先日、テーラーメイドの最新パターのリリースがあった。
ニューパターは「スパイダーZT」。その注目点は、なんといってもテーラーメイド初の「ゼロトルクパター」ということだ。
ゼロトルクパターは、アメリカ発のパターブランド「L.A.B.パター」をアダム・スコット、ウィル・ザラトリス、リッキー・ファウラーらが使ってブレイクして以来、オデッセイやPXGなど他ブランドからも続々とリリースされにわかに注目を集めている。そのため最近「ゼロトルク」というというワードを頻繁に耳にしている人も多いことだろう。
しかし「ゼロトルク」とはどういうものなのか、どんなメリットがあるのかはまだよく知られていない。そこで今回は「ゼロトルクパター」について、どういった効果があってどういうプレイヤーに合うのか詳しくみていく。

『テーラーメイド「スパイダーZT」は6月27日発売予定』
まず「ゼロトルク」とは、パターのストローク時にフェースが開閉する回転のモーメント(トルク)が生じないことを指す。この説明自体がわかりにくく「どういう意味?」と疑問に思っている人は多いだろう。
これを理解するには、まずパターの重心角について知る必要がある。
パターのシャフト部分を平らな台の上に置き余計な力を加えずにフリーにすると、フェースはそのパター固有の向きを向いて静止する。このときパターヘッドをソール側から見たときに、シャフト軸線を通る垂線に対してフェースが作る角度が「重心角」だ。

『パターのシャフトを水平な台などに置いてみると重心角がわかる』
重心角はストローク中にフェースが閉じようとする回転モーメントを生むため、ドライバーやアイアンなどのクラブでは、重心角が大きいほどフェースを閉じやすい=球がつかまりやすいと考えられている。パターにおいても基本的な考え方は同じだが、球のつかまりよりもストロークとの相性で考えられることが多く、一般的には重心角が大きいパターほど、ヘッド軌道が描くアーク(弧)が大きいストロークと相性がいいとされている。
そしてゼロトルクパターは、この重心角がほぼ0度、つまりクラブをフリーにしたときにトウが真上を向き、フェースが真っすぐターゲット方向を指すパターだ。
そのためプレーヤーがパターに余計なトルクを何も加えなければフェースは閉じも開きもせず、最初にセットした方向そのままに動きやすい。つまり軌道が直線的でフェース開閉の小さい「真っすぐ」なストロークがしやすいパターというわけだ。

『ゼロトルクとは、重心角が0度でフェース開閉のモーメントが生じないのが特徴』
パターの重心角は、ネック形状から受ける影響が大きい。
一般的には、ヒール側にシャフトが装着されているL字型がもっとも大きく、次いでピン型のようなクランクネックや近年流行しているショートスラントネックなどが大きい。ベントネックはこの重心角が0度でフェースが真上を向くため「フェースバランス」と呼ばれ、フェースの開閉をあまり行わないストロークと相性がいいとされてきた。
センターシャフトや、昨年オデッセイから発売された「ジラフ」シリーズのようなロングネックの多くもフェースバランスだ。
しかしフェースバランスも、アドレスした状態からヘッドを持ち上げてみるとわかるが、実はフェースが開く方向へのモーメントが生じているため、本当の意味でフェース開閉のないストロークに向いているかというと疑問が残る。だからこそ真の真っすぐを目指すゴルファーの間で、「ゼロトルク」が注目されているというわけだ。

『フェースバランスはフェースが真上を向くが、まっすぐストロークしやすいかは人それぞれ』
ネック形状で言えば、ゼロトルクはヘッドの重心にシャフトを装着し重心距離も重心角も0にすることで実現できる。
現在発売されているモデルでは、「L.A.B.ゴルフ」のパターをはじめ、テーラーメイド「スパイダーZT」やオデッセイ「SQUARE 2 SQUARE」シリーズ、ベティナルディ「ANTIDOTE」シリーズなどはヘッドの重心に真っすぐのシャフトがそのまま突き刺さっているような形状だ。
このタイプはシャフトの装着位置が従来のパターと比べてヘッド後方に来るため、シャフト軸線に対してフェースが大きく前にある。これを一般的なパターの感覚でそのまま構えると構えに歪みが出やすく、インパクトロフトやフェース向きが狂いやすい。
これを解消するために、多くの場合シャフトを斜めに装着したり、それに伴ってロフト角を多めにする、グリップを斜めに挿すなどしているのがこのタイプの特徴だ。
構える際はシャフトがターゲット方向に傾くようにセットし、クラブがややハンドファーストになるように構える必要がある。

『シャフトがヘッドの重心に突き刺さっているのが大きな特徴』

『「斜め挿し」のパターはシャフトがターゲット方向に傾くように構えるのがポイント』

『普通のパターのように構えてしまうと手元の位置(写真左)やボール位置(写真右)がおかしくなりやすい』
このシャフトを「斜め挿し」する形状は、構えた際に違和感を覚えるゴルファーが多いことから、イーブンロール「ZERO」シリーズやPXG「BatAttackZT」、ピレッティ「ノートルク」シリーズなどは、ネックを設けつつ独特の形状でその違和感を解消する工夫を施している。
とはいえ形状が独特なので、どちらが構えやすいかは好みの問題になるだろう。

『ネック形状を工夫することでゼロトルク化しているパターも』

『PXG「Bat Attack Zero Torque」はグリップにも工夫がある』
ゼロトルクはフェース開閉のモーメントが生じないパターではあるが、これは必ずしも「フェースが開閉しない/しにくい」ことを意味しない点には注意が必要だ。
プレーヤーがフェースの向きを変えずに真っすぐストロークできればパターもそれに素直に従ってくれるが、逆に言えばプレーヤーが開閉動作を入れてしまったらパターがそれを補正してくれることはなく、開いたら開いたまま、閉じたら閉じたままで動きやすいのだ。
そのため従来のピン型やL字型などで自然なアークでストロークしていた人にとっては球がつかまらなかったり方向性が悪くなるリスクもある。
あくまでフェースの向きを真っすぐに保ったままストロークしたい人にとって「パター側からの余計な動きが生じない」ことがメリットになるパターだということを忘れてはいけないだろう。
しかしこの点を理解し、道具の機能をわかったうえで真っすぐのストロークを目指す人にとって、ゼロトルクパターはいままでにない感覚を得られるパターだ。
まずは食わず嫌いをせず、自分に合うか合わないかを、ぜひゴルフ5にて試打して感じてみてほしい。