■進化し続けるシリーズ「MIZUNO WAVE RIDER (ミズノ ウエーブライダー)」は変わった
1997年に北米市場戦略商品としてスタートしたその歴史は、ついに29作目となり、MIZUNO WAVE RIDER 29(ミズノ ウエーブライダー29:以下、WAVE RIDER 29)が発売されました。
当時日本では「薄底系競技志向」のシューズが強く、実際、「ちょっと重い」「柔らかすぎる」という声もあって、逆に、日本より「快適に毎日走れるトレーナー型」のニーズの方が強いアメリカで評価が高かったモデルなんですよね。
そんな日本人ランナーも時代とともに、体格も変わり、路面環境も変わり随分習慣が変わりました。デイリートレーナーであるこういったWAVE RIDER 29を選ぶ文化が定着、結果このウエーブライダーシリーズも29代続く超ロングセラーになったわけですね。
今回は、このシリーズの “伝統的なニュートラル・デイリートレーナー”のイメージを保ちつつも、かなり刷新したWAVE RIDER 29は、どんな特徴があって、どんなシーンに合うシューズで、どんなランナーにフィットするのか、では早速解説していきましょう。
■ MIZUNO ENERZY NXT採用、ソフテストエバー

今回のWAVE RIDER 29では、前作ではヒール部分ボトム層の一部のみの使用であった「MIZUNO ENERZY NXT (ミズノ エナジー ネクスト)」をフルレングスで使用しています。このウエーブライダーシリーズは、「WAVE PLATE(ウエーブ プレート)」とセットで「安定感」がテーマのシューズ、それが今回一歩踏み込んで「コンフォート」に軸を置いた「安定感」を目指したシューズに舵を切りましたね。
もちろん硬度などは調整されていますが、MIZUNO NEO VISTA 2(ミズノ ネオビスタ2)にフルレングスで使われている「MIZUNO ENERZY NXT」の使用ですから、ライダー史上ソフトエバーな仕上がりになっていますね。
「MIZUNO ENERZY NXT」はEVAをベースに、スーパークリティカル(超臨界発砲)で作られたもの。これは、液体と気体の境界がなくなる臨界状態で特殊なガスを利用し、ミッドソール内部に微細な気泡を形成することで、軽量性・反発性・耐久性を兼ね備えたミッドソールを実現する製造技術です。
広くミッドソール素材として使われてきたEVAという馴染みの素材もこの技術のおかげで復活した言わば最新技術と言えますね。その成果もあり、前作はメンズ27.0cmで約280g、今回は265gと軽量化しています。
■「WAVE PLATE」は形状も役割も変化

お馴染みのWAVE PLATEも素材と形状を見直して、ミッソール全体の印象を変化させないクッションと一体感があるスタイルに徹底されています。前作よりWAVE(波)も緩やかに、そして中足部に集中して配置されていて、特にヒール部の剛性を支配するようなプレートは、中足部でシューズのねじれをコントロールするようなミッドソールとの一体感を重要視した構造になっていますね。
しかし、ミズノ史上ソフトエバーなクッションでありつつ、このプレートが「安定要素」を発揮して、全体をまとめあげていることは間違いありません。
その素材自体も、前作までのミズノがトラックスパイクなどで得意とする技術ナイロン系からウレタン系プレートに変更されているようです。
ナイロンよりも剛性が低く、カチッとした反発は弱まるものの、成型の自由度が高いので、ソール形状に合わせて厚みや硬さの調整がしやすい素材、いわゆる安定要素をある種の“硬さ”で剛性を作り出すのではなく、WAVE PLATEが、ソフトなクッションの沈み込みを抑える 役割に徹して、ミッドソールとの調和を生み出している感じですね。
また、今回はソールドロップ(前後の高低差)も12mmから10mmに変更されています。「柔らかく快適なクッション性を重視した設計」「ドロップを下げて現代的な走りを意図した設計」をまさにこの「WAVE PLATE」がまとめあげているというわけです。
■アッパーも感じもいつもと違う

そして、今回そのフィット感も、全体剛性を強めないカッチすぎない感覚に変わっています。特に前足部と甲まわりに余裕を感じるフィット感ですが、ヒール部をカッチとするメリハリのあるフィット感。
採用された素材「ジャガードエンジニアードメッシュ」は、近年多くのブランドで採用されていますが、単純な一枚のエンジニアードメッシュよりも、足の動きに応じて「伸びやすい」「伸びにくい」をゾーン設計して同じ生地内で作れるジャガード織りのフィット感・通気性・補強性を一体化できるメッシュアッパーなのです。
またシュータン(ベロ)はガセット状の一体式のものになっていて、それもアッパー素材とコンビでフィット感を高めていますね。
そして、アッパーの両サイドにデザインされる波型模様の「RIDE THE WAVE」デザインもいいですよね。
■それでも変わらない「ライダーの役割」、シンプルイズベスト

そんな大幅なアップデイトがあったライダーですが、「ミズノが誇るベースシューズ=誰でも履ける万能トレーナー」という役割自体はブレず、今までと使う用途や、フィットするランナーに変わりはありません
役割そのものは変わらず、むしろ最新技術を反映して「より多くのランナーが使いやすいベースシューズ」として進化した形です。
今回も、はじめてのランナーからサブ3ランナーが安心して使える「軸のシューズ」、はたまたサブ4ランナーのレースシューズとして、日常のジョグからテンポランまで対応できるニュートラルな「DO IT ALL」トレーナーとなっていますね。
このライダーを中心に WAVE SKY、WAVE REBELLION、NEOなどミズノの上位/派生モデルが位置づけられていると言っても過言でありません。まさにミズノのベースシューズなわけですね。
価格は16,500円から17,600円と控えめに上がりましたが、コストパフォーマンスの高いモデルになっていますので、今回も皆さんにはマストで試してほしいモデルですね。
【MIZUNO WAVE RIDER 29特集ページ】
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<著者プロフィール>
ランニングシューズフィッティングアドバイザー
藤原岳久(FS☆RUNNING(旧 藤原商会)代表)
日本フットウエア技術協会理事
JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師
足と靴の健康協議会シューフィッター保持
・ハーフ1時間9分52秒(1993)
・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
・富士登山競走5合目の部 準優勝(2005)
【文章・写真】藤原岳久