(上記写真:Jリーグ30数年の歴史でも、中村俊輔は特別な背番号10だ)
背番号には、物語がある。歴史がある。記憶がある。Jリーグを彩ってきた名手を、背番号とともに振り返っていく。
今回は「10」を取り上げる。
黎明期に活躍した外国人選手ならば、Jリーグ開幕当時に鹿島アントラーズを牽引した“神様”ジーコや、ジェフ市原(現在のジェフ千葉)の元ドイツ代表ピエール・リトバルスキー、名古屋グランパスを強豪へ押し上げた“ピクシー”ことドラガン・ストイコヴィッチの名前が上がってくるだろう。ブラジル代表経験者では、1994年アメリカW杯優勝メンバーのレオナルド(鹿島アントラーズ)、同じく94年大会に出場したジーニョ(横浜フリューゲルス)らも、このエースナンバーを背負った。
93年から96年まで柏レイソルに在籍したストライカーのカレッカも、背番号10を着けた。ブラジルは背番号がポジションを表わし、センターフォワードのカレッカは9がお馴染みだったが、日本では10を背負った。
カレッカと同じ柏レイソルでは、フランサも10を着けた。創造性と意外性に富むプレーが持ち味の彼は、古き良き時代のブラジルを思い起こさせるアーティストだった。
フランサの後継となったレアンドロ・ドミンゲスは、10年にJ2を戦うチームに加入して異次元のプレーを披露した。チームをJ1昇格へ導くと、翌年はJ1優勝の立役者となった。自身はMVPを受賞している。
その後は名古屋グランパス、横浜FCのユニフォームにも袖を通した。高い技術を備えながらも実効性を追い求めたその姿勢は、どのチームでも高い評価を受けた。今年4月に41歳の若さで逝去している。
Jリーグを代表するメガクラブの浦和レッズでは、ロブソン・ポンテの足跡が強い。点が取れてアシストもできる攻撃的MFである。
ブラジル出身の愛称ロビーは05年夏から10年シーズンまで浦和で過ごし、J1リーグと天皇杯、さらにはAFCチャンピオンズリーグ制覇を成し遂げた。同時期に在籍した同胞ワシントンとのホットラインは、Jリーグの歴史においても特別なものと理解されている。
そのポンテの後釜となったのが、マルシオ・リシャルデスだ。07年から10年までアルビレックス新潟で圧倒的な存在感を示し、11年から浦和でプレーした。得点能力の高い攻撃的MFであり、直接FKの名手でもあった。J1リーグで8シーズンにわたってプレーし、205試合出場55得点の記録を残した。
J1リーグの歴史において、2000年中期から存在感を高めていくのが川崎フロンターレである。そのチームで攻撃を牽引したのが、03年加入のジュニーニョだ。来日1年目はJ2で得点ランク2位の28得点、翌04年は37ゴールで得点王となる。チームもJ1昇格を果たした。
日本代表MF中村憲剛とホットラインを形成し、07年にはJ1リーグでも得点王に輝いた。残念ながらチームにタイトルをもたらすことはできなかったものの、そのプレーはファン・サポーターの記憶に強く刻印された。
J1の歴代得点王では、ウェズレイにも触れるべきだろう。屈強なフィジカルを武器に、ゴール前で圧倒的な存在感を発揮した生粋のストライカーである。
名古屋、サンフレッチェ広島、大分トリニータで合計10シーズン在籍し、J1歴代9位の124ゴールを叩き出した。03年には名古屋の得点源として22ゴールを叩き出し、得点王に輝いている。
韓国人Jリーガーも、背番号10を背負っている。崔龍洙(チェ・ヨンス)は01年から05年にかけて市原、京都サンガ、ジュビロ磐田で得点源となり、J1で通算55点、J2でも20点を記録した。生粋の点取り屋として、98年と02年のW杯に出場した実力を証明した。
金民友(キム・ミヌ)は10年にJ2のサガン鳥栖の一員となり、11年に7ゴールを記録してJ1昇格を後押しした。12年以降もチームの中心として機能し、在籍最終年の16年はキャプテンを任された。サガン鳥栖を愛し、ファン・サポーターに愛された選手である。
25年のJ1リーグでは、マテウス・カストロが眩しい。大宮アルディージャ(現RB大宮)、名古屋、横浜F・マリノスを経て20年に名古屋に辿り着き、22年、23年と10番を背負った。パワフルかつ高精度な左足シュートは、「悪魔の左足」と呼ばれる。
日本人選手の背番号10と言えば、Jリーグ黎明期ではこのふたりを外すわけにはいかない。木村和司とラモス瑠偉である。Jリーグ開幕以前の日本サッカーリーグ当時からライバル関係にあった日産自動車(現在の横浜F・マリノス)と、読売クラブ(現在の東京ヴェルディ)の司令塔だったふたりは、高い技術と戦術眼を併せ持つゲームメーカーとして日本サッカーを牽引したのだった。
木村やラモスの後継者と言われたのは、清水エスパルスの澤登正朗である。出身地の清水ひと筋で14シーズンにわたってプレーし、巧みなゲームメイクでファン・サポーターを沸かせた。99年のチャンピオンシップ第2戦で決めた直接FKは、いまでも語り草となっている。
同じ静岡県にホームタウンを置く磐田にも、クラブ史に名を残す10番がいる。藤田俊哉だ。94年の入団時は変動背番号制で、元オランダ代表のファネンブルグに10を譲ることが多かったが、97年の固定背番号制移行はエースナンバーを自らのものとした。アタッキングサードでのアイディアに溢れ、そのアイディアを具現化できる技術を持った彼は、90年代後半から2000年代前半に黄金期を築いた磐田において、唯一無二の存在だったと言っていい。
磐田と2強時代を形成した鹿島では、本山雅志が02年から15年まで10を着けた。ジーコ、レオナルド、ビスマルクといったブラジル代表経験者の後を受けて鹿島で10を背負い、チームに数多くのタイトルをもたらした。
技術と戦術眼に優れた本山雅志。長く鹿島の「10」を背負った
所属クラブにタイトルをもたらした日本人の10番と言えば、二川孝広に触れなければならない。ガンバ大阪の生え抜きとしてプロ入りしたこのMFは、西野朗監督のもとで遠藤保仁とともに攻撃サッカーをピッチ上で表現した。身体は小さくともプレーのスケールは大きい彼は、ガンバの歴史にその名を残す10番である。
タイトル獲得などとはまた違う次元で、ホームタウンで圧倒的なまでの支持を集める10番もいる。
アビスパ福岡の城後寿は、プロ4年目の08年から18年連続で10を背負う。サポーターが「キング」と呼ぶストライカーは、39歳となったいまもチームのためにひたむきに汗を流す。
北海道コンサドーレ札幌の宮澤裕樹は、プロ3年目の10年から16年連続で背番号10を着けている。クラブのバンディエラはJ1、J2合計で、500試合以上の出場を重ねている。
川崎フロンターレの大島僚太は、16年にそれまでブラジル人が着けてきた10を引き継ぎ、今年で10年目を数える。16年のリオ五輪、18年のロシアW杯で代表に名を連ねたMFは、ケガを繰り返しながらもチームにとって不可欠な存在であり続けている。
FC東京では、ふたりのMFが背番号10の歴史を紡いだ。梶山陽平と東慶悟だ。梶山が08年から18年途中まで着け、梶山の引退を受け19年から東が譲り受けた。ともに五輪出場歴を持ち、MFとして複数の役割をこなすことができる。
ヴィッセル神戸では、国際的な選手が背番号10に重みをもたせている。17年から元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキが背負い、21年8月から元日本代表の大迫勇也がエースナンバーを着けている。ドイツで長くプレーしたのちに神戸入りした大迫は、23年に得点王となり、チームをJ1リーグの頂点へと導いた。24年も2ケタ得点を記録し、J1リーグ連覇に貢献している。
クラブの歴史に名を残す10番としては、梁勇基(リャン・ヨンギ)もあげられるだろう。阪南大学卒業とともにベガルタ仙台に加入し、長くエースナンバーを担った。右足から繰り出すラストパスとFK、CKは正確無比で、仙台のファン・サポーターは彼のキックに何度も魅せられた。
梁勇基はベガルタの象徴として語り継がれる存在だ
最後に触れるべきは、中村俊輔である。
プロデビューから2年は25を着け、セルティック(スコットランド)でも同じ番号を選んだ。10年途中に横浜F・マリノスへ復帰した際も25からスタートし(のちに10へ変更)、プロ最終年の22年も横浜FCで25を着けた。
とはいえ、日本を代表するこのレフティーのアイコンとなる番号は、間違いなく「10」である。その左足から繰り出すパスは芸術的であり、直接フリーキックは魔法の一撃だった。観衆の視線をクギ付けにした左足のキックは、名だたる外国人選手にも決して見劣りしない。彼こそはJリーグを代表する背番号10である。
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