「100m9秒台」日本人選手2人の対決が、第103回陸上日本選手権で初めて実現した。日本記録保持者(9.97秒)のサニブラウン・ハキーム(20)が勝つのか?または9.98秒の桐生祥秀(23)が勝つのか?当日は平日にも関わらず、会場の博多の森陸上競技場に14,000名もの観衆が集まった。 異様に蒸し暑い。断続的に降る雨。このような状況で選手達が戦うとは、過酷だ。 雨だけでも止んでくれないか。会場に足を運んだ誰もが、そう感じたに違いない。 だが、そう言ってもいられない。日本一になるチャンスなのだから。 ゴールに向かって。より速く。より前へ。 日本全国から選ばれし者が、頂点を目指して戦う。これが、陸上日本選手権。 男子100m予選は6月27日に行われた。優勝候補筆頭のサニブラウンは楽しそうに走り、ゴール後は何事もなかったように会場を後にした。 サニブラウンにとって1番のライバルとなる桐生祥秀は、最後は完全に流していた。 確実に成長し続ける桐生と同期の小池祐貴(24)。終始力強い走りを披露し、先頭でフィニッシュした。 男子400mリレーで活躍する多田修平(22・画像右)は、同組に入った実力派の飯塚翔太(28・画像左)を振り切り、飯塚と共に準決勝に駒を進めた。 準決勝は、予選終了の4時間後に行われた。サニブラウンの強さは、ここでも健在。大会記録タイとなる10秒05を叩き出し、全体1位で決勝に進出した。 小池は桐生に競り勝ちトップでゴール。レース後、2人は翌日の決勝に向けて意気込んでいた。 そして、6月28日の決勝。サニブラウンは「スタートが全然出られなかった」と出遅れたが、加速してスピードに乗ると、あっという間にトップに躍り出た。 桐生と小池も必死に追い上げようとするが、差がなかなか縮まらない。 最後まで誰もサニブラウンを抜き去ることはできなかった。サニブラウンは大会記録更新となる10秒02でフィニッシュし、2年ぶり2回目となる優勝を成し遂げた。しかし、「何とも言えないタイム。もうちょっとスタートをちゃんと出ていれば」と、不甲斐ない様子を見せた。 笑顔のサニブラウンに対して、悔しさのあまり崩れ落ちる者も。天国と地獄。何とも言えない光景が目の前にあった。 サニブラウンにとって、日本選手権は9月の世界選手権(ドーハ)に出場するためのワンステップという位置づけのようだ。 現在、サニブラウンはアメリカのフロリダ大学でスポーツマネジメントなどの学業に励み、陸上のトレーニングを積んでいる。6月8日(日本時間)の全米大学選手権で9秒97の日本新記録を樹立し、日本では一大ニュースとして流れていた。だが当の本人は、記録を塗り替えたことを喜ぶというよりも、悔しさを滲ませていた。なぜなら、優勝ではなく3位となり、自分よりも速い選手が2人もいたからだ。しかも彼らが同世代であることを考えれば、なおさらだ。
サニブラウンは、今回、100mと200mで日本チャンピオンとなった。だが、それは日本で実現したことであって、アメリカではまず有り得ない。アメリカで、世界で勝つ難しさを十分に感じているからこそ、喜んでもいられないのだ。 2ヶ月後に迫った世界選手権。「スタートからしっかりいけないようでは、世界のトップレベルでは通用しない」と言うように、目標の決勝に進出するためには、スタート時のリアクションタイムを速くして飛び出さなければならない。それをクリアできればタイムは9秒8台へと突入し、表彰台にも近づく。 世界記録保持者(9秒58)のウサイン・ボルトが20歳の時に出したタイムは、現在20歳のサニブラウンのものよりも遅い。だが、ボルトが21歳になって初めて世界記録(2008年北京五輪9秒69)を樹立したことを考えると、サニブラウンもこの1年で大幅に記録を更新する可能性がある。 彼自身が目標に掲げる世界記録を達成する瞬間を、来年の東京で目にできるかもしれない。
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