前編では、アルペングループスタッフも参加した試し履きイベントの模様をはじめ、元サッカー日本代表・柿谷曜一朗さんと行ったトライアルセッションの模様をお届けしたが、後編では、柿谷さん自身が語る“プレーとスパイクの関係”、そして次世代へ届けたいメッセージへと続く。
> 前編はこちら
――今日、実際に「マエストロ」と「リゲラ」を2足履かれてみて、印象はいかがでしたか?
正直、「うわ、すごい!」って驚くというよりは、「やっぱこれだよね」っていう安心感が強かったです。もう履き慣れたスパイクですし、現役の頃からずっとお世話になってきた相棒みたいな存在でもあるので。自分がやりたいプレーを、そのまま出させてくれる。そういう感覚が、改めてありましたね。
これを履いて、次の世代―子どもたちも含めて、また「このスパイクが好き」って思う選手が増えてくれたら嬉しいです。
――これまでもずっと「リゲラ」を履かれていたと思いますが、今回進化を感じた部分はありましたか?
僕の中では、ティエンポとリゲラって結構“別物”でした。ティエンポはクッション性があって、リゲラはもっとスマートでスピード感があるイメージ。
でも今回のスパイクは、その両方のいいところがうまく合わさっている感覚がありました。
これまでは「どっちを選ぶか」だった良さが、今回は一足の中にまとまっている印象です。
タッチは繊細に出せるし、少しクッション性がある分、ボールへのインパクトも伝えやすい。
素足に近い感覚がありながら、スパイクとしての機能性もしっかりある。その“ちょうど間”を取れているからこそ、自分の技術を活かしやすい一足に進化したなと思いました。
――柿谷さんにとって、スパイクは現役時代からどんな存在でしたか?
もちろん、機能性は大事です。でも「このスパイクを履いたからサッカーが上手くなる」っていうものでもないと思っていて。
結局は、自分の感覚があって、その感覚にスパイクがフィットして、初めてプレーが完成する。サッカーって“足でボールを蹴る”スポーツだからこそ、靴の違いがプレーに直結しやすい。そこが他の競技とは少し違うところだと思います。
だから、自分に合った一足を選ぶのはもちろん大事だし、履いた瞬間に気合いが入るとか、気持ちが乗るとか―デザインも含めて大事。スパイクって、僕にとっては「サッカーやるぞ」ってスイッチを入れてくれるものです。だからこそ、なくてはならない存在ですね。
――今日参加しているショップの皆さんは、普段スパイクを接客する立場ですが、柿谷さんがもし店頭で接客するとしたら、どんな選手にこのスパイクを勧めたいですか?
まずひとつ、絶対に言えるのは、膝や足首をケガしたことがある選手には、意識して勧めたいですね。
成長期だとオスグッドみたいな症状を経験する子もいると思いますし、そういう選手って少なくない。スパイクって「いいプレーをするため」だけじゃなくて、ケガをしにくい状態をつくる道具でもあると思うんです。
結局、足に合ったスパイクがいちばんケガをしにくい。フィット感はもちろん、プレー後の足の疲労感とか、タッチの細かさって、そこにちゃんと出るので。
だから、できるなら強度の高い練習で一度試してみてほしいですね。足への負担がどれだけ少ないかって、これから本当に大事になると思います。
あとは「タッチ」という意味でいうと、センターバックやボランチみたいに真ん中でプレーする選手には特に勧めたい。受ける・止めるだけじゃなくて、蹴るのも含めて“タッチ”なので、そこで違いが出ると思います。
ただ一方で、ファントムを履いてる選手って、僕の中ではサイドのドリブラーのイメージもあるんです。デザインのかっこよさも含めて、サイドってファンやサポーターからも見えやすいじゃないですか。だから“切り裂いていく姿”を見せる意味でも、サイドの選手にも勧めたいですね。
――このアルペングループマガジンは部活生もよくみているメディアなのですが、柿谷さんが今だから言える「部活年代でやっておくといい練習」や「理想の選手に近づくための考え方」があれば教えてください。
ボールコントロールの繊細さやタッチの細かさは、練習をただ“こなしているだけ”で身につくほど、簡単なものでもない。
結局、タッチっていうのは―自分の中の「感覚」をどこまで理解できているかだと思います。ボールタッチの練習って、世の中にいくらでもあるじゃないですか。でも大事なのは、「自分のイメージ」と「ボールの勢い」と「置き場所」を、感覚の中で一致させていくことなんです。
高校生くらいになれば、「思った通りに止める」ことは、もうできる選手が多いと思う。
でも、そこが当たり前になったときに次に突き詰めるべきなのは―“止まるまで”をコントロールできているかどうか。
たとえば、ボールが静止するまでに「回転をどれぐらいかけたら」「どの位置に止まるか」まで詰める。こういう練習って、一人でもできるんですよね。この“微々たる差”が、世界との差を埋めたり、高校生同士でも横にいる友達との差をつくる部分なんです。
部活ってみんな同じ練習をするし、仲間だからちょっとふざける時間もある。
でも、そういう時間が積み重なると、差は広がっていく。
だから僕は練習で、「今の自分に合ったレベル」を繰り返すんじゃなくて、もっと上に行くために“同じ練習を難しくする工夫”が大事だと思ってます。もちろん、言われたことを無視しろって話じゃないです。言われたことを100%やった上で、もう一段上げる。そこが一番大事。
僕自身、それをずっとやってきたから、コーチに「スタッフ泣かせ」って言われてました(笑)。「それは後でやる」って言われることを先にやっちゃう。でも、それができるようになったときに、一気に伸びるんですよね。だから、効率よくレベルアップしたいなら、“言われた練習を完璧にした上で、自分で伸ばす”。これを部活年代で身につけてほしいです。
――「考える力」って、柿谷さんの強みでもありますよね。それってサッカーを俯瞰して見ていた感覚なんでしょうか?
いやいや、結局はずっとサッカーが楽しい、上手くなりたいっていうだけなんですよ。
でも、言われたことだけをやってたら、結局“言った人の範囲内”の選手になっちゃう。
もっと飛び出したい。「俺、こんなアイディアあるよ」「こんなこともできるよ」って。
そこで自分の可能性を閉じ込めるのは、もったいないと思うんです。
もちろん、基礎ができてないのに次に行くのはダメ。順番や過程が大事なのも分かります。
でも、もし先に挑戦したいなら―練習で黙らせるぐらいのプレーを見せればいい。
人と違うアイディアが生まれるのって、そういう場所だと思うんですよね。だから、どんどん挑戦して、どんどん怒られて。その中でも、基礎は大事にしてほしいです。
――最後に。引退されて1年が経ちましたが、今後のサッカー人生のイメージや展望、抱負があれば教えてください。
僕自身、まだ体は動くので、これからもサッカーには関わっていきたいです。
今回リゲラも出たので、たくさん履かせてもらいながら、自分のプレーも見せていきたいですね。
そして子どもたちに、「サッカー選手になりたい」「サッカーをしたい」「もっと好きになりたい」そう思ってもらえる活動をしていきたい。プレーで伝えるのはもちろん、言葉で伝えることも含めて、いろんな形で届けていけたらと思っています。
あとはやっぱり、日本代表がW杯でどういう結果を残すか。そこは子どもたちの熱量にも直結すると思うので。子どもたちだけじゃなくて、日本代表がきっかけでサッカーを始めた人も含めて、もっと幅広い世代がサッカーに夢中になれるように。そんな活動を続けていけたらいいなと思います。
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