カタール行きのチケットを争うアジア最終予選も、残すところあと2試合となった。
初戦にホームでオマーンに敗れ、また第3戦でサウジに苦杯を喫するなど、惨憺たるスタートを切ってしまった日本だったが、何とか自力で予選を突破できるところまで盛り返すことができた。予断を許さないのは言うまでもないにせよ、試合の中で、相手に与えるチャンスの数が明らかに減ってきているのは明るい材料である。
もちろん、3月24日に敵地で戦うオーストラリアは強い。何とか勝利を収めた昨年12月の対戦にしても、展開次第、あるいはちょっとした巡り合わせ次第ではどちらが勝っていてもおかしくない内容だった。
ただ、勝ち点で「3」の差があることを考えれば、勝ち点1を持ち帰ることができれば日本にとっては勝利に等しい。絶対に勝たなければいけないチームにとって、引き分けでもOKな相手の牙城を崩すのは、相当な難事である。当然、オーストラリアはある程度バランスを崩してでも前がかりでぶつかってくるはずで、日本からすれば伊東を生かす大きなスペースを見つけやすい展開になろう。
だが、個人的にはオーストラリアでの決戦と同じぐらいに注目しているのが、同じ日に行なわれる中国対サウジアラビアの一戦である。
ご存じの方も多いだろうが、日本がサウジアラビアを倒した2月1日、中国はベトナムに敗れた。中国サッカー界にとっては、ひょっとすると歴史上最も衝撃的な敗北だった。
理由は簡単にいって2つある。
一つは、敗れた相手がベトナムだったということ。年々大国意識を募らせ、経済的には日本をも見下す態度すら隠さなくなってきた彼らにとって、国境を接し、同じ主義を信奉してきたベトナムは、歴史、人口、国土の大きさ、経済規模、そしてサッカー、すべてにおいて圧倒的な格下だった。日本に対してはまだライバル意識を露にすることもある中国人だが、ベトナムに関しては、そもそもライバル意識を持ったことすらない、というのが正直なところだろう。
そんな国に、彼らは負けた。完敗した。しかも、2月1日に負けた。
この日は、中国にとって旧正月の元日だった。1年で一番めでたいとされる、中国全土、あるいは全世界のチャイニーズが最も大切にする祝日の一つだった。
その衝撃は、想像を絶する。
長い歴史の中で、日本もまた、数多くの痛恨の敗北を喫してきた。だが、大きな意味を持つのは敗北という結果だけで、敗北を喫した日時が特別な意味を持っていたことはなかった。タイのピアポンにハットトリックを食らった日も、木村和司の直接フリーキックが空砲に終わった日も、そしてドーハでの悲劇も、サッカーに興味のない人たちからすれば、ただの一日、ただの平日だった。
だが、北京冬季五輪開幕を間近に控え、いつにもまして特別な意味を持っていた21年の旧正月元日に、彼らは敗れた。正月に、元日に、とてつもない泥を塗ってしまった。
さあ、選手たちはどうするだろう。
すでに予選敗退の決まった中国は、日本に敗れて尻に火がついたサウジの敵ではない、といった見方をする人は少なくない。敗れたのがベトナムでなかったら、元日でなかったら、わたしもそう考える。
だが、汚名をそそぎたい、そそがなければならないという思いを、人生最高のレベルにまで引き上げている中国代表の選手はいないだろうか。すでにカタール行きの夢は断たれたが、最後に意地を見せようと腕ぶすタフな選手はいないだろうか。
いたら、面白いことになる。
なぜか日本戦になると借りてきた猫なみに意気地がなくなってしまった中国だが、他の対戦相手とはどう転んでもおかしくない試合を演じてきた。実際、オーストラリアからは勝ち点2をはぎ取り、敵地でのサウジ戦は2-3という大接戦だった。
しかも、日本に勝ち点差で「1」に迫られ、最終戦をオーストラリアと戦うサウジとしては、何がなんでも勝ち点3が欲しい。ホームで戦ったときでさえ2ゴールを許した相手の虎口に、飛び込んでいかなければならない。
何かが起こりそうな予感がするし、また、ここで何か起こせないようでは、この先10年以上、中国サッカーが浮上することはないだろう。
ちなみに、ここまでの最終予選、サウジアラビアはアウェーを4試合戦っているが、奪ったゴールはたったの「2」でしかない。コロナ禍にも関わらず、大観衆の後押しを受けて戦ったホームに比べると、成績は極端に落ちる。
じゃあ、日本は?
わたしの予想は、オーストラリア戦は痛み分けのドローに終わり、最終戦のベトナム戦が決戦となるのでは、というもの。中国を倒して勢いに乗っていることが考えられるベトナムだが、オマーン戦で手痛い失敗を経験した日本が隙を見せることもないだろう。今回のベトナムは中国よりもはるかに闘志や団結力を感じさせる好チームだが、隙のない日本をと互角に打ち合えるほどではない。とてつもない不運に見舞われでもしない限り、日本が勝ち点3をモノにするはずだ。
一方で、サウジが中国相手に取りこぼしを演じ、オーストラリアが日本と痛み分けに終わったとすると、両国の直接対決となる最終戦は近来稀に見る一大決戦となる。本来、本大会にしろ予選にしろ、最終戦は同日同時刻にキックオフされるのが常識となっているが、東西に広いアジアでは果たしてどうなるのだろう。
もしキックオフ時間に差異のある日程になるのであれば、先に試合が開始されるであろう日本がさっさとカタール行きを決め、軽く祝杯でもあげながら世紀の決戦を見守る、というのがわたしの考える理想的な展開。プロ野球セ・リーグの優勝予想は21世紀に入って2度しか当てていないわたしだが、この予想、予感に関しては、ちょっと自信がある。
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