<Road To HAKONEから見るシューズ事情>古豪明治大学体育会競走部、箱根駅伝経験者5名の足型測定にみるシューズ選びとは?

■箱根駅伝を目指すアスリートランナーの足の真実 とは?

 

実は先日、来年の箱根駅伝本戦出場を目指す明治大学体育会競走部にお邪魔して、エース格5名の足型計測をしてきました。

私が、なぜ古豪明大の合宿所まで押しかけたのかというと、

 

・アスリートとは言え、一般の市民ランナー同様に足の持つ特徴が故障との関係があるのではないか?

・アスリートとは言え、その足の持つ特徴をカバーするシューズでの対策が必要で、それが実際できているのか?

 

そんな仮説の下、自分の知見のためにも、言わば興味本位でやってきたという感じですね。
また、今回

 

・アスリート=軽量なシューズのみの使用

 

といったイメージのランナーの“常識“をきっと覆すことができると踏んでいました。彼らだってゆっくり走るジョグが圧倒的に多いわけですから、画面に映っていないところではみなさんと同じようにサポート性の高いデイリートレーナーを履いています。

 

むしろ、かなり意識してしっかり履き分けていましたので、その辺りの彼らの「シューズの履き分け事情」はもちろんのこと、反面、足型やアーチの問題など市民ランナーと同じ問題も抱えていたことも事実で、今回その辺りをこの場を借りて共有したいと思います。

 


■箱根オリジナル4復活を目指す明治大学

 

 

ちなみに、明治大学はあの金栗四三さんが発案してスタートした箱根駅伝第1回大会に出場した、いわゆる「オリジナル4」と呼ばれる古豪。

 

総合優勝7度を誇る名門なのですが、近年は優勝からは遠ざかっていて、昨秋の第101回箱根駅伝予選会は12位で7年ぶりに本戦出場を逃してしまいました。

 

そして、今季からはソウルアジア大会1500mの金メダリスト、元東京国際大総監督の大志田秀次さんが監督に就任、創立150周年となる32年箱根駅伝で83年ぶりの優勝を目指すプロジェクトが進行中。

 

そんな中、今回急で無理なお願いであるにも関わらず、監督はじめ選手も快く引き受けて頂けて、ほんと感謝です。

 

さて、今回足型計測させて頂いたのは、トップレベルの大学アスリートの象徴5000m13分台の自己ベストを持った5名のランナーです。早速彼らの足型の特徴を見ていきましょう。

 


■5名の足型計測の詳細を解剖

 

 

やはり長距離ランナーということ小柄でスラっとした体格、5名の足の平均サイズ は、

 

・右が248.4mm、左が249.0mm

 

と一般的な20代前半の学生よりサイズは小さいかもしれません。
また 足幅の平均サイズは

 

・右が238.6mm、左が240.0mm

 

とこれはJIS規格のサイズ表でいうところのDウイズになり、やはり体格に比例してやや細みの足型であることが分かります。この辺りは私のイメージで通りでした。

 

しかし、もっと足型計測の中身をもっと深堀すると、「足の剛性と柔軟性」には差がありました。

 

「足の剛性と柔軟性」とは、この重力下では立つと荷重され足が大きいサイズになり、座ると荷重がかからず小さくなることが普通ですが、実はこの差=潰れ方には個人差があります。

 

差が大きい、足の変形が大きい「柔らかい足」の方は、この変形により足が捻れる伸長ストレスが生まれて、筋バランスの不良や関節可動域への影響がある、いわゆる過回内(オーバープロネーション)の足です。多くの方がコンディショニングにおいてはシューズの選びで、もうひと工夫することや普段履きでのインソールなど対応が必要です。

 

逆に変形が少ない足型の方もいます。こちらは剛性が強い足型で「硬い足」、筋的には強く、基本的にはしっかり立っている頑丈な足型で、必要以上に強い剛性は不要で、クッションに代表されるような柔軟性がシューズに求められる要素になります。

 

基本的にそのランナーの足の剛柔を、トレーニングの目的や用途によってシューズが補完しているわけです。

 


■AさんとBさんに見る典型的な例

 

ではそのあたり、この日の5名のうちのAさんとBさんがちょうど典型的な例で対照的な足型でしたので、彼らの比較からシューズ選びまで見ていきましょう。

 

Aさんは写真のように足の姿勢は踵の骨(踵骨)が内側に倒れる過回内の足。立つと足のアーチが潰れて、立ち座りのサイズの変化は、右では足長8mm、足幅で10mmととても大きな変化がありました。開張足傾向で横アーチ、縦アーチとも力強さがありません。

 

足首以下の剛性が少なく、足のアライメント(骨の配列)を悪くしていて足の機能性が引き出しにくく、関節などへのストレスもある立ち方と言えます。

 

実際彼は故障から復活途上中で、やはり故障が多い選手とのことです。実は足元のクセ、特徴と故障の因果関係は完全には証明されていませんが、現状の履き分けに、更なるシューズの対応が必要のようです。


 

Aさんの足型

 

 

Bさんの足型

 

一方、Bさんはその逆でしっかりと立っているやや硬めの足の代表。踵骨が外側に向いている回外足の足です。

 

立ち座りのサイズの変化が、右では足長0mm、足幅で2mmとAさんとはまるで対照的な最小変化で剛性が強い足でした。実際Bさんは故障歴がほぼないとのことで、硬い足は、いわば頑丈な足とも表現でき、怪我が少ないのはそういう側面もあったと感じます。

 

毎日多くの距離を走って、足を地面に叩きつける大学アスリートの足は、剛性の強い足が多いのかなと想像していましたが、過回内や外反母趾には遺伝のような先天要素もあり、同じ5000m13分台スーパー大学生でも足型は対照的であったのは、我々のシューズ選びでも参考になる点です。

 


■Aさん、Bさんのそれぞれの足型との付き合い方

 

問診すると、Bさんは、実は、ゆっくりのジョグなどはペガサス 41とボメロ 18を履き分けるというナイキの考えるお手本通りの履き分けをしていました。足型も頑丈なのですが、その履き分けも故障との関係がゼロではなさそうです。

 

一般論的に彼のような剛性のある足のランナーは、一旦壊れると治りにくい足の印象。市民ランナーの方でも、アキレス腱炎や足底筋膜炎に悩まされ、慢性化している足の剛性が強いランナーは散見しますが、まさに彼のようなケアは模範になりますね。

 

また、Aさんは足が柔らかい足ですが、それ自体は悪いことではないです。シューズから踵回りを中心に構造的な剛性をもらえればコンディショニングは高まりますから、やはり、ゆっくりのジョグや距離走のようなトレーニングで重心移動が活発でないスピードこそ、デイリートレーナーから剛性をもらった方が良いはずです。

 

ですから、彼には現在履いているボメロ 18に加えて、ミッドフットサポートシステムが内側に配置されているスタビリティートレーナーであるストラクチャー 26の使用をアドバイスしました。それはまた、前足部に接地感があるストラクチャーとロッカースタイルのボメロの組み合わせは履き分け効果を更に効果を高めることにもなり、コンディションが高まることを期待したいです。

 


■アスリートの彼らの履き分けは徹底されている

 

これは大志田監督の指導なのでしょう、明治大学の学生アスリートは実にしっかりと履き分けをしている、その印象が強いです。

 

当然ですが、彼らのレースデイシューズばかりに注目が集まってしまいがちですが、実際5000mで13分台のランナーの彼らは、トレーニングの用途や目的に応じて、実にこまめに履き分けをしていました。

 

・アスリートは軽いシューズで全トレーニングをしている
・箱根駅伝本番で使用するシューズをいつも履いている

 

というようなイメージを持っている人はかなりの誤解です。

 

明治大学の学生は、ジョグでは基本的にペガサス 41とボメロ 18を履き分けている学生がほとんどでした。上述通り、この2足を履き分けることは、ややガイドや構造が違う2足になり履き分け効果も高い組み合わせになる、まさに市民ランナーにもオススメの使い方ですね。

 

テンポアップペースはペガサス プラスや初代ストリークフライ、そしてレースデイはヴェイパーフライ 4、アルファフライ 3、トラックではドラゴンフライ 2という具合に実に使い分けています。

 

アスリートだから、という話ではなくて、怪我予防、更にはトレーニング効果を高める意味でもこの習慣はとてもよく、市民ランナーにも参考になるはずです。

 


■アスリートもコンディショニングにはシューズも重要

 

 

今回、5名を調査すると足首姿勢は5名中2名が回内(過回内)、2名が回外、1名がニュートラルという見立てでした。これは市民ランナーの足型の分布とほぼ同じかなと感じました。また、更に私の仮説通り、足首以下(距骨下関節)のクセと故障の因果関係はあるように思いました。5名のうちの過回内の2人に結局、彼らに故障が多かったですからね。

 

コンディションには栄養面はもちろん、フィジカルを高めるような努力も必要ですが、その点、彼らは股関節稼働回旋をチェックしても、トレーニングできる要素はとてもレベルが高いそんな印象です。

 

反面、アスリートとは言え、足首以下(距骨下関節)のクセに遺伝など先天的なものも含まれることもあり、シューズ選びに関してはアスリートも市民ランナーと全く同じだったということです。

 

レースデイに履くシューズにはコンディション要素はありません。言わば、レースデイシューズはコンディションがいい状態の時に履くシューズとも言えます。

 

例えば、ジョグでリカバリーランが目的でそこにシューズ選びのミスジャッジがあれば、レストジョグがレストになりません。心臓は休んでいても、昨日のワークアウトとした筋肉と同じところに負荷がかかるシューズは、筋的にはレストになっていないかもしれません。

 

履き分けをしていないランナー、怪我が多いランナーは、今回の学生アスリートの事例や履き分けを参考にして欲しいと思います。足の姿勢やクセによっては、シューズに対しても更なるニーズがあることを知ってほしいですね。

 


<著者プロフィール>
ランニングシューズフィッティングアドバイザー
藤原岳久(FS☆RUNNING(旧 藤原商会)代表)

 

日本フットウエア技術協会理事
JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師
足と靴の健康協議会シューフィッター保持

 

・ハーフ1時間9分52秒(1993)
・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
・富士登山競走5合目の部 準優勝(2005)

 
【文章・写真】藤原岳久

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