脇役となる。
だが、主役級の俳優ばかりをズラリと揃えた映画やドラマが必ずしも傑作になるとは限らないように、サッカーもまた、最高級の攻撃的タレントを揃えただけでは立ち行かないところがある。歴史に名を残すようなチームのほとんどには、ゴールを量産した主役にも負けないぐらいの輝きを放つ脇役がいた。
いや、違った。主役に負けないぐらいの輝きを放つ脇役のいないチームが、歴史に名を残したことはなかった、というべきかもしれない。
ワールドカップの歴史をザッと振り返っただけでも、66年のイングランドにはボビー・ムーアがいたし、70年のブラジルにはカルロス・アルベルトが、74年の西ドイツには言わずと知れたフランツ・ベッケンバウアーがいて、わたしが愛してやまない78年のアルゼンチンにはダニエル・パサレラがいた。98年のフランスのように、ローラン・ブランやリリアン・テュラムといった脇役(ディフェンダー)が、主役を超える働きをしたチームもある。
クラブチームについても同じことは言える。リリアン・テュラムの息子、マルクス・テュラムが所属するボルシア・メンヘングラッドバッハの全盛期にはベルティ・フォクツがいた。オランダ・トライアングルで一世を風靡したミランにはパオロ・マルディーニやフランコ・バレージがいて、21世紀に入って世界に最も大きな影響を及ぼしたクラブの一つ、バルセロナにはカルレス・プジョールがいた。
チームの精神的支柱となる、脇役がいた。
というわけで、ヴィッセル神戸はついに最後のピースを手に入れたのでは、という気がしている。
近年のヴィッセルがJリーグを代表するタレント集団であることに疑いの余地はない。何しろ、イニエスタがいる。ボージャンもいて、大迫や酒井といった日本代表選手もいる。
ところが、他を圧する莫大な資金を当時ながら、イニエスタ加入以降のヴィッセルが獲得したタイトルはといえば、天皇杯の一冠のみ、である。コストパフォーマンスというか、投じた資金の対価としては、あまり納得のいくものではない。
パリ・サンジェルマンの例を見れば明らかなように、どれほどの資金を投じ、どれほどの戦力を集めようとも、結果はすぐに出るものではない。ヴィッセルの場合、なぜこんなにも豪華なメンバーを、なぜ監督経験のなかった三浦淳宏に任せたのかという疑問はあるが、失敗だった、あるいは結果が出ていないと断じるのは早計のように思う。
ただ、これまでのヴィッセルに、フォクツやバレージ、プジョールのような存在がいなかったのは事実である。
昨年まで所属していたトーマス・フェルマーレンが素晴らしい選手であることに疑念をはさむつもりはないが、しかし、彼はベルギー人だった。チームの多数派である日本人を言葉でリードすることはできなかった。どれほど素晴らしい選手であっても、これではプジョールやセルヒオ・ラモスのような存在になるのは難しい。
そんなチームが、槙野智章を獲得した。
純粋に戦力としてのみ、あるいは戦術的役割のみを考えた場合、フェルマーレンが抜けた穴を槙野に埋めることができるかどうかは、正直、微妙なところである。ただ、プジョールより上手い選手はいても、プジョールより頼りになる選手はいなかったように、槙野には槙野にしかできないプラスαをもたらす可能性がある。
07年、カナダでのU-20W 杯から感じていることなのだが、槙野という選手にはチームの雰囲気を盛り上げ、一体化させるほとんど特殊といってもいいほどの能力がある。そして、結果的にこの大会で準優勝することになるチェコを相手に先制弾を決めたり、レッズ最後の試合となった天皇杯決勝でもあまりにもドラマチックな一撃を決めたりと、節目節目で重要なゴールも産み出してきた。
先に例としてあげた偉大なる脇役は、皆クラブの生え抜きだった。その点、レッズからの移籍となる、しかもすでにベテランの域に入っている槙野がチームの顔に、欠かせない脇役になれるかは、少々微妙なところもある。
ただ、必ずしもJリーグの伝統クラブ、名門クラブとは言い難いヴィッセルの場合、ヨーロッパの名門ほどには生え抜きにこだわる空気はないはずで、そこは槙野にとってもプラスとなる。ヴィッセルの主軸になることは、いわゆるオリジナル10と呼ばれるクラブで顔となることとは少し違う。
というわけで、槙野がチームの精神的な核となり、選手同士だけでなく、ファンをも巻き込んだ一体感を産み出すようなことになると、今年のヴィッセルは、黄金期への第一歩を踏み出すことになるかもしれない。
槙野が加わったヴィッセル、駒の揃わない大分で結果を残してきた片野坂監督が指揮を取ることになったガンバ、パワハラ問題で一度は地獄に落ちた曹貴裁監督率いるサンガと、今年のJリーグは関西勢が話題の中心になっていきそうな気がする。
ただ、谷口のいるフロンターレは、何だかんだいっても崩れなさそうなんだよなあ。
お気に入り一覧
FOOTBALL
2026.01.23
このフィットが、スピードを変える。第3世代『MIZUNO α III (ミズノ アルファ スリー)』が導く、新時代フットボールのスプリント革命
BASEBALL
自分に合った軟式グローブでより野球を楽しもう! おすすめの選び方や注意点
OTHER
バスケは「ファンダメンタル」が重要! 上達に欠かせない基礎テクニックの鍛え方
GOLF
2026.01.21
フェース下部の打点がさらに強くなった「QUANTUM」シリーズFW。UT、アイアンも発売
やべっちCUPがつなぐ“サッカーの未来”─子どもたちの情熱と、矢部浩之が語る「サッカーに導かれてきた人生」
バスケのコートネームとは? 選手の個性を引き出す名前の付け方と活用法
2026.01.20
さらに進化した三層構造のAIフェースは飛びの期待値大! グッと深掘りゴルフギアVol.180 キャロウェイ「QUANTUM MAX」ドライバー編
野球選手に必要な筋肉は? 鍛えたい筋肉とトレーニング方法をご紹介
2026.01.19
3つの素材を組み合わせた「TRI-FORCE(トライフォース)」フェースで高初速を実現 キャロウェイ「QUANTUM」シリーズ
バスケットボールのチームファウルとは? 個人ファウルとは何が違う?
RUNNING
2026.01.09
箱根駅伝は「仕上げ方の違い」が面白い
シューズから見た2026年箱根駅伝(総評版)
2026.01.07
TIGORA「FT5/36(エフティーゴーサンロク)」で初めての湘南国際マラソン!3時間42分でフィニッシュ!スポーツMC岡田拓海の実走レース&シューズレビュー!
2026.01.03
シューズから見た2026年箱根駅伝(速報)
2025.12.29
年末年始企画・各社スーパーシューズをライトに比較してみた!(後編)
OUTDOOR
2026.01.08
スキーにはフェイスマスクがあると便利! 選び方の4つのポイント
2026.01.06
冬キャンプは初心者にもおすすめ! 成功させるためのコツは「防寒対策」
2025.11.20
累計販売数16,000足!大人気スノーボードブーツ「キスマーク ジャフィ」がおすすめな理由とは?
2025.10.30
縦走とは? 憧れの山遊びを安全に楽しむコツ
2025.10.28
キャンプやBBQのデザートに! 焚き火を使った焼きマシュマロの作り方
2025.12.25
【2025年の日本野球界を総括】ドジャースに始まり、ドジャースに終わった一年
2025.12.17
鳥谷敬が子どもたちに託した“野球の未来”。99人が学んだ特別野球教室、その一日を追った。
2025.12.08
【野球】セーフティバントを決めるコツ。バントとの違いは?
2025.12.26
【2025年の日本サッカー界を総括】日本サッカーが“信じて挑める国”になった一年
2025.12.12
プーマの新作スパイクを徹底レポート――KING 20 ULTIMATE& FUTURE 9 ULTIMATEが魅せた革新のフィット感とパフォーマンス(後編)
プーマの新作スパイクを徹底レポート――KING 20 ULTIMATE& FUTURE 9 ULTIMATEが魅せた革新のフィット感とパフォーマンス(前編)
2026.01.17
畑岡奈紗プロと大西魁斗プロがAlpenTOKYOのイベントに登場。 「過酷な海外ツアーではアディダスのシューズ・ウェアに助けられています!」
2026.01.16
櫻井心那プロが「アンパスィ」のスペシャルイベントに登場。 「アンパスィのウェアを世界に広めてきます」
バスケットボールの魅力は何? 試合観戦・プレーの前に知っておきたい基礎知識
2026.01.13
バスケは1チーム何人? スタメン・ベンチの人数に関する基本ルール
PRODUCTS
2025.12.23
対馬海洋プラスチック由来のヒップソリ/スコップができるまで 〜美しい対馬の海を未来につなげよう〜
2025.07.24
JO1と一緒に、この夏を思いっきり楽しもう。―MIDSUMMER COLLECTION【後編】
JO1と一緒に、この夏を思いっきり楽しもう。―MIDSUMMER COLLECTION【前編】
2025.07.17
2025年のおすすめ猛暑対策グッズはこれだ!暑い夏も、クールで快適に!
2025.05.23
効果バツグン!雨も泥もヘッチャラ!シューズケアの革命『IMBOX』、スポーツデポ・アルペン、ゴルフ5に登場!!