B.LEAGUEは10シーズン目という大きな節目を迎える。本連載ではその中で2016年の開幕からただ一つのクラブに所属し続ける、数少ない選手たちに話を聞く。第4回は三遠ネオフェニックスの太田敦也さんへのインタビューを紹介する。
三遠で18シーズンを戦い抜き、長年にわたりチームの精神的支柱として君臨してきた太田敦也さん。昨シーズンで引退を迎えた今、これまでのキャリアを振り返りながら、バッシュへのこだわり、学生たちへのアドバイス、そして勝負所で力を発揮するメンタルの整え方について語ってくれた。さらに、これから歩む“第2の人生”についても思いを明かす。
■特別な一足に宿る、記憶とこだわり
――持ってきていただいたバッシュ、実際に見るとかなり大きいですね。

サイズは32cmです。これはアシックスでオーダーできた頃のモデルで、今ではもう手に入らないと思います。日本代表に選ばれて、Bリーグが始まった頃に作ってもらったもので、ID入りのオリジナル仕様なんです。
――この紺色のカラーを選んだ理由は?
正直、そこまで深い意味はないんですよ(笑)。オーダーではさまざまなカラーを選べたので、赤などのチームカラーに合わせていくつか作っていました。これはその中の1足で、たまたま今も手元に残っていたものです。
本当は、代表用に作った真っ白なモデル(赤と黄色のラインが入ったやつ)が今もあればよかったんですけどね。あの時ちょうど、八村塁選手に背番号「8」が渡って、僕は「4」に変えたので、“04”って刺繍を入れてもらいました。あれはたった1足の特別なモデルでした。
■「アシックスが一番合っていた」日本人型の足にフィットする信頼の一足
――バッシュはずっとアシックスを履かれていたんですか?

アシックスさんから提供を受けていて、ずっと愛用していました。でも、それだけが理由ではなく、何よりも僕の足に一番合っていたんです。
僕の足は、典型的な「日本人型」で、幅広で甲が高いんですよ。他のメーカーを試したこともありますが、どうしても幅が合わなくて……。アシックスなら32cmで履けるのに、前述の他のメーカーのモデルだと33~34cmまでサイズを上げないと入らない。でもそうすると、全体のバランスが崩れてしまって全然合わないんです。
――履いていて痛くなることもあったんですか?
特につま先が痛くなることが多かったです。でもアシックスには「ワイドモデル」があるので、比較的快適に履けていました。もちろん、それでも多少きつさを感じることもありましたけど(笑)、プレーには全く支障がなく、すごく履きやすかったです。
僕はセンターなので、軽量モデルよりもある程度重さがあって、クッション性の高いシューズが合っていました。その点でもアシックスはちょうど良かったですし、何より丈夫。壊れにくいんです。
――耐久性も高かったと。

実際には、シューズ本体が壊れるより先に、靴ひもが切れることの方が多かったですね。
もしくはソールがすり減って滑りやすくなるとか。アッパーが破れることはほとんどなかったです。だから長く使えて経済的でしたし、シーズン中は1モデルにつき3足をローテーションで使っていました。
■「見た目より“足に合うこと”が一番大事」―シューズ選びの本質
――選手同士で、バッシュの話ってよくするんですか?
よくありますよ。でも話題になるのは、やっぱりデザインや見た目のことが多いですね。そこでは、ナイキが注目されることが多いです。
ただ、機能性や耐久性の話になると、「やっぱりアシックスだよね」ってなるんです。見た目と中身、どちらも重視したいけど、そこはなかなかバランスが難しいところですね。
――もし学生たちにバッシュ選びのアドバイスをするとしたら?

僕は何より「足に合うこと」が大事だと思っています。ファッション性や見た目ももちろん大事だけど、それは“その次”。僕のように幅広・甲高の足の人もいれば、細めの足の人もいる。だからこそ、実際に試し履きをして、自分の足に一番フィットするシューズを選んでほしいですね。
足に合わないシューズを履いていると、それが怪我の原因にもなりかねません。まずは自分の足にとって安全な一足を見つけること。おしゃれなデザインは、それが叶った上で楽しめばいいと思います。
――実際、太田さんは18年間のキャリアで大きな怪我は?
軽い捻挫くらいはありましたが、大きな怪我は本当に少なかったんです。それも、しっかりと自分に合ったシューズを選んできたおかげだと思っています。
僕には娘が2人いるんですが、小さい頃から「ちゃんと足に合った靴を履かせる」ことを大切にしてきたんです。娘2人はバスケはやっていませんが、幼稚園の頃から、おしゃれだけど足に合う靴を選ぶようにしていました。
子どもは日常的に走ったり跳んだりしますよね。合わない靴を履くと、足が痛くなるだけでなく、膝や腰にまで負担がかかってしまう。膝が内側に入って、将来的に怪我をしやすくなるリスクもあるんです。だからこそ、体の基礎ができる子ども時代こそ、しっかりと足元に気を使ってあげてほしいですね。
■「派手じゃない。でも一番大事」―“学生時代に戻れたらやっておきたいこと”
――もし学生時代に戻れるとしたら、今どんな練習やトレーニングに力を入れたいと思いますか?

体幹トレーニングやコアトレーニングを、もっとしっかりやっておけばよかったなと思います。
筋トレっていうと、ダンベルを持ったりバーベルを担いだりといった“重いものを持ち上げる”イメージが強いと思うんですけど、僕が言っているのはもっと地味で、身体の使い方を整えるようなトレーニングです。
たとえば、腕を上げるときも肩甲骨をしっかり動かして使うとか。
実際、僕も現役時代に肩の不調を感じることが多くて、「動かし方の癖をもっと早くからつけておけばよかった」と何度も思いました。肩が引っかかる感じがあって、リハビリに時間がかかることもあったので……。
だから、若いうちに身体の正しい動かし方を身につけることって、本当に大切だと思います。派手ではないけれど、土台になる部分ですから。
――今はYouTubeなどでも情報が豊富にありますよね。

今はYouTubeでもSNSでも、いろんなトレーニングや身体のケア方法を学べます。僕の学生時代は、まだインターネットも普及してなくて、高校でようやく「ガラケー」が出始めたくらい。中学時代はポケベルでした(笑)。
当時は本当に情報がない時代だったので、今の子たちがちょっと調べれば出てくるようなことすら、僕らは知らなかった。だからこそ、今の学生たちには「知ったら、ぜひ一回やってみてほしい」と伝えたいですね。やって損はないですから。
■「緊張を味方につける方法」―伝えたい“舞台で力を出すコツ”
――学生たちが大会や大舞台で緊張せず、自分の力を発揮するにはどうしたらいいと思いますか?太田さんなりの秘訣があれば教えてください。
秘訣ですか……。僕の場合、ルーティンを“あえて作らない”のがルーティンだったんです。
「同じことをしないとパフォーマンスが出ない」っていう状態になるのがイヤだったんですよね。だからこそ、特定の決まり事を作らず、毎回新鮮な気持ちで試合に臨むようにしていました。
――とはいえ、緊張はどうしてもありますよね?

もちろん、ありますよ。緊張をほぐすために一番手軽で効果的なのは「大きな声を出すこと」だと思います。ベンチからでもいいし、試合前のアップでもいい。とにかく声を出す。最初は恥ずかしくても、声を出していくうちに自然と試合に集中できるようになるんです。
それと、緊張を吹き飛ばす“最強の方法”は失敗すること。僕もそうだったんですが、試合の序盤に思い切ってプレーして、たとえそれが失敗しても、「もう開き直るしかない」って気持ちになれる。そこから調子が上がっていくことがよくありました。
――最初の失敗が流れを変えるんですね。
逆に、「失敗しちゃダメだ」「絶対うまくやらなきゃ」って思いすぎると、どんどん動けなくなっていく。だからこそ、「失敗してもいいから、まずやってみよう」「次があるさ」くらいの明るく前向きなマインドがすごく大事だと思っています。
■「地元に根を張り、未来を育てる」―描く“第二のキャリア”
――先シーズンで現役を引退されましたが、現在は三遠のフロントスタッフとして、引き続き活動をされています。改めて、引退後の展望についてお聞かせください。
僕自身、地元の高校に通って、プロでもずっと三遠一筋で18年間プレーしてきました。もっと言えば、バスケットボール人生のほとんどを三遠地域で過ごしてきたんです。
一度は高校卒業後に関東へ出た時期もありましたが、やっぱり最後は地元に戻ってきた。
だからこそ、これからは「地元に根を張って、次の世代を育てたい」という想いが強いですね。
――具体的には、どんなビジョンをお持ちですか?

たとえば、小さな頃からここでバスケットボールを始めて、ずっと地元で成長していく―それって実は簡単なことじゃないんです。全国には素晴らしい指導者がたくさんいて、「あの人のもとで学びたい」と県外に出ていく選手も当然いる。でも、最終的に“この場所で夢を叶えたい”と思って戻ってきてくれる子が育ったらうれしいですね。
地元の選手って、やっぱり地元の人たちにとって特別な存在なんですよ。高校野球でも、地元の選手が出ているだけで、自然と応援に熱が入る。僕がそうだったように「この場所で育ち、この場所でプレーしたい」と思ってもらえるような、そんな次世代の選手たちを育てていきたいです。
そのうえで、三遠ネオフェニックスというクラブが、この地域全体を盛り上げていく存在であれたらと思っています。
本編はB.LEAGUE公式Webマガジンにて
太田敦也 フランチャイズプレイヤーが語るB.LEAGUEの10年 vol.4「三遠一筋18年の軌跡。ブースターと共に歩んだ日々、そして恩返しへ」
https://www.bleague.jp/bmagazine/detail/id=543087
ザック・バランスキー フランチャイズプレイヤーが語るB.LEAGUEの10年 vol.3「東京で選ばれる存在に…アルバルカーズとの絆、未来への思い」
https://www.bleague.jp/bmagazine/detail/id=542609
水戸健史 フランチャイズプレイヤーが語るB.LEAGUEの10年 vol.2「地元に残り続ける理由とファンへの感謝、そして北陸の象徴として描く富山グラウジーズの未来像」
https://www.bleague.jp/bmagazine/detail/id=542600
遠藤祐亮 フランチャイズプレイヤーが語るB.LEAGUEの10年 vol.1「育成契約からキャリアをスタート“BREX NATION”と一緒に歩んだBリーグ10年」
https://www.bleague.jp/bmagazine/detail/id=541816
【写真】鈴木元徳
【文章】池田鉄平