(上記画像:土居聖真(左)が主将を務める山形はJ1昇格候補だ)
人呼んで「戦国リーグ」である。
J2リーグの序盤戦が、驚きをもたらしている。
J3からJ2へ復帰したRB大宮アルディージャが、開幕から4連勝を飾った。第5節でサガン鳥栖に敗れたものの、ここまで5勝2敗の勝点15で2位につけている(成績はすべて3月30日の第7節終了現在)。
元日本代表監督の岡田武史氏がオーナーを務め、クラブ史上初のJ2を戦うFC今治も、3勝3分1敗で5位に位置する。RB大宮、今治と同じくJ3から昇格し、11年ぶりにJ2で戦うカターレ富山は、3勝1分3敗で6位だ。3チームが揃って健闘している。
それに対して、J1から降格した2チームは予想外のスタートとなった。
北海道コンサドーレ札幌は、開幕から4連敗を喫した。鳥栖も4戦勝利なしだった。両チームは5、6節と白星を並べたものの、7節は黒星を喫した。出遅れたとの印象は否めない。勝点を逃した開幕直後の戦いが、最終的にチームを苦しめなければいいのだが……。
ジュビロ磐田は連勝スタートから連敗を喫し、5節、6節、7節は勝利して5勝2敗だ。こちらはJ1昇格プレーオフ圏の3位につけるものの、5勝はすべて1点差ゲームである。試合内容で相手を圧倒するには至っていない。
序盤戦の明暗は、「継続性」を理由に語ることができる。
今シーズンは昨シーズンに比べて、リーグ戦の開幕が2週間早かった。つまりは、オフの準備期間が例年より短かった。新監督を迎えた札幌、鳥栖、磐田らは、2年目、3年目の監督が率いるチームよりも、急ぎ足で開幕を迎えなければならなかったのである。
ここまで6勝1敗で首位に立つジェフユナイテッド千葉は、小林慶行監督のもとで戦う3年目のシーズンだ。昨シーズン得点王のFW小森飛絢がシントトロイデン(ベルギー)へ期限付き移籍したものの、中心選手の大幅な入れ替わりはない。小林監督のもとでチームとしての練度を高めてきたことが、好スタートの裏づけとなっている。
昨シーズンは最終節で敗れて6位から7位に転落し、J1昇格プレーオフ進出を逃した。その悔しさも勝利を目ざすモチベーションとして、今シーズンの戦いに生かされている。
小林慶行監督が就任3年目の千葉は、開幕から6連勝
2位のRB大宮は長澤徹監督、4位のV・ファーレン長崎は下平隆宏監督が、就任2年目となっている。富山の小田切道治監督は4シーズン目だ。こうしたチームは、すでにベースが出来上がっているアドバンテージを、開幕から結果に反映させている。J1レベルの強力な外国人選手を揃える長崎は、昇格の最有力候補にあげられている。
J3から昇格したチームが好発進することも、J1から降格してきたチームが序盤に苦戦することも、今回が初めてではない。
22年のJ2では、昇格1年目のロアッソ熊本が4位に食い込んだ。翌23年のJ2では、J1から降格してきた清水エスパルスが、開幕から7戦勝利なしと苦戦した。清水は最終順位で4位にとどまり、J1昇格を逃している。
J3からの昇格組と対戦するチームは、相手の良さを徹底的に消すのではなく、自分たちの強みを発揮して勝点3をつかもうとする。言ってみれば「強者のサッカー」で挑むのだが、近年のJ2は各チームの実力が拮抗している。シーズン序盤はお互いに情報が少ないことも加味され、前評判の高いチームが足元をすくわれる試合が起こりやすくなるのだ。
J1昇格候補のチームでは、昨シーズン4位のモンテディオ山形も開幕3連敗を喫した。ホームが降雪エリアのため開幕から3試合はアウェイゲームで、RB大宮、千葉との対決も含まれていたから、厳しい戦いは覚悟していたかもしれない。
渡邉晋監督は就任3年目で、選手の顔触れも大幅に変わっていない。継続性を担保して戦術的な成熟度を高めており、日本代表経験を持つMF土居聖真らJ2屈指の保有戦力を誇る。 果たして、4節、5節と連勝を飾り、6節は序盤戦好調の徳島ヴォルティスと引分けた。地力はあるだけに、上位へ食い込んでくるだろう。
戦術的な視点からも、J2の序盤戦を分析してみる。興味深いデータが浮かび上がってくる。
開幕から6連勝を記録した千葉は、1試合平均パス数、平均ボール支配率、1試合平均シュート数がリーグの中位から下位だ。それでいて、リーグ最多の17ゴールを叩き出している。その要因となっているのがシュートの精度で、枠内シュート総数がリーグのトップ3なのだ。チャンスを高い確率でゴールへ結びつけていることが分かる。
2位のRB大宮も、1試合平均パス数、平均ボール支配率は特筆すべき数字ではない。それでも、1試合平均シュート数、1試合平均チャンスクリエイトではリーグトップを争う。
RB大宮の長澤徹監督は、「我々はRB(レッドブルグループ)なので、ボールを持ってポゼッションをしまくるわけではなく、ドン引きしてカウンターを狙うわけでもない。ボールを奪いにいって、必要であれば早く攻めるし、必要であればしっかりボールを握る」と話す。
ポゼッションにもカウンターにも寄らないそのスタイルを、指揮官は「第3の立ち位置」と表現する。レッドブルグループの中心となるRBライプツィヒに似た高強度で縦に速いサッカーは、現代サッカーのトレンドであり、レッドブルへの経営権譲渡前から長澤監督が進めてきたものだ。
実際に大宮の試合を観ると、「相手にボールを握られている」とか「守備の時間が長い」といった印象は受けない。おそらくそれは、マイボール時の攻撃が鋭いからなのだろう。相手ゴールへしっかりと迫ることができている。
千葉も同様だ。マイボールにした瞬間に、チーム全員がまず前へ矢印を向ける。アグレッシブなその姿勢は、ダブルボランチに映し出される。MF田口泰士(または品田愛斗)とMF横山暁之が攻撃に関わることで厚みが生まれ、ゴールを奪うことができているのだ。
千葉の攻撃を操る横山。7節まで3得点2アシストを記録
J1リーグへ目を移せば、縦に速くプレー強度を追求したヴィッセル神戸が、23年、24年とリーグ連覇を達成している。昨年のJ1で3位に食い込んだFC町田ゼルビアも、ボール保持やパス本数にはこだわらない。
今シーズンのJ2で昇格候補と目される札幌、磐田、長崎、山形らは、ボール支配率やパス本数で高い数字を残している。自分たちでボールを保持する彼らのようなチームが、J1昇格争いの中心となっていくのか。それとも、現代サッカーのトレンドをキャッチアップした千葉やRB大宮が、このまま突き進んでいくのか。今シーズンのJ2は、戦術的にも見どころがある。
昨シーズン6位のベガルタ仙台の森山佳郎監督は、「少なくとも10チームぐらいはどちらが勝つのか分からない力関係で、本当にレベルの高いリーグになっている」と話す。RB大宮の長澤監督も、「リーグ全体としてレベルの差が詰まってきている。僅差のゲームが増えると思うので、それをどう勝ち取るか」と語る。 シーズン序盤の現時点で、はっきりしていることがあるとするなら──。11月29日の最終節まで、目が離せない攻防が続くということだ。
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