去年も話題になったし、案の定、今年もネット上では賛否両論が飛び交った。
高校サッカーにおける、ロングスロー問題である。
「ルールに則っている以上、何が問題なのか」と賛成派が言えば、「あんなことをやっていたら世界に通用しない」と否定派が反論する。ま、それぞれにはそれぞれの言い分があり、それをぶつけあうのもスポーツの楽しみの一つ、と外野から楽しませてもらっている。
ただ、昔だったら、自分はゴリゴリの否定派だっただろうな、とも思う。
日本国内、それも高校生年代であればかなり有効なロングスローも、一歩海の外に足を踏み出せばまるで通用しない可能性が高い。ならば、やるべきではないし、実際、W杯やヨーロッパのトップリーグを見ても、ロングスローに頼っているところはまず見当たらない。一時流行の兆しを見せたハンドスプリング・スローにしても、結局は姿を消していった。よって、反対。大反対。間違いなく、そうなっていた。
いまは、ちょっと違う。
自分がチームを指導する立場だとしたら、たぶん、やらない。やらせない。安易な攻撃パターンに頼ってしまい、若い世代ならではの独創性や創造性をスポイルしたくない、と考えるからだ。
では、相手がやってきたらどうするか。
昔だったら、きっと罵っていた。あんなことしやがって。あれで勝って嬉しいのかよ。まず間違いなく陰で毒づいていた。
いまなら、選手たちにこう言うかな。「これを凌げないようじゃ、世界で戦うなんておぼつかないぞ」
確かに、ロングスローを通常兵器として使う世界の一流どころはまずいない。だが、苦境に立たされた際、パワープレーを仕掛けてこないチームもほとんどない。
ロングスローとは、すなわちパワープレー。それも、相当に正確なパワープレー。
だったら、日本の高校生が攻撃兵器にして使用しても世界に通用しないかもしれないが、防御手段を学ぶことは決してマイナスではない。むしろ、下手をすればW杯以上に1敗が大きな意味を持つ高校サッカーにおいて、容赦ないパワープレーにさらされることは極めて意味のある経験になる。そう考える。
若年層を指導する上で、常に上のレベルのことを考えるのは素晴らしい。「こんなサッカーでは世界に通用しない」という発想自体は、日本サッカー全体が持ち続けていく必要がある。だが、自分自身を鑑みてみると、この発想には一つ、大きな欠点があったことに気付く。
世界のサッカーが、すべて素晴らしいもの、すべて理詰めであるという思い込みである。
この思い込みが真実なのであれば、高校サッカーにおけるロングスローはナンセンスでしかない。自分たちの攻撃兵器にもならないし、守備の方法を学ぶ必要もない。
残念ながら、現実は違う。
カタールW杯で日本と対戦したドイツは、最後の最後、インスイングのCKを蹴ってきた。あれは、明らかに日本のGK権田がハイボールの処理に不安があると見たがゆえのキックだったとわたしは思う。根底にある発想は、ロングスローとまったく同じである。
世界が必ずしも美しいものばかりでない以上、日本国内を美で統一する必要はない。世界に理不尽な力があるのであれば、日本国内にもあっていい。はっきり言えば、世界を目指す指導をする学校がある一方で、そんなものは目指さない、ただ勝てればいい、と考える学校があってもいい。
というか、あった方がいい。その方が、よりストリート・サッカーに近い。最近では、そう考えるようにもなった。
いつかはセレソンに入って世界で活躍する、と夢見る少年がいる一方で、将来のことなど一切考えず、ただ目の前の勝利に固執する少年がいる。いろんな年齢、いろんな人種、いろんな哲学がごっちゃまぜになって路上で行なわれていたのがブラジルのストリート・サッカーであり、ブラジルの強さの源だった。先のことなど考えない選手のラフなプレーと対峙することで、先のことを考える選手の才能も磨かれていった。
すでに日本には、徹底して将来のことを考えた指導がなされるJリーグのユースチームがある。言ってみれば、こちらは輝かしい才能の集まり。だったら、ある意味玉石混淆とも言える高校サッカーでは、必ずしもすべてのチームが世界のことを考える必要はない。
というわけで、ロングスローはロングスローで面白いじゃないか、と考えるようになった最近のわたしである。
ただ、いまのままでは物足りない。
なぜ世界のトップシーンではロングスローが普及しないのか。最大の理由は「通用しないから」ではなく、「可能性を追求する動きがなかったから」ではないかとわたしは思う。ならば、ここは発想を変えて、「世界でやってないから自分たちもやらない」ではなく、「世界でやってないから自分たちがやる」と考えてみるのも面白い。
実際、去年の選手権では、高山学園が「トルメンタ」なる、完全オリジナルなセットプレーを開発し、その規模はともあれ、確実に世界中のサッカーマニアの驚きを誘ったことがあった。ならば、トルメンタと組み合わせるもよし、新たなオリジナルを考えるもよしで、日本ならではのロングスロー・スタイルを開発してみてはどうだろうか。単なるパワープレーを超えた、見る者に驚きを与えるようなユニークなロングスローからの攻撃は編み出せないだろうか。
これはもう、日本の高校生にしかできない気がする。
1つの試合に生活がかかったプロの世界では、よほどの天才的、もしくは狂信的な指導者が出現しない限り、「誰もやったことのないことをやってみる」という発想は出てこない。一方で、プロほどには勝敗が死活問題ではないヨーロッパや南米のアマチュアでは、ロングスローを使ってまで勝とうという発想自体がない。
つまり、日本の高校ほどにはロングスローを成熟させる土壌がない。
そもそも、創成期のサッカーにおいては、スローインは片手で投げることが許されていた。それが禁じられたのは「飛びすぎるから」であり、もし世界中でロングスローが流行するようなことがあれば、FIFAが何らかのルール変更で対処を図ることは十分に考えられる。
反面、「サッカーは点が入らなすぎる」との声を意識してか、かつてFIFAはすべてのスローインをキックで行なわせようとしたこともあった。いわゆる「キックイン」である。おそらくは、「あまりにサッカーが大味になってしまう」との声に屈したのか、FIFAは早々にこのアイディアを引っ込めたが、今後、再び同様の動きが出てこないとも限らない。
いずれにせよ、長いボールを正確に放り込むという行為は、よくも悪くも、サッカーにおいて極めて効果的、もしくは劇薬だと考えられてきた。ならば、ルールで禁止されていないいまは、日本が世界のトップランナーになれるチャンスでもある。
日本の高校生が世界のサッカーを変える。そんなことが起きれば、実に痛快ではないか。
α ELITE
[8200109653-0001-119-7301]
¥12,210
「α ELITE」の在庫がありません。
α PRO
[8200109663-0001-122-7301]
¥9,900
「α PRO」の在庫がありません。
お気に入り一覧
RUNNING
2026.10.16
NEW BALANCE ELLIPSE(ニューバランス エリプス)北海道マラソン2026出走レポート
FOOTBALL
2026.10.15
サッカーのシャドーとは? 役割や必要な能力をわかりやすく解説
OTHER
「すぐに動けそう」なフィット感。渡邉伶音と片峯聡太監督が体感したJordan「TATUM 5」
OUTDOOR
2026.10.14
デュオキャンプで2人だけの時間を過ごそう! 成功の秘訣はギア選び
GOLF
2026.10.13
「もうひと蹴り」で心地よく走る「新世代走り系」 グッと深掘りゴルフギアVol.216 グラファイトデザイン「ツアーAD EK」シャフト編
【バレーボール】オーバーネットとは? よく見る反則の基礎知識
2026.10.10
黒田朝日、新谷仁美が全力応援!日本新記録も誕生!限界に挑む「ADIZERO 5K TOKYO CHALLENGE」
アディダス×アルペンがランナーの挑戦を後押し。「ADIZERO 5K TOKYO CHALLENGE」直前スペシャルクリニック
BASEBALL
2026.10.08
野球のOPSとは? 野球をさらに楽しめるセイバーメトリクスの指標の見方
背番号物語(第8回)~Jリーグの歴史を彩った「9番」を振り返る
2023.09.28
【野球】ボークとは? ルールを知って反則を防ごう
2024.09.13
バレー初心者が知っておきたいプレーのコツとは? コツを掴んで楽しみながらプレーしよう
2019.06.10
ランニングでマメができたらどうする? 原因や対処法・予防法について解説
2025.11.21
<Road To HAKONEから見るシューズ事情>駅伝シーズン開幕!出雲駅伝でのシューズ事情をアイビーリーグ選抜と比較してみる
2026.01.09
シューズから見た2026年箱根駅伝(総評版)
2021.07.19
ランニング中はスマホをどう持ち運ぶ? おすすめの方法やアイテムをご紹介
2021.06.08
キャンプ場でおいしいご飯を食べたい! 必要なアイテムや炊き方のコツ
2023.01.26
メスティンでおいしくご飯を炊く方法とは? 炊き方の手順やポイントをご紹介
2024.02.20
ガレ場・ザレ場とは? 山道の安全な歩き方を身につけよう
2020.07.08
トレッキングとは? 登山との違いや事前に準備したいもの、注意点など詳しく解説
2024.05.16
【女性向け】山登りはおしゃれな服装で楽しもう! 服選びの基本と季節ごとのコーデ例
2019.09.18
【野球】バッティングフォームの基本チェックポイントと練習方法とは?
2019.11.12
カットボールとはどのような変化球? 特徴や投げ方、練習時のポイントを解説
2022.02.21
【野球】チェンジアップとはどんな変化球? 特徴や握り方などを解説
2025.09.11
インフィールドフライとは? 今更聞けない野球の基礎知識
2024.11.11
【サッカー】ドリブル練習はコツを意識すると効率的! 上達に必要な5つのコツ
2019.10.11
サッカースパイクの選び方の基本(スパイクの構造とトレンド)
2019.03.26
【サッカー】ケガの防止にもつながる! スタッドの種類を解説
2019.07.17
【サッカー】リフティングが上手になるコツと練習方法とは?
2023.06.21
都会の中心で輝くAlpen TOKYOのサッカー売場。その規模と品揃えを紹介!
2025.07.05
ゼロトルクパター6メーカー12モデルを徹底分析!それぞれゴルフ5でチェックしよう
2026.08.07
大阪・梅田に「AlpenOSAKA」がオープン! 「ゴルフ5フラッグシップストア大阪梅田」は2フロアで展開
2026.10.07
「スピーダーNX」の新作は“すっぽ抜けない”つかまり系先中調子 グッと深掘りゴルフギアVol.215 フジクラ「スピーダーNXホワイト」シャフト編
2025.08.21
圧倒的な飛び性能。飛距離に全振りした公認球「トブンダ ワンライン」、全12色で新登場
2025.10.23
ゴルフ5限定で「ツアーステージGR」が復活 初心者でも迷わない安心確実の低価格フルラインアップで登場
2020.05.18
腹筋強化にはクランチがおすすめ? 正しいやり方や種類を解説
2026.08.25
【卓球】促進ルールとは? 試合を円滑に進めるための規則を知ろう
2024.02.14
バスケの試合時間は何分? プレーにも役立つルールを覚えよう
2021.07.26
バレーボールのサーブのコツは? 基本のフローターサーブを例に解説
PRODUCTS
2025.05.23
効果バツグン!雨も泥もヘッチャラ!シューズケアの革命『IMBOX』、スポーツデポ・アルペン、ゴルフ5に登場!!
2022.06.01
IGNIOからNewエッセンシャルシリーズが登場! 今年の夏は、街歩きの一軍シューズに!
2024.04.26
Alpen NAGOYAのチェックポイントはここだ!ゴールデンウィークは、Alpen NAGOYAへ遊びに行こう!
2024.11.15
度会隆輝選手、アディダススポーツウェア『standard.1』で魅せる洗練されたスタイルとプロのこだわり
2023.02.17
プロの視点で徹底考察!ニューバランス「THE CITY」を人気スタイリストはどう見るか?