今作から、ナイキのレザースパイク「ティエンポ」は大きく生まれ変わる。
名称は「ティエンポ マエストロ」へ。これまでの“安定感のスパイク”という立ち位置を刷新し、ドリブラーのための一足として再定義された。
戦術が高度化し、プレーがパターン化していく現代サッカー。だからこそ求められるのは、創造性と“予測できないプレー”だ。限られたスペースで相手を剥がし、システムを破る──そのために開発されたのが「ティエンポ マエストロ」だという。
前編では、アルペングループスタッフも参加した試し履きイベントの模様をはじめ、元サッカー日本代表・柿谷曜一朗さんと行ったトライアルセッション、そして後編ではインタビューまで、ティエンポの進化を現場からレポートする。
■イベントの冒頭では、新生「ティエンポ」の世界観を伝えるプレゼンテーションが展開
キャンペーンコピーは、「ATTACK THE IMPOSSIBLE(不可能を抜き去れ)」。
その言葉通り、今作ではアッパー素材からソール設計に至るまでテクノロジーを刷新し、ラインナップ全体がアップデートされている。
新しい「ティエンポ」は、3モデルを内包する
生まれ変わったティエンポのサイロは、プレースタイルに応じて選べる 3モデル構成となった。
マエストロ:ドリブラーのための最先端モデル
リゲラ:クラシックな履き心地と上質レザーを求めるプレーヤーへ
ガト:インドア/ストリート向けモデル
従来ティエンポの“馴染みのある感覚”が好きな方には「リゲラ」。
最先端のレザースパイクを求める方には「マエストロ」。
プレーヤーの志向に合わせて、選び方がより明確になった。
■マエストロ最大の進化は「レザーを再発明したこと」
今作の核となるのが、新開発の「テックレザー」だ。
ここで言うレザーとは、従来の天然皮革ではなく、ティエンポの“素足感覚”を現代的にアップデートするために再設計された新素材を指す。
ラボとテスター検証を重ね、シリーズ史上最も柔らかい素材パッケージを実現。内側レイヤーまで含めて足と一体になるフィット感を追求し、従来モデル比で約10%の軽量化も叶えた。さらに、これまで天然レザーで課題になりやすかった“履き込みによる伸びすぎ”も抑え、長く履いてもフィット感が崩れにくい設計となっている。
加えて、雨天時に感覚が変わりやすいという“レザースパイクの弱点”にも踏み込んだ。濡れた状態でもタッチがブレにくい構造へアップデートし、吸水性も抑えることで、コンディションに左右されにくい一足を狙っている。
“少し重くなった”のには理由がある
27cmのFGモデルで約221g(片方)。前作よりやや重くなっているが、それは明確な狙いによるものだ。
中足部は、内側から足裏まで覆う「360度レザー構造」へ。
さらにねじれや剛性を支えるため、内側にシャーシを追加した。重量は増えた一方で、足裏まで一貫したレザーがボールコントロール時のタッチ感を揃え、どこで触っても一体感のあるボールタッチを実現する。
レザーのカバー範囲は現行モデル比で約17%増。
アッパーも縫い目のない構造とし、縫製による“タッチ感の境界”を減らしながら、ソフトなボールタッチと一体感を両立させている。
そしてトラクション面では、FGモデルにブレード型スタッドを追加し、前方向の蹴り出しを強化。回転や切り返しも想定したスタッド配置により、体重移動をスムーズにし、ドリブルを加速させる設計となっている。
結論としてティエンポ マエストロは、現代サッカーでより重要になる攻撃力/創造性/ドリブルを、最大限に引き出すための一足だ。
■続いて:ティエンポ リゲラ(“慣れた感覚”を最適化する)
一方の「ティエンポ リゲラ」は、デザインも含めて往年のリゲラを思わせる仕上がりになっている。日本市場では今もなおレザーのスパイクを求める選手が多く、最新モデルの機能だけでなく、“慣れた履き心地”を大切にしたいという声も根強い。
リゲラは最新のテックレザーを採用しながらも、アッパー構造やデザインに昔ながらの思想を残し、伝統的な履き心地を現代仕様でアップデートしたモデルだ。
重量はFGで187g(片方)。マーキュリアル エリートとほぼ変わらないほど軽量で、レザーでありながらスピードブーツ級の軽さを実現している。
またリゲラでは、マエストロのような足裏まで覆う360度ラッピング構造はあえて採用していない。それは“本来のリゲラらしい、よりクラシックな履き心地”を提供するためだ。
■トークセッション:柿谷曜一朗が語る「リゲラは裸足に近い」
プレゼンの熱気を引き継ぐように、トークセッションには元サッカー日本代表で日本屈指のフィニッシャーとして知られる柿谷曜一朗さんがゲストとして登場。会場に集まった店舗スタッフや参加者へ、「スパイクの良さとサッカーの楽しさを、短い時間でも一緒に体感してほしい」と笑顔で挨拶した。
柿谷さんが現役時代から愛用してきたのが、ナイキ「ティエンポ リゲラ」。
履き続けた理由として最初に挙げたのは、「とにかく自分の足に合っていたこと」だった。
幼い頃から“デザインのかっこよさ”をスパイク選びの基準にしてきた一方で、見た目だけで選ぶと靴擦れや痛みにつながり、プレーに影響してしまうことにも気づいていったと振り返る。
その中でリゲラは「初めて履いたときに“裸足に近い”と感じた」と語り、タッチやドリブルの際に靴の存在を忘れるほど自然にプレーへ入り込めたことが印象的だったという。「イメージ通りに止められる」「思ったスピードで前に運び出せる」といったボールタッチ面での手応えに加え、足首への負担を抑えながらターンできるグリップ感も、リゲラの魅力として挙げた。
さらに新しいティエンポシリーズについては、復活したリゲラに「僕が引退してから復活するんかい!って思いました(笑)」と冗談交じりに語りつつも、実際に足を入れると“包まれる感覚”と“なじみの早さ”を改めて実感したと評価。履き込むほど素足感覚に近づき、タッチの繊細さが引き出されていく一足だと話した。
また「年間を通して同じ一足で練習も試合もこなすことが多かった」と明かし、ハードな環境でも耐えられる壊れにくさ・丈夫さもリゲラの強みだと強調。会場にも納得の空気が広がった。
■トレーニングセッション:“履いて分かる”ティエンポの一体感
トークセッションの熱気をそのまま引き継ぐように、いよいよピッチへ。
柿谷さんが実際に「ティエンポ マエストロ」と「リゲラ」を履き、参加者とともにトレーニングセッションをスタートさせた。
「スパイクを履いて、“これ自分に合ってるな”って確かめるために、僕も現役の頃こういう練習をしてました。今日はその感覚を、みんなにも味わってもらえたらと思います」
セッションは軽めのウォーミングアップから始まり、足首の可動域や身体のリズムを整えていく。
続くボールタッチでは、止める・運ぶ・預けるといった基本動作を丁寧に反復。参加者からは「タッチが吸い付く感じがある」「軽いのに安定する」といった声が上がり、リゲラらしい“素足感覚”が細かなプレーを後押ししている様子がうかがえた。インサイドでボールを止める瞬間の余計なズレのなさが際立ち、プレーの迷いが減っていく。
ドリブルメニューでは、狭いスペースで方向転換や緩急をつけた運び出しを実施。柿谷さんは「思った通りに運べるかが大事」と声をかけ、ボールの置きどころやタッチの強弱を具体的に示していく。切り返しでも足元はブレにくく、踏み替えのスピードも落ちない。参加者からは「ターンがしやすい」「足首まわりがラク」と、マエストロへの好反応が相次いだ。
そして最後はゲーム形式へ。対人になると、ボールを持った瞬間の判断が速くなる。そこで背中を押したのが、マエストロとリゲラの“扱いやすさ”だった。トラップから次の一歩までが途切れずつながり、参加者からは「迷わず仕掛けられる」「一歩目が出やすくてテンポが上がる」と前向きな声も。履き心地を確かめるだけでなく、“プレーが攻めに変わる感覚”を体感できる時間になっていた。
トークで語られていた“裸足に近い感覚”と“タッチの安定感”。その言葉が、実際のトレーニングを通して確かな手応えへと変わっていく中で、トライアルセッションは終了した。
> 後編へつづく
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