(上記画像:鹿島の鬼木達監督(右)は昨シーズンまで川崎Fを指揮)
J1リーグを見ていると、こんな疑問が浮かんでこないだろうか?「あの監督、この前まで別のチームの監督だったよな?」
「J1の監督の顔触れって、いつも似たような感じじゃない?」
2025年シーズンのJ1リーグ20チームの監督を見ると、実に13チームの監督がJリーグの複数クラブで采配をふるった経験を持つ。顔触れがいつも同じように感じる人がいても、おかしくはないのだろう。
名古屋グランパスの長谷川健太監督は、清水エスパルス、ガンバ大阪、FC東京、名古屋グランパスで、合計19シーズンも監督を務めている。J1リーグでの監督試合数は歴代最多で、Jリーグ33年の歴史の大半をベンチから見つめてきたことになる。
ではなぜ、J1の各クラブは同じ監督を起用する傾向が強いのか。
最大の理由は「経験」だ。
クラブチームの監督は、プレシーズンをどのように過ごすのかに始まり、シーズン中は週末の試合へ向けてスケジュールを構築していく。近年はコーチングスタッフで仕事を分担するスタイルが確立されてきたが、たとえばアウェイ遠征時の移動手段や移動時間などを、最終的に確認するのも監督の仕事に含まれる。監督の「GO」サインを経て動く、という事柄は多い。毎日が決断の連続、と言っていいぐらいだ。
シーズン中のチームマネジメントは、とりわけ重要だ。
毎週末の結果を受けて、チームのどこを修正するか。修正するなら、何を、どれぐらいするのか。チームをより良くするために、選手たちに何を伝えるのか。どのタイミングで、誰から誰に伝えるのか。それらの判断はとても繊細であり、過去の経験が生きてくる。
たとえば、1対0の勝利でも試合によって意味合いは異なる。「内容はともかく結果オーライ」と考えていい試合があれば、1対0でも大いに反省しなければならない試合もある。監督がその意味合いを間違えてとらえると、チームが一気に崩れてしまうことがある。
シーズン中のチームは、ほぼ決まったスケジュールで動く。プレシーズンのキャンプ期間のように、じっくり練習をしてチームを立て直す、という時間的な余裕はない。チームが崩れそうな兆候が見えたら先手、先手で対策を講じていかなければならない。なすべきマネジメントの質と量を考えると、監督選びで「経験」が重要視されるのが分かるだろう。
W杯で活躍したような元日本代表選手が、監督に必要なライセンスを取得してもすぐにJ1のクラブからオファーが届かないのは、J1では失敗が許されないからだ。とりわけJ2降格は、どのクラブも避けたい。選手としてのキャリアやネームバリューだけでは、監督を任せにくいのが現状なのである。
経験とともに、「実績」もポイントとなる。
今シーズンから鹿島アントラーズを指揮する鬼木達監督は、川崎フロンターレを指揮した17年から24年までにJ1リーグ優勝4回、リーグカップ(ルヴァンカップ)優勝1回、天皇杯優勝2回と、シルバーコレクターとも言われていたチームに7つのタイトルをもたらした。在任時のチームには中村憲剛、谷口彰悟、山根視来、レアンドロ・ダミアン、三笘薫、田中碧といった傑出したタレントが揃っていたが、彼らの力をしっかりと引き出してタイトル獲得へつなげたのだから、鬼木監督の評価は右肩上がりとなった。
今シーズンから采配をふるう鹿島は、18年のAFCチャンピオンズリーグを最後にタイトルから遠ざかっている。国内3大タイトルと言われるJ1リーグ、リーグカップ、天皇杯となると、16年のJ1リーグ優勝と天皇杯制覇が最後だ。実に8シーズンも、3大タイトルから遠ざかっている。クラブOBであることを加味しても、鹿島にとって鬼木監督はチームを託すのにふさわしい人材なのだろう。
長谷部茂利監督は川崎Fが4チーム目となる
その鬼木監督に代わって川崎Fを束ねるのが、長谷部茂利監督である。J2のジェフユナイテッド千葉でシーズン途中に監督を務めたのちに、19年にJ2の水戸ホーリーホックでクラブ史上最高位タイの成績を収めた。翌20年に当時J2のアビスパ福岡の監督となり、就任1年目にしてJ1昇格を成し遂げる。
翌21年はJ1でクラブ歴代最高位の8位へチームを押し上げた。就任4年目の23年にはさらに順位をあげて7位でフィニッシュし、クラブ初の3大タイトル獲得となるリーグカップ優勝の歓喜をもたらした。
長谷部監督は水戸でも福岡でも、クラブの記録を塗り替えてきた。タイトルを狙えるクラブに関心を持たれるのは、自然な流れだっただろう。現役時代に川崎Fでプレーした経験も、監督就任を後押しする材料となったはずだ。
今シーズンからJ1で戦うファジアーノ岡山の木山隆之監督は、J2の水戸、千葉、愛媛FC、モンテディオ山形、当時J1のベガルタ仙台で采配をふるってきた。これだけ多くのクラブに携わっているということは、その仕事ぶりが一定の評価を得ていると理解できる。チームを託してみたい人材と言える。
24年の岡山はJ1昇格プレーオフを制して、史上初のJ1行きを決めた。木山監督自身は、千葉、愛媛、山形でプレーオフを戦っていた。その経験を生かして、岡山をJ1へ押し上げたのである。
東京Vの城福浩監督は経験と実績、情熱をあわせ持つ
岡山より1シーズン早くJ1に昇格した東京ヴェルディは、64歳の城福浩監督が統べる。25年シーズン開幕時点で、J1の最年長監督である。
J1のFC東京でリーグカップ優勝を成し遂げ、J2のヴァンフォーレ甲府でJ2優勝によるJ1昇格を果たした。予算規模が小さい甲府をJ1に残留させ、FC東京復帰を挟んでサンフレッチェ広島を4シーズン指揮した。
東京Vの監督となったのは、22年シーズンの途中だった。J2を戦うのは10年以上ぶりだったが、就任2年目の23年にJ1昇格を勝ち取った。さらに24年は、J1で6位の好成績を残している。在任4シーズン目は、Jリーグ開幕までさかのぼってもクラブ最長だ。
東京Vを離れる日が来たら、すぐにオファーを出すクラブが表われそうだ。城福監督は経験と実績に頼らず、理論を絶えずアップデートしながら誰にも負けない情熱を燃やしている。
経験と実績が眩しいのは、日本人監督に限らない。外国人監督が、クラブを渡り歩くケースもある。
今シーズンから柏レイソルの先頭に立つリカルド・ロドリゲス監督は、17年から20年までJ2の徳島ヴォルティスを率いた。20年にはJ2優勝でのJ1昇格を決めた。
この実績に目をつけたのが浦和レッズだ。19年、20年と無冠に終わっていたチームを託されたロドリゲス監督は、就任1年目の21年に天皇杯をもたらした。翌22年はAFCチャンピオンズリーグで決勝進出を果たしたものの(決勝は23年に開催され、彼は指揮していない)、リーグ戦で9位にとどまり浦和を離れた。
その後は中国のクラブで監督を務め、25年に3シーズンぶりの日本復帰を果たした。2シーズン連続でJ1残留争いに巻き込まれた柏に、母国スペインのポゼッションスタイルを持ち込み、開幕から好調を維持している。今シーズンの柏は、Jリーグを知る監督の招へいでチームを立て直した好例となりそうだ。
柏と同じく24年にJ1残留争いに巻き込まれた新潟は、今シーズンから樹森大介監督が就任している。前任の松橋力蔵監督がFC東京の監督となったため、クラブはJ2の水戸でトップチームのコーチを務めていた樹森監督に白羽の矢を立てたのだった。
しかし、シーズン序盤からなかなか勝点をつかめずにいる。樹森監督がJ1の監督経験がないことが、その一因にあげられている。
実は前任の松橋監督も、J1での監督経験はなかった。新潟のトップチームコーチからの内部昇格だったが、J2優勝、J1残留、リーグカップ準優勝の結果を残した。
また、FC町田ゼルビアの黒田剛監督は、青森山田高校サッカー部監督からの転身である。「高校生とプロでは、指導法が違う」とも言われたが、就任1年目にJ2優勝を果たし、2年目はJ1で3位に食い込んだ。25年は金明輝ヘッドコーチがアビスパ福岡の監督となり、その影響が指摘されたものの町田らしさは維持されている。
経験と実績は監督の評価基準となり、クラブスタッフや選手の信頼をつかむ手助けにもなる。ただ、どんな監督にも「就任1年目」はあるものだ。樹森監督のような経歴の持ち主が結果を残すことで、各クラブの監督選びが変わっていくかもしれない。
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