梅雨が近づき気温や湿度が高くなると、山域によっては「ヤマビル」の被害に遭うことがあります。登山やトレッキング、ハイキングといった山でのアクティビティを楽しみたい時は、事前の対策が欠かせません。
とはいえ、ヤマビルがどのような生物か知らないと、有効な対策を行うのは難しいでしょう。
ここでは、山遊びの際に行いたいヤマビル対策や、万が一噛まれた際の対処法をご紹介します。
【目次】
■【基礎知識】事前に知っておきたいヤマビルの生態
■ヤマビルに噛まれないための対策方法
・肌の露出を防ぐ
・荷物を地面に直置きしない
・地面に直接座らない
・専用のスプレーをかけておく
■ヤマビルに噛まれた時の対処法
・スプレーや塩をかける
・爪でヒルの吸盤をはぎ取る
・傷口を洗う
■ヤマビル対策を万全にして山のアクティビティを楽しもう
■【基礎知識】事前に知っておきたいヤマビルの生態

ヤマビルとは、吸血性の陸生ヒルの一種です。日本国内では東北地方から沖縄まで、幅広い範囲に生息していて、日の当たりにくい湿った環境を好みます。活動時期は4~10月頃と長く、気温と湿度が高い蒸し暑い日は特に活動が活発になります。
人間の血を吸う生き物の代表としてカ(蚊)がいますが、ヤマビルはカのように刺すのではなく、アゴを使って皮膚を傷つけ、傷口から出てきた血を吸うのが特徴です。
吸血中に痛みは感じないので、いつの間にか血が出ていたというケースも珍しくはありません。
噛まれると長時間血が止まらず、時間が経ってから腫れやかゆみといった症状が現れることもあります。
ヤマビルが直接病原体を媒介して感染症を引き起こすリスクは低いとされています。ただし、傷口から細菌が入り込む「二次感染」の恐れがあるため、噛まれた後の衛生管理には注意が必要です。
■ヤマビルに噛まれないための対策方法

ヤマビルは体が3cmほどと小さいうえに、吸血中は痛みを感じさせないヒルジンという物質を出すため、血を吸われていることに気がつきにくいものです。
ヤマビルの被害を防ぐには、大前提として噛まれないようにすることが大切です。
登山やトレッキング、ハイキングなどの際は、山に入る前に次のような対策を済ませておきましょう。
・肌の露出を防ぐ
ヤマビルは衣類を破ってまで吸血してくることはほとんどありません。肌の露出を防げば、ヤマビルに噛まれるリスクを大きく減らすことができます。
長袖や長ズボン、手袋、帽子などを着用して、できるだけ肌の露出を防ぐことが大切です。ズボンの裾を靴の中に入れて隙間をなくすと、足元から服の中に侵入される心配を減らせます。
目が粗い靴下だと隙間から吸血される恐れがあるため、厚手の靴下を着用しておくと安心です。
気温が高いなどの理由でショートパンツを履きたい時は、タイツやストッキングで露出を防ぎましょう。肌が見えやすい首回りにもタオルを巻いておくと、効率的に隙間を塞げます。
・荷物を地面に直置きしない
ザック(リュック)などの荷物を、地面に直置きするのは避けましょう。地面をはっているヤマビルがザックに飛びつき、そのまま人に張り付いてくる恐れがあります。
どうしても荷物を下ろして休憩したい時は、カラビナとロープでザックを木に吊るすなど、地面に置くのを防ぐ対策を施しましょう。
また、荷物を持ち上げる際はヤマビルが付着していないかどうかを確認しておくと安心です。
・地面に直接座らない
休憩中に地面に座ったり、膝や手をついたりするのを避けることも大切です。休憩する際は、地面に息を吹きかけたり、足踏みをしたりしてヤマビルが近くにいないかどうかを確認しておきましょう。
ヤマビルがいる場合は、別の場所に移動して休憩すると安心です。
また、気をつけていたとしても、いつの間にかヤマビルに噛まれているかもしれません。移動中もこまめに、ヤマビルがついていないか確認することを心掛けましょう。
・専用のスプレーをかけておく
ヤマビルを寄せ付けないために、忌避剤入りの専用スプレーを活用するのもおすすめです。衣類や荷物にスプレーをかけておけば、ヤマビルの被害を防ぎやすくなります。
専用のスプレーではなく、濃度20%以上の食塩水やディートが30%配合された虫よけスプレーも効果的ですが、ディート30%配合の製品は12歳未満の子どもに使用できない点には注意してください。
足元から侵入するケースが多いので、靴下に塩をつけておくのも有効です。
ただし、食塩水を吹きかける方法は衣類の傷みが早くなったり、金属部分がさびたりする原因になります。食塩水で対策する際は、帰宅後すぐに塩を洗い落とすことを徹底しましょう。
■ヤマビルに噛まれた時の対処法
どれだけ対策をしていても、ヤマビルに噛まれるリスクをゼロにはできません。万が一ヤマビルに噛まれた際は、次のような方法で対処しましょう。
・スプレーや塩をかける
体にくっついているヤマビルを無理にはがそうとすると、口部分が残って傷口の化膿などにつながる恐れがあります。手で無理やり引っ張るのは避けましょう。
ヤマビルがついている場合は、専用のスプレーや食塩水、塩などをかけてヤマビルを落としてください。
食塩水や塩を使ってヤマビルを落とした場合は、衣類やザックに付着した塩をしっかり洗い流すことも心掛けましょう。
・爪でヒルの吸盤をはぎ取る
スプレーや塩がない時は、アルコール除菌剤をかけるか、指先や爪でヒルの吸盤をはぎ取るようにして対処してください。従来言われていた「火で炙る」方法は、火傷の危険やヒルが吸血内容物を逆流させるリスクがあるため、現在は推奨されません。
はがす際にヤマビルが吸血した血を吐き出す恐れがあるため、他の人が対処する際は手袋などを着用しておくと安心です。
また、吸血したヤマビルは産卵ができる状態になります。個体の増加を防ぐために、はさみで切ったり、塩やスプレーをかけたりして確実に駆除しておきましょう。
靴で踏むだけでは駆除できない可能性があるため注意が必要です。
・傷口を洗う
ヤマビルが吸血時に出すヒルジンという成分が残っていると、血が止まりにくくなります。ヤマビルを引きはがしたら、傷口を入念に洗い流しましょう。
しっかりと傷口を洗うことで、かゆみなどの症状を抑えることも可能です。
抗ヒスタミン成分を含むかゆみ止めを塗り、清潔なガーゼや絆創膏で強めに圧迫して止血します。ヒルジンが効いている間は血が止まりにくいため、厚めのパッドを当てておくと安心です。
症状が続いたり、熱や発疹が治まらなかったりする場合は、皮膚科を受診して指示を仰いでください。
■ヤマビル対策を万全にして山のアクティビティを楽しもう
ヤマビルは、気温と湿度が高い時期に活発に活動し、気がつかないうちに血を吸ってくる厄介な存在です。命にかかわることはありませんが、出血が長引いたり、傷口から細菌が入って感染症にかかったりするリスクがあるため、しっかりと対策を済ませておきましょう。
ヤマビルは、日本各地のさまざまな山域に生息しています。ご紹介した内容を参考に、山に行く前にヤマビル対策を行ってみてはいかがでしょうか。
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【監修】甲斐沼 孟(医師)
【文章】アルペングループマガジン編集部