冬晴れのJFA夢フィールドに、今年も子どもたちの歓声が響いた。
第8回「やべっちCUP 2025」は、全国のU-12チームが集い、プロ選手やOB、芸人がピッチを駆ける“年に一度の特別な日”。小学生とは思えないスピードと技術がぶつかり合い、涙と笑顔が交錯する一方、矢部浩之さんによる「やべっちクリニック」やエキシビションマッチが会場をさらに熱くした。
大会終了後、アルペングループマガジンはやべっちこと矢部浩之さんに単独インタビューを敢行。
「ずっとサッカーに導かれ、助けられてきた気がする」──その言葉の奥にある、サッカーへの深い愛情と、子どもたちに託す願いとは。
特別な一日の余韻とともに、やべっちCUPが育む“サッカーの未来”を紐解く。
■大会の模様──冬晴れのJFA夢フィールドに響いた歓声と熱気
12月の澄んだ海風が吹き抜けるJFA夢フィールド。朝日が芝を照らすと、全国から集まったU-12の選手たちが、期待を胸にピッチへ飛び出していく。ボールが跳ねる音、仲間を呼ぶ声、保護者のシャッター音──そのすべてが“特別な一日”の始まりを告げていた。
午前のグループステージでは、小学生とは思えないスピードと技術がぶつかり合い、1点を巡って歓声と悔しさが交錯する。仲間の背中を押し合い、ゴールが決まれば全員で抱き合う。スタンドも熱を帯び、会場は一瞬たりとも静まらない。
午前中の試合を終えた子どもたちに話を聞くと、「緊張したけど、楽しかった」「ミスもあったけど、次はもっと走りたい」「チームで声を出せたのがよかった」
と、それぞれのチームが前を向いた言葉を口にした。
■同じころ、隣のコートでは大人気企画「やべっちクリニック」がスタート
元Jリーガーも参加するクリニックは、終始、熱気に満ちていた
矢部さんが子どもに声をかけるたび、表情がぱっと明るくなる。「今のうまい!」「もう一回!」
その一言で、さっきまで下を向いていた子が、もう一度前に出る。失敗を恐れていた足取りが、いつの間にか軽くなっていた。
クリニックを終えた子どもたちも、「次の試合でも試してみたいプレーをたくさん教えてもらった」「テレビで見ていた選手と一緒にボールを蹴れてうれしかった」「分かりやすくて、すごく楽しい時間でした」と、前向きな言葉を次々と口にする。
小学生チームとの4試合を終えた矢部さんは、息を弾ませながら笑う。
「年々豪華になっていて、本当にありがたいです。4試合やったらもう足がつりそうですけど(笑)、楽しくて仕方ないですね」
さらに、子どもたちの成長に驚きを隠さない。
「54歳ですけど、上手い子がいたら悔しいんです(笑)。自分の小学6年の頃と比べちゃう。手は抜けませんよ」
そして、矢部さんが一番胸を打たれたのは、子どもたちの“顔つき”だ。
「最後の大会という子も多い。最高の思い出にしてほしいし、いつかここからプロが生まれて“はーい、やべっち!”って言ってくれたら最高ですね」
午後には、プロ選手、OB、芸人が入り混じった恒例のエキシビションマッチがキックオフ。
柿谷さんの華麗なテクニック、鄭大世さんの鋭いシュート、ジャイアントカズキさんの豪快なGKキックなど、会場からは大きな歓声が湧き上がった。子どもたちもプロの動きを一つも見逃すまいと、身を乗り出していた。
コートサイドでは、少年たちに声をかけるジャイアントカズキさんの姿があった。
少し緊張しながらも、目を輝かせて語られる言葉はどれも真剣だ。
「もっと上手くなりたい」「いつかプロになりたい」。「サッカーをしていて点を取る時が一番楽しい」
そのまっすぐな想いに、彼は何度も頷きながら耳を傾けていた。憧れが、確かな目標へと変わる瞬間が、そこにはあった。
■大会を締めくくる、心に残るエール
見取り図 盛山晋太郎さん
「今日は本当に羨ましいくらい素敵な時間でした。途中で子どもたちが抱きついてきて、“抱き枕”状態になった瞬間は焦りましたけど(笑)、全部ひっくるめて忘れられない経験です」
矢部浩之さん
「子どもたちのレベルは年々上がっていて、本当に驚かされます。サッカーができるのは当たり前じゃない。支えてくれる人への感謝を忘れず、ずっと楽しんでください。……それと、年を重ねるとぎっくり腰にも気をつけてね(笑)」
閉会式が始まると、ゴールを決めた喜び、うまくいかなかった悔しさ、それでも最後までやりきった誇らしさが、一人ひとりの表情に交錯していた。
拍手に包まれながら、子どもたちは仲間と笑い合い、肩を叩き合い、今日という一日を身体いっぱいで受け止めている。
「もっと上手くなりたい」
「またここでサッカーがしたい」
その言葉こそが、この大会で一番大きな“成果”だった。ピッチで追いかけたボールの記憶は、きっとこの先、新しい挑戦へ踏み出す力になる。
こうして、子どもたちの“一歩目”が刻まれた一日として、今年のやべっちCUPは静かに幕を閉じた。
そして大会終了後、アルペングループマガジンは矢部浩之さんへ単独インタビューを実施。ここからは、その模様をじっくりお伝えする。
■矢部浩之インタビュー『サッカーには、ずっと導かれてきたし、助けられてきた』
――やべっちCUPのこれまでを振り返って、ここまで大会が広がると想像していましたか?
いや、正直“1回目がうまくいって、長く続いたらいいな”くらいに思っていた程度なんですよね。
でも、こうして8回まで続けられたのは本当にありがたいです。できればこの先も続けていきたい。回数を重ねるごとに、協賛してくださる企業さんも増えて、イベントとしてもどんどん豪華になってきました。
お父さんやお母さんといったご家族が楽しめる出店や体験コーナーもあって、子どもの試合を見るだけではどうしても暇になってしまう時間もあるでしょうし、そういう“過ごし方の幅”が増えたことも大会としてはすごく助かっています。
――矢部さんがこれまでを振り返って、サッカーを通じて一番得たもの、学んだことはどんなことだと思いますか?
これね、やべっちFCが終わる時にもいろいろインタビューを受けて、“何も考えずに話したのに、あとで自分で記事を読んだら、そんなこと言ってるんや”って驚いたぐらいなんですけど……ちょっと照れくさいんですけど、「サッカーに助けられてきた」っていう感覚が強いんですよね。
小さいころ、ただ遊びでボールを蹴り始めたら、たまたま周りの子よりちょっとできて。その頃のレベルなんて全然低いんですけど、中学時代の監督が国体選手だった方で、その監督にすごく褒められた経験が今でも残ってるんです。
「あ、自分ってこれ得意なんや」と思わせてくれた。そういう成功体験や、人との出会いがサッカー部にあったんです。
高校でサッカーは挫折するんですけど、そこで相方と出会って。相方はモテたいっていう不純な動機でサッカー部に入っただけなんですけど(笑)、その縁からお笑いの道に誘ってくれて。必死でお笑いをやっていたら、「今度はサッカー番組やりませんか」と声をかけてもらって。やべっちFCがあったから、やべっちCUPもできている。
ずっとサッカーに導かれ、助けられてきたっていう感覚はすごくありますね。もう50年以上生きてきたからこそ、振り返れられることなんでしょうけど、いまでもサッカー選手に対しては強いリスペクトがあります。バラエティ番組では選手が芸人に合わせてくれたりもしますけど、僕は“そんな無理せんでいいねんで”と思うくらいで(笑)。
仲良くなってツッコミを入れたりすることはあっても、やっぱりプロってどこか一つ突出してる。だから自然とリスペクトの気持ちが湧いてくるんですよね。
今日のちびっ子たちを見ていてもそうです。自分の息子もサッカーをしてますけど、一生懸命走っている子を見ると上手い・下手に関係なく、どこかリスペクトに近い感情が湧いてくる。不思議ですけど、これも“サッカーが好きだから”なんでしょうね。
だから何回も言ってますけど、やべっちCUPに来てくれた子どもたちから、いつかプロが出たら最高です。
「〇〇の時の何々です」「優勝した何々です」って名乗ってくれる子も嬉しいんですけど、むしろ“優勝してないチーム”、たとえば5位だったチームの子が名乗ってくれたら、もっと感動するかもしれないですね。
「ああ、あの時から努力してきたんや」って。その子の中にストーリーが続いていたんやな、と感じられるから。そういう意味でも、この大会はこれからもずっと続けていきたいと思っていますし、僕自身も一生サッカーが好きなんやろな、って思います。
――閉会式でも「みんながプロになるわけじゃない」とおっしゃっていましたが、サッカーを通じて子どもたちにどんな成長を期待していますか?
うん、本当にそう思うんですよね。みんながプロになるわけじゃない。でも、だからこそサッカーから得られることってめちゃくちゃ大きいと思ってます。
これってポジションによっても全然違うんですよ。フォワードはある程度“わがまま”でもいいし、逆にそれが必要だったりする。僕は中盤だったんで、チーム全体を見て、相手の気持ちも考えてパスを出す。ワンマンなフォワードがいたとしても、“この人は決めたいんやろな”って理解できる。
サッカーって、性格がめちゃくちゃ出るんです。同じチームでも相性が悪い相手って絶対いる。でもいざ試合になったら、その相性悪い子がゴール決めたりする。
そこで“認めざるを得ない”瞬間があるんですよね。あれはめちゃくちゃ大事な経験やと思うんです。協調性とか、チームワークとか、相手の気持ちに寄り添うこととか。サッカーって、そういう力を自然と養ってくれる。
小学生でもちゃんとわかってると思いますよ。なんか“ちっちゃい社会”が、そのままチームの中にあるんです。
だから、プロを目指す子だけじゃなくて、本気でなくても、草サッカーでもいいから続けてほしいなと思います。絶対に無駄にはならないから。
スポーツデポは、子供たちに「本物」を体感させる矢部さんの活動、そして、やべっちカップを応援し、これからも子供たちの成長のサポートをし続ける取り組んでいく。
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