キング・カズが加入!!福島ユナイテッドFCはどんなチーム?

(上記写真:カズ(後列右端)加入で注目度が高まる福島ユナイテッドFC

 

カズこと三浦知良が、2026年からJリーグでプレーしている。横浜FCの一員としてピッチに立った21年以来、5年ぶりに「J」の舞台に立っているのだ。

その所属先が、J3の福島ユナイテッドFC(以下、福島UFC)である。

 

26年2月開幕の明治安田J2・J3百年構想リーグを戦っている福島UFCとは、どんなチームなのか。クラブの生い立ちから現在までを辿る。

 

福島UFCのルーツは、2002年に設立された「福島夢集団」にある。2年後の04年に「福島夢集団JUNKERS(ユンカース)」が設立され、Jリーグ入りを目ざして活動していく。

 

07年には福島県出身の元Jリーガー時崎悠が選手兼監督に就任し、Jリーグ参戦へ向け本格的に動き出す。成長の歩幅を大きくしたのは12年だ。天皇杯でJ2のヴァンフォーレ甲府、J1のアルビレックス新潟を破り(チームのカテゴリーはいずれも当時)、ベスト16まで勝ち上がったのだ。また、全国地域リーグ決勝大会で初の予選突破を果たし、決勝ラウンドへの切符を手にして準優勝。国内のサッカーピラミッドでJ3の下に相当する日本フットボールリーグ(JFL)昇格を決めた。

 

Jリーグは14年からJ3を創設することとなり、初年度からの参入が決定する。同年からJ3を舞台に、地力をつけていった。

 

 

24年から福島を指揮する寺田監督


クラブが新たなフェーズへ突入したのは24年である。川崎フロンターレで選手、コーチとして活躍してきた寺田周平が監督に指名され、ジュビロ磐田からMF針谷岳晃を完全移籍で獲得し、川崎Fから年齢別代表経験のあるMF大関友翔を期限付き移籍で迎え入れると、前年の15位から5位へと躍進する。クラブ史上初となるJ2昇格プレーオフに進出したのだった(準決勝で松本山雅FCと引分け、レギュレーションにより敗退)。

 

寺田監督指揮下で2年目の25年は、白星先行ながら10位に終わった。24年に得点ランク3位に食い込んだ塩浜遼がJ2のロアッソ熊本へ移籍し(26年よりサガン鳥栖)、大関が所属元へ復帰したことなどが、順位を下げることにつながった。

 

J2やJ3のクラブでは、眼を引くような活躍した選手が上位カテゴリーのクラブへ移籍するケースが少なくない。活躍した選手を引き留めるのが難しいなかで、26年シーズンに“キング・カズ”がやってきたのである。

 

Jリーグは26年夏からのシーズン移行へ備え、2月から6月にかけて特別なリーグを実施している。『明治安田百年構想リーグ』がそれで、J2とJ3のクラブは地域性を重視して合計40チームを4つのグループに分けている。福島UFCが属するEAST-Bグループは、北海道コンサドーレ札幌、いわきFC、RB大宮アルディージャ、ヴァンフォーレ甲府、ジュビロ磐田、藤枝MYFCと、J2のクラブが6つを数える。J3のクラブにとっては厳しいグループ分けで、前半戦は2勝7敗と苦しんだ。

 

もっとも、今大会は引分けなしの特別なレギュレーションが採用されている。90分で決着がつかない場合はPK戦が行なわれており、福島UFCは磐田と藤枝にPK負けを喫した。通常のリーグ戦であれば2勝2分5敗だ。カテゴリーが上のJ2のクラブが多いグループでは、健闘していると言うことができる。

チームはセンターラインに太い線が通っている。

 

GKチョン・ソンリョンは、川崎フロンターレで16年から25年までプレーしてきた。韓国代表としてW杯や五輪に出場した経験を持ち、41歳になったもののシュートストップの技術に衰えはない。J3はGKのクオリティにバラつきがあり、上位カテゴリーでも通用する守護神の存在は勝点奪取に直結する。

 

CBの土屋櫂大は、川崎フロンターレからの期限付き移籍だ。181センチのサイズを持つ19歳は、28年のロス五輪出場を目ざす世代である。将来性豊かなこのタレントは、自らもCBだった寺田監督のもとで経験を積んでいる。ショートパスをテンポよくつないでいくチームスタイルでは、ビルドアップはもちろん攻撃にスイッチを入れる縦パスも入れていく。

 

中盤ではキャプテン針谷が存在感を放つ。磐田でプロデビューした27歳は、寺田監督が推し進めるパスサッカーの中心だ。在籍2年目のMF狩野海晟も、様々なエリアに顔を出して攻撃にリズムを生み出している。

 

前線では岡田優希が元気だ。川崎フロンターレU-18出身で、早稲田大学を経てFC町田ゼルビアでプロデビューした29歳は、J3で過去3度2ケタ得点を記録している。3トップの左ウイングを基本ポジションに、ゴール前で決定力を発揮できる選手だ。

 

 

カズはピッチ内外でチームに好影響を与えている(写真は開幕戦)


そして、注目のカズである。

 

横浜FCに所属するカズは、22年から25年までJFLのアトレチコ鈴鹿と、ポルトガル2部のオリヴェイレンセでプレーしてきた。いずれも期限付き移籍である。Jクラブに属するのは、実に5年ぶりとなった。

 

大きな注目とともに迎えたヴァンフォーレ甲府との開幕戦で、カズはいきなりスタメンに名を連ねた。59歳10日での出場は、もちろんJリーグの最年長出場記録である(記録は出場するごとに更新されている)。

 

この試合では、20分でピッチをあとにしている。アメリカのメジャーリーグベースボール(MLB)には、リリーフ投手を先発させて短いイニングで交代させるオープナーという起用法がある。寺田監督がMLBを意識したわけではないのだろうが、この起用法は斬新だった。

 

2節以降はコンディション不良により、メンバーから外れる試合があった。メンバー入りしたものの、ピッチに立つことなく終えた試合もある。

 

それでも、メンバー入りした試合ではピッチサイドから選手を鼓舞し、後半はウォーミングアップを繰り返す。交代で退いた選手を労う。59歳の大ベテランが見せる献身的な姿勢は、チームに一体感を生み出しているのだ。

 

4月19日の第11節、対FC岐阜戦では2度目のスタメンに名を連ねた。前半早々には、直接FKからヘディングでゴールを狙った。21分でピッチを退いたものの、前回の先発出場よりも見せ場を作った。

 

試合に出る、出ないに関わらず、「つねに最高の準備」を心がけるのがカズという選手だ。「出場機会が巡ってきたときに、力を発揮できないのが一番悔しいし、もったいない。そういうことがないように」と、チームの練習を消化したうえで身体のメンテナンスに多くの時間を割く。

 

その徹底した自己管理は、プロフェッショナルとしてのロールモデルだ。カズがいることで、ピッチの内外でスタンダードが上がっていくだろう。

 

カズが抱く勝利への飽くなき思いも、若い選手たちを刺激している違いない。

 

結果が出なかった試合後、カズは「練習から勝ち負けにこだわって、積み重ねていかなきゃいけない」と話す。いつでも自分に矢印を向けるその姿勢が、選手たちの精神的な基準も上げていく。

 

J2のクラブとの対戦が多い明治安田J2・J3百年構想リーグは、福島UFCにとって未来への確かな助走となる。カズ加入の効果が結果に映し出されるのは、もう少し時間がかかるかもしれない。それでも、チームは確実に成長を遂げている。

 

【文章】戸塚啓
【写真】徳原隆元/Football Zone

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